テラーノベル
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俺とショウタには、和室が与えられ、時間までそこで過ごすよう言われた。部屋には使用人らしき年輩の女性が時々出入りするだけで、蓮さんはそれ以来、姿を見せない。彼女が、たびたびお茶を淹れたり、昼食やら、夕食やらを持ってきて、甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれた。夕食を済ませた後、座布団を敷いて、横になっていたら、ショウタも俺の横で眠り始めた。
そして、気がつくと、裸のショウタが、横に寝ていた。あらかじめ渡されていた浴衣を羽織らせ、寝かせたままにしておいたら、閉じたきりだった襖が蓮さんの失礼します、という言葉とともに開いた。
🖤「変わりましたか」
💛「そのようです」
蓮さんは、ショウタを揺らして、起こした。ショウタは眠い目をこすりながら、蓮さんを見上げている。しかし蓮さんと目が合うと、たちまち萎縮して、小さな声でぽつりと言った。
💙「レン……ごめんなさい」
蓮さんはショウタを撫でて、おかえり、と優しく言った。
ショウタの話を聞いて、どんな男が飼い主なのかと悪い方にばかり考えてしまっていたが、蓮さんは俺の見た限り紳士的な振る舞いを崩さなかった。
🖤「よかった…無事で。事故に遭ったとかじゃなくて」
そう言うと、蓮さんはショウタの白い手を持ち上げ、その甲にキスを落とした。
💙「レン……」
🖤「岩本さん、翔太は、奇跡なんです。わかりますよね?」
💛「え?あ、はい」
突然、水を向けられてたじろぐ。
🖤「翔太は、俺の恋人の生まれ変わりなんです」
💛「え?」
🖤「少し話を聞いてもらえますか?」
それから、蓮さんは、俺に病気で亡くした元恋人の話をした。
名前は、翔太。
猫にしては、随分人間のようなネーミングだとは思っていたが、蓮さんは心から恋人を愛しており、その別離がとても辛かったのだという。そして、恋人を失ってしばらくして、その心の隙間を埋めようと、ペットショップで見かけた愛くるしい白猫を飼い始めた。
💛「……それが、ショウタ?」
蓮さんは、重々しく頷いた。
ショウタは蓮さんにとって大切な家族であり、可愛い飼い猫だったが、数日前のある夜、蓮さんが寝ている横で、突然人間になったという。
🖤「驚きました…本当に、あの翔太に生き写しだったので…」
俺は思わず、ショウタを見た。
ショウタは、初めて聞く話に驚きつつも、俺と目が合うと悲しそうに目を伏せた。そして、俺の服の裾をギュッと握りしめた。
💛「ショウタが人間に変わる理由はわからないですけど…。でも、その恋人の方とは別人ですよ」
🖤「本当にそうなのかな」
そう言って、蓮さんは、ぐいっと、ショウタの腕を掴んだ。
💙「いたい……っ!レン!!」
🖤「俺のこと、忘れちゃった?翔太」
💙「れん………んっ……」
そう言って、俺の目の前で、蓮さんはショウタの唇を奪った。
💛「やめてください!蓮さん!!」
2人をなんとか引き離すと、燃えるような目で、蓮さんは俺を睨みつけた。
🖤「あんた、翔太と寝たのか?」
💛「は?」
🖤「俺の翔太に手を出したのかって聞いてんだよ!!!!」
💙「レン!!!」
ショウタがそう言うが早いか、俺は頬に強い痛みを感じて、そのまま、畳にひれ伏した。
💙「ひかる!ひかる!」
上からショウタの心配そうな声が降ってくる。
💛「大丈夫。大丈夫だから」
🖤「翔太、こいつのことが好きなのか?」
💙「違うよ!そういうんじゃないけど…」
俺を庇うように覆い被さるショウタが、次にこの男に殴られるんじゃないかと、俺は咄嗟にショウタを後ろ手に回した。
💛「蓮さん、ショウタは、あんたのことが大好きだって言ってましたよ」
🖤「…………」
💛「ショウタが人間になる理由はわからないけど、乱暴はやめてあげてください」
🖤「俺がいつ……」
言い淀み、気づいたようだ。
自分が、ショウタにしたことを。蓮さんは、同意の上だと思っていたのかもしれない。それでも、家出をしてまで悩んでいたショウタが、なかなか帰って来ない原因に思い至ったのだろう。蓮さんは深くため息を吐いた。
🖤「ごめん、翔太。お前の気持ちも考えずに」
コメント
8件
殴り合い始まるかと思ってビビった😂
喧嘩始まって焦ったけどめめが人間できてる人で良かったしやっぱりショウタがあわあわしてるの可愛い