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「神族国家……?」
「わらわの始まりは神族……。イスティさまのガチャが出したのはきっと導きなの!」
「フィーサの生まれた場所ってことかな?」
「そう思ってもらっても構わないなの! そこに行けば、きっと上手く行くに違いないなの」
ラクルを出る前に駄目元で南方エリアのことを町の連中に聞いた。だが倉庫の連中は手広く活動をしない習性があり、大したことは聞けなかった。しかもSランクの連中以降は冒険者の訪問も減ったと聞く。そのせいか大した話が入って来ないようだった。それにフィーサの話は眉唾もの。
果たして馬車を使ってどこまで行けるのか。そういう意味でもおれはあまりにも無知すぎる。どうしようもなくなったその時は――ガチャに頼るしかない。
「アック、行かないのだ?」
「いや、そろそろ行くよ」
「シーニャ、役に立つ! アックの爪! ウニャッ!」
「そうだな。明らかに敵意を持つ魔物が襲って来たら遠慮なく倒していいぞ」
虎人族のシーニャはフィーサやルティと違い、攻撃に優れている。身のこなしも抜群に高いので戦いにおいてはかなり頼りになるはずだ。
「ウニャ……悪い人間も含まれているのだ?」
「人間の場合か……。その時は様子を見るんだ。いいね?」
「ウニャ」
ラクルの倉庫では彼女たちそれぞれに部屋を持たせた。そのおかげもあってかシーニャはもちろんのこと、ルティも元気が有り余っている。しかしフィーサだけは不安そうにしているままだ。いつもなら大人しく鞘の中に収まっているままなのだが。
「わらわも外の世界、空気に触れないとダメダメなの! だからイスティさまのお手を煩わせて申し訳ないなの!」
「それはいいが。どのみち戦う時はすぐにフィーサを振りまくることになるぞ」
「望むところなの! いつも期待させる割に、イスティさまはちっともわらわを使ってくれないなの。錆びた剣を大事にしてわらわのことなんて放置しているなの!!」
「そんなことは……いや、うん」
言われてみればそのとおりだな。
「とにかく!! 敵が来たらバンバン斬って斬りまくって欲しいなの!」
ソードスキルを習得していながらまともに宝剣フィーサを使っていないままだ。ルティの影響で拳で解決してしまいがちだからだが。その意味でも魔法剣として未だに使いこなしていない。フィーサの生まれ故郷である神族国に彼女を作った者がいるとすれば、使いこなしていないことでまずいことが起きそうな予感があるな。
「アック様、アック様。お食事と休憩はどこで取られるんですか?」
「……ルティ、お前もしかしてもう疲れたのか?」
「違いますよ~!! アック様はわたしをいつもいつも~!」
「いつも気にしているぞ? 色んな意味で……」
「き、気にして頂けている!? はふぅぅ!! そ、そんなアック様には、こちらを!」
商売やら交渉事、料理や錬金術に至るまでルティに頼っている。村にすら入れなかったおれとは違い、薬師の知識を一部得て来たことを聞かされた。そういう意味で気になる存在ではあるが、どこか心配になる娘でもある。天真爛漫な娘でもあるし、放っておけないのは確かだ。
「ウニャウ!! アック、人間が近づいて来るのだ! 戦うのだ?」
「おれたちの方に?」
「まだ分からないのだ。でも、強さを感じる気がするのだ!」
「強さか。……ということは、ジョブありの人間ってことか」
ラクルから南に向かって歩き続けているが、この辺りはまだ冒険者パーティーの姿やギルド依頼をこなす人間を見ることが多い。シーニャは回復魔法も使える虎娘。獣ならではの察知スキルがかなりのもので、スキルはおれよりも格段に優れているということが分かる。
「んんん? アック様、何か感じているんですか~?」
「おれじゃなくシーニャがな」
「ふむむ……それならば! アック様にはとっておきの薬を飲んでいただきましょう!」
「薬? それも薬師の知識で作ったのか? 大丈夫なのか?」
「はいっ! 大丈夫です。全然薬っぽくない味に改良に改良を重ねて……むふふ」