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#契約結婚
鷹槻れん

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【作品紹介】
「39.起きないと襲いますよ?」
https://teller.jp/s/novel-1b1kyy5b39ow3-8260505335
の、目覚め後の春凪視点バージョンです。
ほかほかと程よく温かくて気持ちいいけれど、代わりに枕が固くてちょっぴり首のあたりが痛い。
私の枕、こんなにゴツゴツしてたっけ?
お酒を飲み過ぎちゃったからかな。
頭もズキズキしてる……。
そういえば私、宗親さんに勧められて美味しいチーズを食べてウィスキーを飲んで……。
えっと……ちゃんと歯磨きして寝た?
何だか夢うつつのなか、しっかり歯を磨いてうがいもしたような……そんな記憶がぼんやりとある。
うん、口の中も気持ち悪くないし、多分きっと大丈夫。
昨夜の私、優秀!
朝と呼ぶには早過ぎる時刻……なんだと思う。
5時過ぎたら明るくなっているはずの外だけど、まだ日の出前みたいで、薄らと空が白み始めた感じの気配。
カーテン越し、隙間から射す薄明かりがそんな風に見えた。
見え――って……あれ?
いつもこの光って違う角度から来ていたような?
――ん?
そんなことを思って頭が段々覚醒してきた私は、しっかり目を開けてほんの少し視線を転じて、めちゃくちゃ驚いたの。
ど、ど、ど、ド・アップで好みのド・ストライクきたーっ!
「……――っ!?」
な、な、な、何でっ宗親さんのお顔が私の目の前に?
いつもなら広い広いキングサイズのベッド。
端っこと端っこで背中合わせで眠っているはずなのに。
私、どう見ても今、彼の腕の中!!
衝撃が大き過ぎる余り、最初は声にもならなかったアレコレが、口を割って飛び出しそうになる。
「えっ!? なに……。待って。うそ……、え?」
あっ、でもちょっと待って!
大きな声を出して、眠っている宗親さんを起こしてしまったら、現状を打開するのがますます難しくなっちゃう!
腕枕をする要領で頭の下に敷かれた腕――頭をゆるっと包み込んでます!――と、腰にガッツリ回された宗親さんの腕から、何とか抜け出そうと試行錯誤する。
(ちっ、小さく縮こまったら抜け出せるかも!?)
そんなことを思ってギュッと身体を縮こめてみたけれど、何故か小さくなった分だけ宗親さんの手が私を抱きしめる包囲網が狭まるだけで、全く意味がありませんでした!
う〜。
何でこんなことになったの!?
パニックに陥りそうな頭で一生懸命考えて、とりあえず浅めの深呼吸。
「――っ!」
ひゃー、ちょっ、ダメっ。
深呼吸ダメっ! 失策!
さっき、動こうとした時、さらに抱き寄せられてしまって。
宗親さんの胸元に顔を押し付けられた状態になってしまった現状での深い息使いは、彼からのダダ漏れの色気というか、すっごくいい匂いというか、何だかよく分かんないけどドキドキを胸いっぱいにしちゃうだけで、心が落ち着くどころかざわつくばかり――。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!
頭はぐるぐるするのに、ふと見上げた宗親さんの寝顔があんまり可愛くて。
(わぁ〜。いいっ♥)
私は現状も忘れて見惚れてしまう。
宗親さんに意識がなければ、あのクールな鋭い目で見つめられることもないし、ましてや毒を吐かれて揶揄われる心配もない。
(わ〜、まつ毛長いな。唇薄いな。喉仏、男らしいな。肌のキメ、整いまくりじゃ〜ん!)
こんなに間近で大好きな人の顔をマジマジと見たことがなかった私は、ついつい身を乗り出すようにして観察してしまう。
どの道、宗親さんのホールドが思いのほかしっかりしていて抜け出せそうにないし……ここは開き直って目の保養をしちゃたりして♥
いつ宗親さんが目を開けるか分からないというスリルも手伝って、私の胸は高鳴るばかり。
(息が出来なくなっちゃうぐらい、宗親さんが好きっ)
素直に声に出せたならどんなにいいだだろう。
でも所詮は政略結婚。
そんなバカな本音を言ったら、きっと宗親さんを困らせてしまうだけ。
そんなことを思っていたら――。
あれ? 宗親さん、ひょっとして今、笑った!?
眼前の宗親さんの口の端がほんの少し笑みの形に持ち上がったの、私、見逃さなかったよ?
だって間近でガン見してたから!
もしかして狸寝入りしてらしたの――?
