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バアァーンッ!


両開きの扉を躊躇なく明け広げたコユキの目の前には外壁に負けていない程の宝玉が煌(きらめ)き捲っている広間が広がっていたのであった。

広間の奥の方にはピンク色のオーラを発する二柱の悪魔を前に、胸を張り反らしているオリジナル、例の、全裸に大きな蛇を這わせ捲っている露出狂っぽいラマシュトゥの姿が映っていたのであった。


「むむむっ?」


疑問の声を上げたコユキの元に届いた最初の音は、脇から聞こえた弟達の寝息であった。


スースースースー グゴォゥ! グゴォゥ!


「あらら、バアルとアスタったらこんな所で寝っちゃってるんじゃないのぉ! 鼻提灯(はなちょうちん)付きじゃないのぉ、ほらほらぁ、善悪ぅ! 早速出番じゃないの? どうすんのこの子達!」


「う、うん、これこれ起きるのでござるよっ! アスタとバアルぅ! 敵陣の前で寝るとか? どんなマゾゲーなの? でござるよぉー?」


叫ぶ善悪を放置したままで、ほぼ裸なラマシュトゥに歩み寄ったコユキは彼女の後ろに立つ、貧弱な体躯の二人、いいや二柱に向けて言葉を放ったのである。


「アンタ等二人の名前は? ここで何をしたいと思っているのか、聞かせて頂戴よぉ! アタシはコユキっ! ルキフェルの片割れなんだけどぉっ!」


ラマシュトゥの背後で守られる様にカタカタ震えていたピンクの悪魔二柱がこの声に答えて言う。


「お、俺は褐紅(かっこう)のロセウム、ぼ、暴力と冷酷の魔将、魔将でっす」


「わ、私の名はろ、ロサエム、サタナキア様より、滅殺と失望の魔将を仰せつかりましたのですっ!」


コユキは二柱の狼狽(うろた)え捲った声を冷静に聞いた上で言葉を返した。


「ヘェェ~、そうなんだぁ~、んでラマシュトゥちゃん、アンタは何をやっていたのん?」


真っピンクな裸女、ラマシュトゥは大きな声で答える。


「うんっ! モラクス兄上のサタンを喰わすなっ! 特にバアルとアスタロト様にっ! って通信を受け取ったから、目の前にいたバアル様とアスタロト様を眠らせる為に、オリジナルの姿に戻って取って置きのスキル、『お眠り(アナックティシ)』で眠らせた上で、対峙していたこの二柱、柱? なのかな…… 自称、魔将君達を鍛えてあげる為に、今までずっと、ちょっと傷付けて『強靭治癒(エニシァシ)』を多重掛けしていたんですけど、七回掛けても八回掛けても…… この子達ってぇ、強くならないんですよぉー! 未だレッサー的な弱さなんですよねぇー、どうしましょうかぁ? コユキ様ぁ、善悪様ぁー!」


なるほどね、ラマシュトゥはいつも通り真面目にモラクスの指示を聞いて一所懸命だったようである。

要は、侵略者であるバアルとアスタロトを眠らせた上で、守護者役のロセウムとロサエムとか言う兄妹を強化してやろうとしていたらしい。


この兄妹、揃ってピンク色なのも同色のラマシュトゥの同情を引いたのかもしれ無いな……

ゴリゴリマッチョになった兄妹を前にしてコユキは言った。


「アンタ攻撃とか苦手だったでしょうに…… いいわこの子達の強靭化には、アタシが手を貸してあげるわよ、弱いんだったら手加減すれば良いんだからねっ! 良っしっ! ほら喰らいなさいっ! 『散弾(ショット)』(極手加減モードぉ)」


ストトトトトトッ! パパンッ!


シュウゥゥゥーッ! カランッ、カラッ!


二つの魔核が床に落ちた、揃って薄らとした弱々しい輝きの物である。


「え、ええ? あれれぇ?」

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