部下を亡くした 。
二人 。
とても慕って呉れていて、
嬉しそうに話す人影も、時間も失くなってしまった 。
辛さを紛らわそうとしても、
無くならない、この悔しさ 。
何処へ行けばいいのか、
何処へ行こうとしているのか、
何をしようとしているのか、
全部曖昧で、よく判らなかった 。
「 良い奴だったんですッッ”…彼奴はッッ…!! 」
二つの墓の前で、独り叫ぶ 。
嗚呼、駄目だ 。
無慈悲な灰色を見ると、どうしても、内に秘めた物が押し出されてしまう 。
【 ……中也… 】
「 なんで、いつもッッ…ぅぐ”ッッ”… 」
【 ……そう、自分を追い込めるでない 】
【 中也は悪くないんじゃ…一人で責任を負う必要はない 】
「 ッッ”…… 」
一気に二人の部下を無くした俺には、
慰め等、届かなくて 。
姐さんの前で蹲る俺も、
情けなくて、莫迦で、悲しくて 。
頭では判っていることだが、
そんな言葉を躰はひたすら拒否してくる 。
「 ……ごめん、なさいッッ”…一人、に…して、もらえます、か……ッ 」
【 …じゃが…… 】
【 ……… 】
【 …判った。何かあったら直ぐに呼ぶのじゃぞ 】
姐さんも、其れ以上は口を挟むことなく、
俺に傘を渡すと、足早にその場を去って行った 。
「 あぁ…あ”ぁ…あ、ぁ”…… 」
「 ぅ、ぐッッ”…… 」
瞬間、傘を持つ手はするりと抜け、
塞き止める物が無くなった傘は、何処かへ飛んで行ってしまった 。
そうすれば、五秒も経たずに衣服は濡れていく 。
嗚呼、今、俺に何滴の雨があたっているのだろうか 。
「 なんで、だよッッ”…”! 」
「 なん、でッッ”“…!!」
泣き声と嗚咽だけが響く、気持ち悪い空間 。
非常に癪なのに、涙は止まらない 。
判っている、
判っているのだ 。
今更足掻いたって、如何にもならない事も 、
泣いたって、時は止まってくれない事も 、
過去に戻れない事だって_____
「 ……… 」
だからこそ、こんなにも悔しい 。
こんなにも、憎い 。
すごく、情けない 。
「 ……雨… 」
そろそろ、この気持ち悪い空間に吐き気がしてきた頃、
無意識に音になった言葉 。
嗚呼、確か、あの日も____
『……はは、』
『 来てくれる訳、ねぇだろ…… 』
自分を嘲笑う 。
俺は、何に期待していたんだ 。
あんな奴の慰めなんて、こっちから願い下げだ 。
……何も守ってくれる物がないならば、
何処かへ、行ってしまおう 。
雨を、自分を隔てる壁にしてしまおう 。
雨がきっと、何時までも寄り添ってくれる筈 。
涙だって、誤魔化せる筈 。
今の俺には、
灰色位が丁度いい 。
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『 ふんふふんふふ〜ん 』
鼻歌混じりに街を歩く 。
勿論、仕事は放り出して 。
今日は生憎の雨だが、仕事をサボれるなら、気分は善い 。
『 雨と云えば…川の流れが早いし、善い入水日和だよねぇ… 』
そんな事をぼやきながら、河川敷がある方へ歩みを進める 。
『 ……(そういえば、…… )』
雨と云えば、彼の、憎たらしい彼が……
『 ……もう、過ぎた話か 』
そう、
” あれ “ はもう、過ぎた話 。
彼の揶揄だって、完全に、とは云わずとも、もう大丈夫だろう 。
…とか何とか、自分を納得させてみるが、
少し胸に突っかえる此の胸騒ぎは、収まることはなかった 。
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『 ……(矢っ張り) 』
胸騒ぎは本当だった 。
まあ、私の勘は必ず当たるから、特段驚くことはないけれど 。
見覚えが有り過ぎる、黒い外套、恥ずかしい帽子 。
元相棒の中也が、河川敷に腰掛けていた 。
奇妙に思ったのは、傘を差していない事だ 。
今日は朝からずっと雨だから、傘を忘れる事は考えにくい 。
唯、何かを流すように、
何かを誤魔化すように、
何かに浸るように、
ひたすら、酸性雨に溺れていた 。
『 ……… 』
コメント
12件
とっても素敵な話…🤦🏻♀️💕💕泣けるマジで😭😭😭😭 ちゅやも悲しいよな、そうよな😭😭😭選択肢はひとつ!楽しみに待ってる!!
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ😭😭
凄すぎて言葉が出ません…… やっぱり中也さんは優しいな~なんて他人事のように思ってしまいます 優しいからこそ、部下がなくなってしまうと 辛くはなりますよね だったら選択肢は1つしかない筈です!!! 次回も気長に待ってます!