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#ベリアン・クライアン
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番外編110『解っていることを』前編
今日は私達双子と執事達全員でお出かけ。
ショッピングしたり、カフェでお茶したり
そろそろ帰ろうとしていた時――。
『おい!』
『!?』
『お前ら悪魔執事とその主だよな?揃いも揃って醜いものだな。この悪魔が!悪魔執事がいると空気が悪くなる!さっさと消えろ!』
『……。』
執事達はただ俯くだけ。
『な……っ!何ですか急に、私達はただ――!』
私は前に出る百合菜の前に手を出す。
『百合菜。』
『お姉ちゃん…。』
『失礼致しました貴族様。お目汚し申し訳ございません。』
ベリアンが私の前に立ちその場を宥める。
『ふんっ。執事も執事なら主も主だな。お前らのせいで俺は家族を失ったんだよ。お前らが天使狩りを必死にやらないからだ!俺達貴族の駒の分際で!!』
その言葉が私の中の怒りを剥き出しにした。
『…申し訳ございません…ですが、我々も人間です。全ての天使を狩ることは……』
『黙れ!この役たたずが――!』
貴族は持っていたワインの瓶を開けてベリアンにかけようとする。
『っ……!』
バシャァッ!!
『え……。あ、主様…!?』
『『……。』』
ポタポタと赤ワインが滴る。
『お姉ちゃん…ごめん、私我慢出来なかった。』
『私も同じ気持ちだから大丈夫。』
私は前髪を上にやる。
『私達主への侮辱ならいくらでもどうぞ。ですが、執事達を侮辱することだけは我慢なりません。いくら貴族様といえど。私は牙を向きます。』
『私もです。私の大切な執事のみんなを駒呼ばわりしないでください。みんなが許しても、私とお姉ちゃんは許しませんから。』
『ぐっ、悪魔執事の主のくせに生意気な……っ。っ、所詮いい気になってるのも今のうちだ!知ってるぞ、お前ら悪魔執事は歳を取らないんだってな。』
『!』
『だから主だけ歳を取って執事たちはそのまま。いいか?お前らはいずれ主に先立たれる運命なんだよ!取り残されて落胆するお前らを見るのが楽しみだな。今こうして偉そうにしていられるのも今だけだ。今一緒にこうしていられるのもな。』
『『……。』』
『主様…お召し物が…』
『それに、髪も…』
『…帰りましょう、屋敷に。』
『帰ったらお風呂入ろ、お姉ちゃん。』
『えぇ。』
2人は馬車に乗り込む。
貴族の言葉は……主様に強く、重くのしかかったようだ。
その日の夜――
私は庭で1人考えていた。
『…。』
「主だけ歳をとる」「一緒にいられるのも今だけ」
解っていた。そんなこと。でも、解らないようにしていたかったの。他人に言われなくても
分かってるわ、そんなこと。
『…主様――。』
俺は主様をただ見つめることしか出来なかった。
執事の食堂
『…ミヤジさん達はどう思いましたか?』
『…どういう意味だい?』
『俺は…悪魔執事になって始めて、シャトラを失って…すごく動揺しました。辛いし…胸が痛かったし…いつか、主様ともあんな別れが来るんだと思うと――。 』
『ミヤジ先生の方が俺達より長く生きてる、だからそういう経験も…沢山あったと思う。そういう時…どうやって切り抜けてたのか……教えて欲しい。』
『ロノ君、バスティン君…。』
『俺は、ラムリさんの言葉に少し励まされました。その別れが来るのをわかっててずっと悲しみ続けたらずっと辛いままだって。だからその時までは笑顔で過ごしたらいいって。そうですよね、ラムリさん。』
『…そうだね。でも…やっぱり、他人に言われると…こう、胸が痛い。』
『確かに、私やルカス…ベリアンは長く生きてるから仲良くなった人が自分達より先に死んでいくのを見て…辛い気持ちにはなる。小さかった子供達が……。私より先に死ぬなんてって……。』
『だけど私達はそれが当たり前だと受け入れて来ました。絶望を経験して悪魔執事になったのですから。』
『っ……。』
ベリアンの言葉が鎖のように巻きついた。
『でも、考えるっすよね。なんで俺達は悪魔執事で…歳を取らないんだろうって。どうして…主様だけ…って。』
『……仕方ないよ。アモン君。私達はこうするしか無かったんだ。悪魔と契約して…生きるしか…道はなかったんだよ。それが…私達の代償だ。悪魔と契約した…私達のね。』
「いつか必ず、主様との別れが訪れる」
そう考えただけで…苦しくなって壊れてしまいそうだ。だけど、俺達より、今は主様の方が傷心している。
『いつか来る別れがあるのに…このまま過ごすなんて…。』
『主様との別れがいつか来るって思いながらこれからどう過ごせば……。』
『……。』執事一同
一方その頃――。
『百合菜。まだ起きてたの?そろそろ寝ないと…。』
『っ…お姉ちゃん…。』
『…!』
百合菜は涙を流す。
『私…悔しい。解ってるよ。みんなは、私達とは違う。歳をとることなんてない。でも、私達は寿命が来たら死んじゃう。みんなとは…もう一緒に居られなくなる。』
『…。みんなが死ぬのはもっと嫌…だけど、一緒にいれなくなるのは…。もっと嫌よね…。』
『解ってるんだ。ずっと、ずっと……。
みんなは歳をとることなんてないってことを知った時から。でも……それを他人に言われると余計に…辛いし、悔しい……っ。』
百合菜は私に抱きつく。
『こんな、気持ちのまま…どうやってみんなと接したらいいの……っ?』
『っ……。』
百合菜の涙を見て、酷く心が痛む。
『あんなこと言わなくてもいいのに…
みんなだって好きでそうなった訳じゃないのに……っ。本当なら、寿命を迎えたら…普通にお墓に入って…安らかな眠りを迎える……。
でも、みんなは悪魔執事…亡くなった時に魔導服を着て棺桶に入るのが慣例…その身は朽ちることはない……永遠に。』
『…そうね。そんなの、残酷よね……。
まるで、人間として扱っていないようなそんな感じよね……。』
『悔しいよ、お姉ちゃん……。』
百合菜は私の服を掴み酷く落胆する。
『ぐすっ。ひっ、ひっく……っ。』
私はただ強く抱き締めて、頭を撫でることしか出来なかった。
数時間後――。
『…主様。』
『ベリアン…。百合菜、泣き疲れて寝ちゃったみたいなの。私ももう寝るわ。』
百合菜の頭を撫でて自分の部屋へ戻る。
ガチャッ。
『主様。』
『ユーハン……?どうして…』
『……今の主様を1人にしてはいけないと思ったのです。』
『……。ふふ、ユーハンは心配症ね。私はあの子の姉として情けない姿を見せる訳にはいかないわ。』
グイッ。
ユーハンに手を掴まれる。
『私はまだ貴方の執事になり数年しかたっておりません。でも。貴方の嘘くらいすぐ分かりますよ。』
『っ……。』
次回、後編へ続く。
コメント
1件
わあ……重い……でもすごく胸に響く話だったなあ。 あの貴族の言葉、ひどすぎるよ。わかってるのに改めて言われると苦しいよね。 百合菜が泣いて姉にすがるところ、すごくリアルで切なかった…… ユーハンが「嘘はすぐわかる」って言って手を掴むところ、じんときた。 後編も読ませてください。ぷちさんの書く人間の感情の描き方、本当に好きです🌙