テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#初投稿
みあるい
86
yuuri
620
30
桜井 かな
450
「あ、持ってきた…よ、見たいって言ってたやつ…」
そう言うなり、彼は僕からスケッチブックを受け取ると、ぱらりと最初のページを開いた。
「……!」
息を飲むような音が聞こえた気がした。
次々とページをめくりながら、「うおっ!」とか「すげぇ……」とか、小さく驚きの声をあげている。
(全部、見られてる……)
穴があったら入りたいほどの羞恥心と同時に、不思議な昂揚感も湧き上がってくる。
自分の内面を覗き込まれる怖さと
それを認めてもらえるかもしれない期待感がぐちゃぐちゃに混ざり合って頭がクラクラしそうだ。
やがて最後のページまで辿り着いた天馬くんは、スケッチブックをパタンと閉じて僕を見た。
その表情は、興奮と感動で紅潮していた。
「なぁ…これ……全部水瀬が描いたんだよな?」
「う…うん……」
「神絵師じゃん、マジで。上手すぎて尊敬なんだけど」
率直すぎる感想が逆にこそばゆくて俯いていると、彼の目線が次にキャンバスへ移るのが分かった。
「そっちのデカいのは?」
「…… こ、これは……」
「見せてほしいって言ってくれたから…色々持ってきたんだけど…昔飼ってたハムスターを描いたときのやつ」
自分で言い終わる前に顔が熱くなるのを感じたけれど、それは確かに本心だった。
描いたハミちゃんの絵を、天馬くんにも見てもらいたいと思っていたから。
震える手でキャンバスを手渡すと、彼は慎重にそれを持ち上げて光の方へ向けた。
そしてゆっくりと全体を見回すように眺めたあと
「…うわ毛並みの感じとかリアルだなぁ…可愛いし」という声が聞こえた。
「あと目尻の皺とかさ……そういうところまで全部ちゃんと描き込んであって……実物も可愛かったんだろうな~」
その言葉に胸が熱くなって
何も言えなくなったところで、天馬くんの手がキャンバスをテーブルに戻し
改めて真正面からこちらを見る。
「見せてくれてありがとな。やっぱ俺、水瀬の絵好きだわ」
照れ臭そうな笑顔だったけど
それが今まで受けてきたどんな賛辞よりも嬉しいと思ってしまった自分もいた。
ずっと誰にも見せることなく仕舞われていた宝物たち。
それを初めて他人に披露できたという安堵感もあるけれど
何より────「好きだ」と言われたことに対する喜びの方が大きかったかもしれない。
◆◇◆◇
次の日以降もお互い一緒に居ることが多くなり始めると
以前より明らかに接する時間も増え始め
僕にとって学校生活における大切な”時間”へと変わっていった気がする。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!