テラーノベル
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まず記されていたのは、先日、セレノ自らヴァン・エルダール城へ赴いたという報告だった。
(セレノ殿下もなかなかに行動が早くていらっしゃる……)
リリアンナ嬢との婚姻については、両国の和平にも関わることだ。
本来ならば、こちらからの働きかけを待ってから動いてもおかしくはない。なのにそれを待たず、自らヴァン・エルダール城まで足を運んだというのだから、よほど彼女のことが気に入っているのだろう。
(ランディリックがあれほど警戒するのも、無理はないか)
アレクトはどこか納得しながら、手紙を読み進めた。
リリアンナ嬢が、以前会った時より顔色が優れず、どことなく体調が悪そうに見えたこと。
ライオール卿へ、彼女と婚姻したい旨をハッキリと申し出たところ、エスパハレでアレクト殿下やペイン男爵を交えて話した時とは一転、頑なに拒まれたこと。
そしてその際、彼がリリアンナ嬢のことを〝今は大事な身〟と表現したこと。
「…………」
そこまで目を通したところで、アレクトは我知らず眉間へ指を当てる。
その先に記されていたのは、案の定というべき内容だった。
――リリアンナ嬢は、もしや身ごもっているのではないか。
――そしてその相手は、ライオール卿なのではないか。
「……俺が介入するまでもなく、殿下お一人で正解まで辿り着いているじゃないか」
思わず、呆れを含んだ声が漏れた。
ランディリックから先に報告を受けているアレクトには、その推測が正しいと分かる。
(セレノ殿下は聡明な方だからな)
だからこそ、マーロケリー国王ではなく、自分と同じ王太子という立場を持つ彼を和平の交渉相手に選んだのだが、こういう場合はその怜悧さが恨めしくさえある。
セレノ殿下のことだ。おそらくは、ランディリックが〝そうなる〟よう、裏で色々と画策したことにも気付いているだろう。
(さて、どうしたものか)
セレノ殿下は、リリアンナ伯爵令嬢を相当気に入っている。
認められた文面からも、懸念事項を並べつつ、彼女を娶りたいという気持ちそのものが消えたわけではないことがひしひしと伝わってきた。
だからこその〝親書〟なのだ。
アレクトに相談することで、何か現状を打開できたなら……と一縷の望みを託されたことを感じずにはいられない。
(だが、さすがにこのまま話を進めるわけにはいかない……)
リリアンナは懐妊していると言う。そして、あろうことかその腹の子の父親は、アレクトにとっても腹心とも言うべきランディリック・グラハム・ライオール辺境伯なのだ。
いくらアレクトといえども、子を為した二人を引き離してまで、リリアンナ嬢をマーロケリー国へ嫁がせることは出来ない。
そんなことをすれば、ランディリックがどう動くか分からないし、そもそも生まれてくる子に罪はない。
(むしろ……ランディリックから申し出があったように、リリアンナ嬢とランディリックとの婚姻を認めねばならんだろうな)
コメント
2件
アレクト殿下視点、好き!
鷹槻れんさん、第246話読了しました! アレクトがセレノ殿下の親書を読みながら「俺が介入するまでもなく正解に辿り着いてる」と呆れるところ、思わず笑ってしまいました。でもその後の「子を為した二人を引き離せない」という判断に、アレクトの誠実さが滲んでいて好きです。ランディリックとリリアンナの婚姻を認める方向に動くのかな…政治と感情の綱引きが本当に丁寧で、続きが気になります!
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