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ライブ後の打ち上げ。
僕は、少し離れた場所で
若井が誰かと話しているのを見ていた。
――やけに楽しそう。
相手は、別バンドの知り合いらしい。
距離が近い。笑顔が多い。
「……。」
無意識に、僕はグラスを強く握る。
「わかりやす」
隣に来た涼ちゃんが、ぼそっと言った。
「なにが」
「嫉妬」
「してない」
即否定。
涼ちゃんは肩をすくめる。
「はいはい。じゃあ聞くけど」
「なに」
「若井があの人に呼ばれたら、どうする?」
僕は答えられなかった。
その瞬間、若井がこちらを見た。
目が合う。
一瞬で、若井の表情が変わった。
若井は会話を切り上げ、まっすぐ僕の元へ来る。
「どうした」
「…別に。」
視線を逸らした僕の手首を
若井がそっと掴んだ。
「嘘」
「…だって」
小さく漏れた声。
涼ちゃんは空気を察して、一歩下がる。
「僕、向こう行ってるね〜」
二人きりになった瞬間、若井は低く言った。
「不安にさせた?」
「させてないって言ったら?」
「信じない」
僕は唇を噛んでから、正直に言った。
「…取られる気がした」
若井は一瞬驚いて、すぐに笑った。
「取られない」
「なんで言い切れるの」
「俺が選んでるから」
僕の額に、若井の額が軽く触れる。
「それに」
「それに?」
「嫉妬してる元貴、嫌いじゃない」
「…なにそれ、ずるい」
若井は手を離さなかった。
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