コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
まさかルティが狙われるとはな。こんなことは今まで無かっただけに、油断したと言わざるを得ない。
「アック様ぁぁ~!! お~た~す~け~! 怖いです怖いですぅぅ~」
そういやあいつ、高い所が苦手だったような?
悲痛な叫びも気にしない神なぞ、早急に懲らしめねばならない。
魔石に何を警戒したのかは不明だ。しかし旋風で魔石が舞い上がっている。そもそもこんな状況でガチャが出来るはずも無いのに。いつもの腰袋ではなく懐にしまっていたのが裏目に出たか。
「赤毛のあの子が怯えている。早いところ片を付けさせてもらうよ! それに、魔石の無い人間に好き勝手させるつもりは無いっ!!」
「別に魔石を頼っているわけじゃないけどな!」
「吹き飛べ! アエルブラストっ!!」
「――!」
空中に浮いているラファーガが何かの魔法を放った。
――肌にひりひりと感じるこれは、どうやら突風攻撃のようだ。このままではルティにも影響が及びかねない。そう思っていたが、浮いたままのルティの姿が幾重にも重なっているように見えている。
「あれは風の幻影だ。言っとくが、ボクは神なんだ。その僕が興味を持った子を傷つけるはずがないだろう? そこまで悪趣味じゃない!!」
なるほど、ルティだけは一応守るということか?
身に着けている胴衣を見ると、丈夫そうな亜麻布を使ったダブレットのようだ。格好も言動もチャラそうな奴だが、その辺は神族のプライドがあるらしい。
奴の攻撃でおれは壁に叩きつけられた。大気中の風に威力が急激な勢いの突風。それらを同時に引き起こされた形だ。奴は吹き飛べと言っていたが、石の壁しかない場所なのが幸いして吹き飛びようが無かった。
構造がどうなっているのか不明だが、空に浮かぶ国とかでは無さそうだ。属性ごとに区切られた場所の中でも何かしらの制限があると思われる。
「それを聞いて安心するわけが無いだろう? あいつに怖い目を合わせるお前には冷たい仕置きをしてやる!」
「……逃げ場のない壁を背にして強がるな、人間め!」
風には弱点属性である氷を与えることにする。こいつ程度にはフリーズで十分だ。突風で体の自由が利かないが手足や口は動く。恐らくこいつは、何らかの行動に警戒して魔石を旋風の中に留めたはず。
だが、警戒空しく地面に散乱している魔石が見える。石が地面に落下していることに気付いていないようだ。魔石はともかくラファーガの頭上には氷の塊を顕現させてある。おれの氷魔法は今の時点でフリーズが最大威力だ。
それが効かなければ劣位属性の最大魔法を使うしか無い。
「――ふん、お前が並の魔法使いではないことくらい知っている! フリーズだから何だというんだ?」
「ちっ、やはり気付くか」
「塊を空から降下させるには僅かながらの遅延が生じる。それならボクは、それよりも素早く展開させればいいだけ。所詮、人間の強さはそんなものだよ」
風のラファーガの頭上には、確かに氷の塊であるフリーズがある。奴の言う通り意思を繰り出すのには、ほんの少しの遅れが出てしまう。頭上といっても上空に現しただけ。もし相手の素早さが勝ち、耐氷スキルも強ければ命中しても意味が無い。
風の神が炎も操れるとは聞いていないが、炎球のようなものが奴の足下から見える。
「あはは、アック様、驚いたかい? キミはアグニの印を得られているだろ? でも残念なことに、ボクもアグニの印があってね。つまり、炎も使えるんだ」
「……そうだろうと思っていたけどな。それで? その火球を先に当てるつもりなんだろ?」
「ご名答! 確かにキミが思う通りボクは氷が苦手だ。そうだとしても、先に炎で焼いてしまえば重い氷の塊ごときを避けることが出来るというわけなんだ。僅かな望みだったね?」
「はははっ、火の神よりも威力は無いはずだ。とっとと当ててみろ!」
「――ほざくな、人間め!」
ベラベラと口数だけは賑やかな神だ。変哲の無い壁で何もかも寂しくさせている神の魔法がどれほどのものか、真正面から受けてやる。
――火球が壁を背にしたおれに命中する。しかしおれには、ルティの様々な強化ドリンク効果で耐性があった。これは予想よりも威力があった。弱体系の耐性は高いが、属性の耐性値はまだそれほどでも無いのが現実だ。
「が……ぁ、うぅぅ――!」
激痛などではなくまともに炎を喰らったことによる喉の渇きが半端じゃない。ダメージというより、体から水分が失われていくことの方が苦痛だ。
「あははは~!! どうだ、人間!」
風のラファーガはすっかり気分を良くして大笑いしている。
そんな時、
「――うん? おい、アック様。何か足掻きでもしたのかい?」
旋風で舞い上がって地面に落下した魔石の一つから、何かが姿を現わした気がした。
すると、
「ラーナはアックの盾。盾なのに何故、使わない? ……もういい。オマエ、敵、全部まとめて流す!」
「……へっ!?」