秋晴れの午後。クラスごとの歓声が飛び交うグラウンドで、フォークダンスの音楽が流れはじめた。
🌸は自分の胸がどくどく鳴っているのを感じながら、列に並ぶ。
すぐ前には——
黒尾鉄朗。
いつものようにニヤッと笑いながら、振り返って手を差し出してきた。
「ほらおいで、お嬢さん。逃げんなよ?」
その余裕満点の低い声に、胸がさらに跳ねた。
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手を取った瞬間
🌸がそっと手を触れた途端、
黒尾は意味深に目を細める。
「ん〜、やっぱり。手ぇ冷たいじゃん。緊張してんの?」
「し、してないし…!」
「はい嘘。顔真っ赤。かわい〜」
わざと周りに聞こえる声でからかい、
🌸がムッとするのを楽しむように笑う。
けれど、音楽が始まると同時に——
彼の手はしっかりと優しく握り返してきた。
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ステップ・ターン・また手を繋ぐ
フォークダンスの動きで何度も手を離したり繋いだりするたび、
黒尾は必ず 🌸 の指を絡めてきて、にやにや。
「俺以外のやつと手ぇ繋ぐ時、ちゃんと距離取れよ〜?
てつくん、嫉妬しちゃうじゃん。」
「嫉妬しないでしょ…」
「んー、するよ?
🌸が楽しそうにしてたら、全部俺のにしたくなる。」
いつもの軽い調子なのに、
言葉だけ妙に本気っぽくて心臓がつらい。
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周囲の男子と交代するタイミング
他の男子と手を取らなきゃいけないターン。
その瞬間、黒尾はひそひそ声で耳元に。
「ちゃんと戻ってこいよ。
…浮気すんなよ?」
「しないって!」
「だよね〜。
🌸が俺を置いて消えたら、体育祭止めて探しに行くから。」
さらっと言う声が本気で、ちょっと怖いのに、それ以上に甘い。
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最後のペアに戻った瞬間
戻ってきた🌸の手を、黒尾はぐいっと引き寄せた。
「よしよし。おつかれ〜、よく頑張りました。」
撫でられて、耳まで真っ赤になる🌸を見て、彼は嬉しそうに笑う。
「なぁ🌸。
フォークダンスって…
こんなに楽しいもんだったんだな。」
「え?」
「だってさ、
お前が照れてんの、全部俺だけが見れるんだぜ?」
少し真面目な目で見つめられ、胸がぎゅっとなる。
「……体育祭、優勝より嬉しいわ。」