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薄暗い部屋。
カーテンの隙間から差し込む月明かりが、
ベッドに横たわるPizza guyの首筋を白く照らしていた。
呼吸は浅い。
額には汗。
そして首元には二つの吸血痕。
一つはストリガ。
もう一つは、
その上から深く刻まれたノスフェラトゥの牙痕。
「……っ」
微かなうめき声。
ベッド脇に座っていたノスフェラトゥが視線を上げる。
仮面は外されていた。
結んだ黒髪が闇へ溶けている。
赤い目が静かに細まった。
「起きたか」
Pizza guyはぼんやりと天井を見つめる。
頭が重い。
熱い。
喉が渇く。
身体の奥が妙に疼いていた。
「……最悪」
掠れた声で呟く。
「お前、加減って言葉知らねぇのかよ……」
ノスフェラトゥは答えない。
代わりに濡らした布を額へ乗せる。
その手つきだけが妙に丁寧だった。
Pizza guyは眉を寄せる。
「……なんだよ」
「……」
「気味悪いくらい静かじゃん」
少し間があった。
そして低く落ちる声。
「……吸い過ぎた」
「は?」
「気絶するほど吸うつもりではなかった」
Pizza guyは一瞬目を瞬かせる。
まさか謝罪が来るとは思っていなかった。
ノスフェラトゥの耳が、わずかに後ろに伏せられている。
視線を逸らしたまま続ける。
「ストリガの匂いが、お前に残っていた」
その瞬間、
胸の奥がざらつく。
嫉妬。
怒り。
独占欲。
全部分かる声だった。
「……」
起き上がろうとした瞬間、
ぐらりと視界が揺れる。
ノスフェラトゥの腕が背中を支えた。
「動くな」
「……平気だ」
「平気な顔じゃない」
そのまま肩を押され、
再びベッドへ戻される。
Pizza guyは息を吐いた。
身体が変だ。
熱い。
でも寒い。
それに――
首筋が異常に疼く。
「……あいつのせいか」
「ストリガの唾液だ」
ノスフェラトゥの声が低くなる。
「古代種の毒は強い。お前の身体は、既に私の毒に慣れ始めている」
「だから拒絶反応を起こしてる」
「……はは。身体ん中、吸血鬼まみれってことかよ」
冗談のつもりだった。
だがノスフェラトゥは笑わなかった。
その沈黙が、
逆に胸をざわつかせる。
「……悪かった」
ぽつり、と。
珍しく弱い声だった。
Pizza guyは目を瞬かせる。
「別にお前のせいじゃ――」
言い終わる前に、
ノスフェラトゥの冷たい指が首筋へ触れた。
ぞくっ――
「ぁ……」
反応してしまった。
一瞬で呼吸が乱れる。
自分でも分かるくらい、
身体が熱を持つ。
ノスフェラトゥの目が細くなる。
「……まだ残っているな」
ストリガの匂い。
その言葉を飲み込んだのが分かった。
次の瞬間。
ぐい、と顎を持ち上げられる。
「ノス……?」
唇が重なった。
深い。
息を奪うような口づけ。
舌が入り込み、
唾液を流し込まれる。
「っ、ん……ぅ」
熱が広がる。
頭がぼうっとする。
ストリガの毒による痛みが、
少しずつ溶けていく。
だが今日は、
それだけじゃ終わらなかった。
ちゅ、ぅ……
唇が離れない。
何度も、
何度も重ねられる。
まるで確認するみたいに。
奪い返すみたいに。
「……ノス、苦し……っ」
「黙れ」
低い声。
だが怒鳴ってはいない。
むしろ切羽詰まっていた。
ノスフェラトゥはPizza guyの首筋へ顔を埋める。
すぅ、と匂いを吸い込む。
その直後。
ちゅ、と吸血痕へ口づけた。
「っ……!」
「……嫌だ」
掠れた声。
「お前から、他の吸血鬼の匂いがする」
またキス。
首筋。
耳元。
顎。
手首。
まるで“上書き”するみたいに。
「待っ……お前、今日変だぞ……」
「変にしたのはお前だ」
「はぁ!?」
「無防備に窓を開ける」
キス。
「知らない吸血鬼に噛まれる」
キス。
「その顔をする」
「どの顔だよ……っ」
「吸われてる時の顔だ」
ノスフェラトゥの目は本気だった。
嫉妬で、
理性が擦り切れている。
それが分かる。
「……お前」
Pizza guyは熱に浮かされた頭で、
苦笑した。
「独占欲、強すぎだろ……」
ノスフェラトゥが止まる。
数秒の沈黙。
そのあと、
彼はゆっくり額を押し付けてきた。
「……今さら気づいたのか」
声が低い。
苦しいくらい低い。
「私はずっと我慢してる」
「食いたい」
首筋へ唇。
「閉じ込めたい」
肩へキス。
「他の誰にも見せたくない」
耳元で囁かれ、
Pizza guyの呼吸が止まる。
「……でも」
ノスフェラトゥの爪が、
シーツをわずかに裂いた。
「それをやったら、お前は怯える」
赤い瞳が揺れる。
化け物みたいな目なのに。
今だけは、
捨てられるのを怖がってるように見えた。
Pizza guyはしばらく黙っていた。
それから熱い頭のまま、
ぽつりと呟く。
「……俺、逃げてないだろ」
ノスフェラトゥが目を見開く。
「今もここにいる」
「……」
「だから、少し落ち着け。吸血鬼」
数秒後。
ノスフェラトゥは顔を覆った。
「……お前は本当に」
「?」
「殺しに来てる」
「は???」
そのまま、
ノスフェラトゥは耐えるように深く息を吐き、
再びPizza guyを抱き寄せた。
今度は噛まなかった。
ただ、
離さないように抱き締めていた。
外では、
夜明け前の風が吹いていた。
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