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翌日のホームルーム。
「昨日配ったお知らせ、ちゃんと家の人に見せたか?」
吉沢先生の問いかけに、クラスの半分がうなずいた。
私は……うっかりカバンの奥に突っ込んだままだ。
「〇〇、持ってこい」
やっぱりだ。みんなの前で指名するの、やめてくれないかな。
渋々プリントを持っていくと、先生はため息をついた。
「……折れ目だらけだな。こういうのはきちんと持ち歩け」
「読むだけなんだから別にいいじゃないですか」
「こういう“いい加減さ”が後で自分を困らせるんだ」
また正論。わかってる。けど、言い方がいちいちカチンとくる。
休み時間も、廊下で友達と話していると、
「〇〇、声が響いてる」
……他にも大声で話してるグループいるのに、なんで私だけ?
これじゃ本当に目の敵にされてるみたいだ。
教科書を机に置くとき、つい力が入って音を立ててしまった。
その音に一瞬、先生の視線がこちらをかすめる。
あの冷たい目。
――ああ、やっぱり嫌い。
数学の授業。「じゃあ、この問題を――〇〇、やってみろ」まただ。よりによって、一番苦手な分野。どうして私ばっかり当てるの。教室の空気がざわつく中、立ち上がると、先生は腕を組んでこっちを見ている。その目が、まるで“できないだろう”と決めつけているみたいで、胸がざわざわした。
「……わかりません」
「わからないままでいいと思ってるのか?」
――カチン。
「思ってませんけど、急に当てられても無理です」つい、声が強くなった。教室が静まり返り、先生の眉がわずかに動く。
放課後、廊下で友達と帰ろうとしていたら、「〇〇、ちょっと」また呼び止められた。
「今日の態度、あれはよくない」
「……先生が私ばっかり当てるからじゃないですか」
「“ばっかり”じゃない。気のせいだ」
気のせい?いやいや、絶対そんなわけない。むしろ気にしてるのは先生のほうじゃないの?
家に帰ってからも、先生の言葉とあの冷たい視線が頭から離れない。思い出すだけでまたムッとして、宿題の文字が乱れていく。……ほんと、なんであんな人が担任なんだろう。
第2話
ー完ー