第24話「迎撃戦の果て」
闇夜を裂く銃声。
ゼインは瓦礫の影に身を潜めながら、ヴェール・バインドの兵士たちを冷静に観察していた。
「包囲網は完成している。奴を逃がすな!」
通信機から流れる敵兵の声。その瞬間、ゼインの唇が微かに笑みの形を作った。
「……逃げるつもりはねぇよ。」
彼の手元には、青白く光る銃型のフラクタル。
引き金にかけた指がゆっくりと力を込めると、空間が歪み、銃口に凝縮されたエネルギーが蠢いた。
——《オーバーライド》発動。
ゼインの視界に、敵兵の装備のコードが浮かび上がる。
一瞬の解析の後、彼は低く呟いた。
「……制御、無効化。」
次の瞬間、敵の銃が暴発し、弾倉が空回りを始める。
兵士たちが驚愕する中、ゼインは瓦礫を蹴り、弾丸の嵐の中を滑るように前進した。
🔹 戦場を駆ける影
「……ッ、こいつ、近い!!」
ヴェール・バインドの兵士が叫ぶが、ゼインの動きは”予測不能”だった。
ゼインの銀色の髪が暗闇に溶け、青白い瞳が僅かに光る。
一瞬、兵士の視界から彼の姿が消えた。
——ゴッ!
「ぐあっ……!」
ゼインの蹴りが兵士の側頭部を直撃。
倒れる兵士を盾にしながら、ゼインは素早く次の標的へ狙いを定めた。
銃を向ける兵士。
「——遅ぇんだよ。」
ゼインは床を蹴り、一気に間合いを詰める。
拳が閃き、兵士の腕を弾き飛ばした。
「ッ……!」
敵がバランスを崩した瞬間、ゼインの膝蹴りが腹部を抉る。
そのまま敵が壁へと叩きつけられ、意識を手放すのを確認すると、ゼインは静かに息を整えた。
🔹 ヴェール・バインド隊長との一騎打ち
「……ふむ、これが日本の碧族の力か。」
重厚な装甲を纏った男が、一歩前へ出る。
彼はヴェール・バインドの小隊を率いる隊長。
「フラクタルに頼った小賢しい戦法では、私には勝てんぞ。」
隊長がゆっくりと武器を抜く。
それは——アンチ・フラクタルブレード。
ゼインは目を細め、舌を打った。
「……またそれかよ。」
隊長は余裕の表情で、ブレードを構える。
「この剣の前では、お前のフラクタルは無意味だ。」
ゼインは肩を回しながら、淡々とした声で返す。
「へぇ……じゃあ、フラクタルなしで潰してやるよ。」
🔹 素手の戦闘、ゼインの戦闘狂化
隊長が一気に踏み込む。
剣が鋭く振り下ろされるが、ゼインはギリギリで躱す。
金属音が響く。
ゼインは敵の攻撃を紙一重で避けながら、カウンターの機会を狙う。
「ほう……反応は良い。」
隊長がさらに踏み込む。
だが——その一瞬、ゼインの瞳が鋭く光った。
「——遅ぇんだよ。」
ゼインの体が低く沈み、爆発的な踏み込みで距離をゼロにする。
隊長のブレードが振り下ろされる前に——
ドンッ!
ゼインの拳が隊長の顎を撃ち抜いた。
重装甲をも貫通する衝撃に、隊長の体が弾かれる。
「ぐっ……!?」
ゼインは、戦闘の興奮に微かに笑みを浮かべながら、拳を握り直す。
「どうしたよ? もっと本気出せよ。」
隊長が顔を上げたとき、ゼインの拳が再び振るわれた——
🔹 戦闘後の静寂、ゼインの変化
ゼインは瓦礫の上に立ち、倒れた隊長を見下ろした。
呼吸は乱れていない。
手に力が漲る感覚がある。
「……やっぱり、戦うのって、悪くねぇな。」
彼の言葉に、誰も答える者はいない。
だが、ゼインの中で確実に”何か”が変わり始めていた。
それが戦士としての覚醒なのか、それとも——?
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