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「い゙ッ……..!ここは何処なんだ、……..?」
「や〜っと起きたかァ?梵天のNo.3さんよォ!」
波の音で目が覚めた。全身を縛られていて、身動きが取れない。硬いもので殴られたのか頭がクラクラする。俺の周りにはガタイのいい男が3人、見覚えのある女が1人。立ち振る舞いからして恐らく、彼女がボスなのだろう。
俺の読みは当たった。
「ボス、此奴どうします?殺っちまいますか?」
「梵天の情報を吐かせろ。吐いたらすぐ逃がせ。吐かなかったら海に沈めろ。」
なるほど。どこまで梵天の情報を知っているのかは分からないが、情報を漏らしたら死体だということは知られているらしい。
俺を殺すことを誰が担当してもえげつないことは目に見えている。正直、御免こうむりたい。
となると、海に沈められた方がマシだろう。
「今の聞いてたろ?ボスは優しいからなァ……..。情報を吐けば逃がしてやるってよ。」
「……………吐くつもりは無い。」
「あァ゙?吐かねぇなら海に沈めんぞォ?!」
拷問をする時の三途みたいだ。そして後ろの2人の気だるげながらも対象者である俺をジッと見ている姿は灰谷兄弟と重なる。興味無さげに本を読んでいる女は首領を思い出させた。
やっぱり最期に思い出すのはアイツら……..か。
「ちッ……..来い!お望み通り沈めてやる!!」
男は崖の上に俺を立たせ、力強く蹴った。一瞬身体が宙を舞い、そして急降下する。俺は目を瞑り、大きく息を吸った。
崖はそこまで高くないから海に叩き付けられることは無かったが、とにかく深い。足が付かないのは当たり前、まだ空は明るいというのに海は真っ黒。息を整え、周りを見渡す。助かる方法はないだろうか。そう思ったのも束の間。
小さな波が沢山押し寄せてきた。その向こうに大きな波。小さな波を飲み込みながら俺の方へ向かってくる。
もう、逃げられない。俺は覚悟を決めた。
傷に潮水がよく沁みる。息が出来ない。怖い。急にイザナのことを思い出した。
これがきっと、走馬灯ってやつなんだろう。
「ボス………………ッ!」
朦朧とする意識。懸命に生きようとする身体。声が聞こえた。振動が伝わる。
綺麗だった。俺を抱えて陸にあがる彼女は、昔イザナと読んだおとぎ話のお姫様のよう。そのお姫様は人魚。正体を知られてはいけないのに海で溺れた王子を助けたんだ。
美しい人魚に魅せられて、息もできなかった。
俺は溺れた。この深く暗い海で、敵でありながら助けてくれたこの姫に。
𝙴𝙽𝙳
補足】
見覚えのある女
▷ 過去に鶴蝶が彼女の拷問を担当したが、
とある事情により逃がした。(梵天には内緒で)