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「誰か助けて~~誰か~~」
遠くで助けを求めて大声をあげている女性の声が聞こえてきた。ゆずきか――
B「やべえ、誰かいるぞ」
A「先公達にバレる前にずらかろ~ぜ」
B「飯塚、大丈夫か?」
飯塚「あぁ――何とか――歩け――そうだ」
A「ここはヤバい。ずらかるぞ」
飯塚「あぁ――」
それから飯塚たちが慌ててこの場を去って行くのは、あおむけで大の字になっている俺にもわかった。
目を覚ますと、ベッドの上に寝かされていた。顔を横に向けるとゆずきが目を閉じてイスに腰かけていた。
「ゆずき――」
俺は体を起こそうとしたけど、全身に痛みが走ってなかなか起き上がれなかった。
「けっ、圭太――大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど、何とか生きてるみたいだ」
「バカっ! 心配かけないでよ!」
ゆずきはそう言うと、俺の胸に顔を押し当て泣いていた。
「ゴメン、もうこんな無茶しないから」
「当たり前でしょ!」
「あぁ――」
俺は力が入らない腕でゆずきをギュッと抱きしめた。
「お楽しみのところ悪いんだけど、何か言いたいことある?」
保健室の加賀先生だった。この高校では唯一の20代の若くてキレイな女性教師だった。もちろん男子生徒かは絶大な人気を誇っていた。でも、少しばかり男っぽいところがあった。
「何も言いたくありません」
「ふ~ん、ならいいわ」
「担任に言ってもらっても構いません。覚悟は出来ています」
「興味ないわ。私の仕事は保健室に来た生徒を見てあげるだけ。それ以外は私の仕事じゃない。それにこんな怪我、男同士のケンカしかないでしょ? そんなものに、いちいち口を挟みたくないの」
「ありがとうございます」
それから俺は、加賀先生の車に乗せてもらい、自宅まで送ってもらった。家に帰って改めて自分の顔を鏡で見てみた。顔は腫れ上がり青アザができていた。それにガーゼをめくると傷口からは未だに血がんでいた。この顔で親に会ったら何て言われるかわからない。でも伝えなきゃいけないことがある。
それからリビングのソファーで横になりながら母さんの帰りを待っていた。
「Zzz――Zzz―――」
「ただいまぁ」
「んっ!?」
どうやら知らぬ間に寝てしまっていたようだ。
「かっ、母さんお帰り」
「圭太、そんなところで寝てると風邪引くわよ」
「大丈夫だよ」
「テスト近いんだから気をつけっ――ちょ、ちょっとどうしたのその顔? 怪我してるじゃないの!」
母さんは俺を見るなり、慌ててソファーにやって来た。
「ちょっと学校の階段で転んじゃってさ」
「――――」
母さんは何も言わずに俺の隣に腰かけると、疑わしい目で俺を見ていた。
「そんな理由通用する訳ないわよね――」
「一体どうしたの?」