「お母様も良子さんも間違えてはいない。互いに大切に思っている。それだけで十分です。実の親子ほど起きる衝突もありますが、実の親子だからこそ何でもなくわだかまりがなくなることもあります。子は自分の幸せだけを考えればいい。子が幸せなら親は幸せです」
「今日先生にお会いできて良かったです」
「私も、こんなに嬉しいことはないよ。ここで会えたんだからね。もうお昼になるね。食事に行こうか?」
三岡先生が時計を見るので聞いてみた。
「お店にお弁当を買って帰らないといけないんです。豪華に買って来いって…言われたけど、どこか美味しいところありますか?」
「間宮兄弟の言う‘豪華’は量が必要そうだね。今年に入って出来た中華屋さんがこの並びにあってね。昼は弁当のみやってるんだが、すごいボリュームで味も美味しいよ。注文しようか?3人かな?今日来てくれたお礼に私がご馳走するよ」
「えっ…佳ちゃんにお金預かってきたんです」
「それはデザートでも買いなさい。少し待って」
先生は中華屋さんへ電話すると4つのお弁当を注文した。20分後に取りに行くと言い仕事の話をする。
「ずいぶん扱える案件も増えたね。東京が嫌になったら、いつでもうちで働いて下さい。この辺りに住めばいいでしょうから。いつでも歓迎しますよ」
先生と一緒にお弁当を取りに行き、自転車でお店に戻る。
「ただいま」
「「おかえり」」
お客さんはいなかったが、二人とも自転車をいじっている。
颯ちゃんは外したタイヤを持ったまま立ち上がった。
「どうだった?」
「たくさん話せて良かったよ。佳ちゃん、お金返す。先生がご馳走してくれたの」
「ラッキー。手を洗ってくる。いただこうか」
回鍋肉にやわらか鶏もも肉の甘酢あんかけ、パリパリの香ばしい香港焼きそばや本格春巻…急ぎの修理をする颯ちゃんを置いて佳ちゃんと二人で先に食べるお弁当は、本当に美味しい。
「腹減ったぁ」
「颯ちゃん、豪華弁当だよ。食べきれない…」
「ん、俺食う」
颯ちゃんが座ると
「マジでうまかった。リョウコ、これ値段知ってる?」
佳ちゃんが、空になったお弁当の蓋を閉めながら聞く。
「1800円だった」
「毎日は食えないな…働こうっと。あっ、こんにちは。どうぞ」
子供連れのお客さんが来たようで、佳ちゃんが接客するのを聞きながら、パンパンのお腹をそっと撫でると
「くっくっ…腹一杯?」
颯ちゃんも私のお腹を撫でる。
「うん、お腹も胸も一杯かも…今日先生に会えて良かったよ」
「リョウが自分から来たんだ。自分で開いた道だ」
「…うん…ねぇ、颯ちゃん」
「うん?」
「おばちゃん、今日家にいるかな?」
「知らないけど電話してみる?週末はパートもないし、忙しくはないだろ。俺がしようか?」
「大丈夫。ここで電話していい?」
「いい。俺、食ってる」
私はスマホをカバンから出すと、おばちゃんの番号をタップした。
‘はぁい、良子ちゃん?’
「うん。おばちゃん、こんにちは」
‘こんにちは。今日は颯佑、仕事よね?どうかした?’
「あのね…今、おばちゃん忙しい?」
‘忙しくはないわよ。ずっとお喋りする?ふふっ……’
「そう…あのね、おばちゃん。今、私、颯ちゃんのお店に来てるの」
‘……良子ちゃん…おばちゃんが行ってもいいの?’
「うん…そっちには行きたくないけど、おばちゃんには会いたいから」
‘すぐに行くから!’
「夕方までいるから慌てないで!」
コメント
1件
豪華なお弁当〜✨ヤッバい😂食べたくてしょうがない!パリパリの香ばしい香港焼きそば〜春巻き〜🫠リョウちゃん達紹興酒飲みたくならなかったのかしら?お仕事中はならないか😅 デザートはおばちゃん⁉️おばちゃんすっ飛んで来るかな。おはぎ作れなかった〜って言いながら😄