テラーノベル
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discordで頂いたうさぎもちさんのリクエスト、🇨🇭🇯🇵です。
夕暮れが山を赤く染めていた。
窓の外は、静寂と冷たい空気が支配している。
その中で、深呼吸をひとつした。
胸の奥がひどくそわそわとして落ち着きを失う。
「……どうかなさいましたか?」
細く、しなやかな指。童顔とも評される人形のような顔に収まった黒曜石が、まっすぐ自分を見つめている。
それだけで、何度も練り直してきた言葉は引っ込んでしまった。
「……いや。」
声が思った以上に硬くなる。
これではだめだ。もっと、自然に。
自分の頬が熱くなっているのを自覚しながら、口を開いた。
「……その……お前と、もう少し……」
日本がコテンと首を傾げる。
その仕草が妙に愛おしくて、余計に言葉が詰まった。
「距離を……近づけたい。」
ぱちり、と長いまつ毛が上下した。
できてしまった天使の通り道に、頭を抱えたくなるほどの羞恥心が身を襲う。
「いや、変な意味じゃない!……あ、いや、変な意味もないとは言わないが……断じてその、……し、下心などはない!」
慌てて取り繕うと、日本は小さく笑った。
一気に顔が熱を帯びる。
「……スイスさん。」
「な、何だ!」
「よろしければ……隣に、座ってください。」
言われた瞬間、心臓が跳ねた。
生真面目に準備してきた言葉が、急に幼稚なものに思える。
だが、それでも。
「……わかった。」
それでも、日を向く向日葵のように彼の元へと膝をすすめた。
近い。近すぎる。けれど、逃げる気はなかった。
「……あの」
神の啓示を受けたばかりのように、緊張と少しの恐れで、彼の紡ぐ旋律が震えている。
「私も……嬉しいです。……貴方が、そうしてくれようと思ってくださることが。」
「……。」
躊躇いがちに、その手が自身の袖口に触れた。
「……あの。」
「……なっ、何だ!?」
情けなくも声が上擦る。
「手を、繋いでも……?」
呼吸を忘れるほど、心臓が大きく跳ねた。
手に触れる。
それほど些細なことなのに、何故、こんなに怖いのだろう。
何故、こんなに胸が痛いのだろう。
「……構わない。」
やっとの思いで答えると、日本がそっと手を重ねてきた。
春の陽だまりのような温度が、きゅっ、と自身の手を握る。
ああ、自分は今、こんなにも彼に触れたかったのだと気付いた。
「……不器用だ。」
「え?」
「俺は、不器用で……こういうの、うまくできない。」
日本はふっ、と目を細めた。
それが微笑だと分かる。
「……私も、そうです」
手元から目線をズラすと、ほんのりと桜色を纏った顔と目が合う。
「だから……あなたのために…少しだけ、頑張ろうと思います。」
その言葉に、胸がひどく熱くなる。
麗らかな陽光を受け、沈黙という心の雪が、ようやく溶けていくのを感じた。
深く息を吐き、もう片方の手で、そっと日本の頬に触れる。
「……目をつぶれ。」
大きな目が、少し震えてまぶたをおろす。
「……はい。」
ぎゅっと引き結んだ唇を、彼の温もりと重ね合わせた。
今しがた生まれた子鹿のような、ぎこちない動き。
けれど、それでもいい。
幸せそうに笑う日本と、こつんと額を合わせる。
この距離を縮めるためになら、何度でも、不器用になれると思った。
(終)
コメント
8件
あふんありがとうございます!もうほんとに最高ですなんか消滅しそうです!!!!にわちゃんのおかげで毎日が華やかですありがとうございます😭😭😭まじ本当になんか絵文字メーカー使えるよう
らぎさん、ありがとうございます。 書くものに困っていたので、リクエストありがたいです! 不穏はわたしも好きなので、ぜひ書かせていただきますね。ただ、複数人の書き分けとリョナなどのグロ表現が苦手でして……鎌倉✖️日本オンリー、虐待というか精神攻撃(?)メインでOKでしたら、今日中にでも書き上げられると思います。
初コメ失礼します! ほんっっっとうに貴方様の描かれる作品のファンで追わせて頂いてます❗️いつも供給切実にありがとうございます!!ところで貴方様に是非リクエストをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか😭? 私不穏系大好き勢なので必然的に日本さんがちょっとクズい&可哀想なことになっちゃうんですが、鎌倉様メインのご先祖様✕日本さんで神隠し系できますか…??? 頭のおかしい時代錯誤なご先祖様に目を向けられちゃって神隠しされて厳しい後継者教育(虐待)を受けながらも内心反抗心マシマシで、しおらしくしながらも絶対逃げてやる精神の反骨心ありありな反抗期真っ盛りのスレ日さんVS日さんの猫を剥がして反抗心をバキバキに砕いてやりたい絶対に逃がしたくない鎌倉様始めご先祖様…みたいのってできますかね😭ちょっと厳しいようなら遠慮なく仰ってください!