テラーノベル
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イスグラン帝国において、貴族の結婚には王城の許可が必要となる。
当人、あるいは両家から提出された婚姻の申し出を王城が精査し、国王がこれを認めた場合のみ、その証として婚姻許可証を発行するのだ。
結婚したい者たちはそれを持って、国教であるアルシェリア聖教の教会へ赴き、女神たちの御前で互いを生涯の伴侶とすることを誓う。そこで司祭によって婚姻が記録されて初めて、正式な夫婦として認められる。
その後、教会から王城へ婚姻成立の報告が上げられ、それをもって王城側でも二人の婚姻が正式に受理される。
現在、イスグラン帝国の王位は空席のままだ。
父王オルディス亡きあと、戴冠を控えたアレクトが王権を代行している以上、ランディリックとリリアンナの婚姻を許可するのもまた、アレクトの役目となる。
だが、リリアンナ嬢はウールウォード領を継ぐ伯爵令嬢だ。そこをクリアしないことには、辺境伯であるランディリックの元へ嫁ぐことは難しいだろう。
(あの男のことだ。その辺も手を打っていそうで怖いんだが……)
そこまで考えて、アレクトは小さく吐息を落とすと思考を停止した。
リリアンナが妊娠している以上、彼らの婚姻も急がねばならない。だが今はまず、セレノ殿下への対応を決めるべきだろう。
(ウールウォード伯爵領の件はひとまず置いておくとして――)
アレクトは、セレノ王太子からの書簡へ再度視線を落とした。
親書には、ランディリックから『リリアンナの代わりに』と提示された別の娘――ダフネ・エレノア・ライオールについて触れられていた。
先ほどランディリックからの書状にも記されていた名だ。
「……やはりそれがベストか?」
思いはするものの、ダフネという女性について、アレクトは余りいいイメージを持っていない。
そもそも……セレノ殿下の身分を知らなかったとはいえ、彼を罠に嵌めた女だ。きっと碌な者ではないだろう。
「だが――」
王城というところはある意味魑魅魍魎が跋扈するような場所だ。うかうかしていては、命を狙われることもないとは言い切れない。
それはおそらくマーロケリー国においても大差ないだろう。
そう考えると、案外ダフネのような女性の方が適任にも思えた。
アレクトは二通の親書を机の上へ並べた。
片や、自らの子を身ごもったリリアンナ嬢を手放すつもりはないと、代わりの花嫁まで用意してきた男。
片や、それに気付きながらも婚姻による和平そのものを拒絶することなく、提示された新たな候補について迷いを滲ませる男。
思惑は、ある意味真っ向から対立しているように思えた。
抱えている感情が違うのだから当然だろう。
それでも、二人とも両国の和平を壊すことだけは望んでいないのがせめてもの救いだった。
(ならば、この件についてはやはり……)
アレクトはそんなことを思いながら書面を読み進め――ふと、その目を止めた。
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ひより
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夕凪ゆな
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コメント
3件
どうなさるおつもりかしら?
アクトレがどう判断して動くか。 早く次が読みたい😊
ああ〜〜この回、めっちゃ重厚で好き!!😭💕 アレクト視点でランディリックとセレノの思惑が交錯する感じ、めちゃくちゃゾクゾクしたよ…!「あの男のことだ。その辺も手を打っていそうで怖い」ってアレクトの警戒心が滲んでて、でも和平は壊したくないっていう二人の共通認識が唯一の救いってのが切ない🥺 それにしてもダフネの立ち位置、どう転ぶのか気になりすぎる…!罠に嵌めた女って過去、だからこそ適任かもしれないってアレクトが迷ってるの、すごく考えさせられるなあ。続き早く読みたい!!🌸