だとしたら……マズイ。非常にマズイっ。
「宗親さん……あの、ひょっとして……起きて……いらっしゃいま、すか?」
どうか答えが返ってきませんように!
そう願いながら恐る恐る囁くような小声で問いかけたら、ヒーッ! 目、開きましたよ!?
いつから起きていらしたの!?とか思ったら自然顔が真っ赤になって……気まずさに挙動不審になってしまう。
そんな私を、まるで「逃がしませんよ?」と追及する気満々みたいに宗親さんがグイッと引き寄せてきて。
「おはようございます」
って言われたら「おっ、はよ、ござ、まっ」と返すしかなかった。
でもごめんなさいっ。
やましすぎてしどろもどろですっ。
お願いだからそんなアレコレはどうかスルーしてください!
願いを込めて宗親さんを見上げたら、彼の纏う空気が腹黒モードに切り替わった……気がした。
――き、気のせいです、よ、ね?
「よく眠れましたか?」
その雰囲気のままそう問いかけられたから、私、思わず「眠れたわけないです!」と答えようとして「ねっ、眠れたわけっ……」まで言って、選択肢を盛大に間違えたことを悟った。
ああ、でも後の祭り。
リトライボタンはないみたいです。
「へぇ~。そうなんですね。春凪、昨夜は僕にしがみ付いてとっても気持ちよさそうに眠っていらしたようにお見受けしたんですけど……実は起きておられた、と。ってことは……アレは寝たふりをした上での計算づくでの所業だったのですね。気が付きませんでした」
そこまで言って、わざとらしく目を眇めてこちらをじっと見つめてくる宗親さんに、私はもうタジタジです!
「春凪。――腹黒ドSな僕を求めていただけて、大変光栄です。せっかく誘って頂いたのに手を出さなくて済みません」
白旗を振っているのに、さらに追い討ちをかけるようにわざとらしくそう付け足されて、私、そりゃ〜もう大慌てで「そっ、そんなわけ、ないですっ! きっ、記憶が途中でなくなるぐらい……その、よ、酔っ払ってて。えっと……し、しっかり寝落ちしてました! ごめんなさいっ!」と手のひらを返した。
宗親さん相手に姑息な嘘なんて通用するわけありませんでした、申し訳ありません!
その上で、ここはもう、あと一歩素直になろうと決意して。
「あ、あのっ。宗親さんっ。それでっ、その……えっと……そろそろ――離して頂きたいんですが……」
と必死でゴニョゴニョお願いしたら、あろうことか最上級の腹黒スマイルを贈られた。
何ですか、その悪いお顔!
も、もしかして私、酔ってる時に宗親さんを怒らせるような「何か」を盛大にやらかしちゃいましたか!?
恥ずかしくて、照れ臭くて、早く離して下さらないと蒸発してなくなってしまいそうです!
そう思っているのに!
「すみません、春凪。僕はキミのお陰で昨夜はあまり眠れていないんです。キミはとっても抱き心地がいいので……もう少しだけこのまま……」
とか恩着せがましく言われたから堪らない。
宗親さんの腕の中で「そっ、それは困りますっ」「おひとりの方がきっと寝心地最高ですよっ?」などと懸命に言葉を重ねてみたけれど、宗親さんはそれら全てを完全に無視して、私を抱く腕に力を込めるばかり。
そうして寝落ちとか――。
マジですか。
いいんですか?
あなたを狙ってる女の前ですよ?
本気で襲いますよ?
襲っちゃいますよ!?
ガオー!ですよ?
無防備なその唇にたくさんたくさんキスの雨を降らせて、それからそれから……。
なんてこと、絶対にできないヘタレのくせにアレコレ脅しの言葉を〝心の中で〟喚き散らす。
ねぇ、宗親さん。
私が何もできないと思ってタカを括っていらっしゃるんでしょう?
も、もし、10分……いや、さ、30分っ! や、やっぱり……1時間!
そう1時間経ってもお目覚めになられなかったら……私、本当にキスしちゃいますからね?
ブッチュゥ〜!って滅茶苦茶濃厚なの、お見舞いしちゃうんだから!!
覚悟してくださいね!?
END(2021/10/08)
コメント
1件
読了しました〜!春凪さんのパニックとツンデレな心情がすごく可愛くて、思わずニヤニヤしちゃいました(笑)宗親さんの狸寝入りからの腹黒スマイル、最高すぎます🤍「襲いますよ」って脅してるのに何もできないヘタレ具合が愛おしい…。政略結婚で素直になれないもどかしさも、胸がきゅっとなりました。続き、めっちゃ気になります!