テラーノベル
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英語の小テストが返ってきた。
「〇〇、平均以下だな」
吉沢先生が、みんなの前でさらっと言った。
……心臓がキュッと縮まる。
そんなの、わざわざ口に出さなくてもいいじゃない。
「やればできるんだから、もう少し本気出せ」
そう言われても、できるなら苦労してない。
むしろその言葉が、一番ムカつく。
休み時間、友達が「先生、厳しいね」と笑う。
「厳しいっていうか……なんか、嫌い」
口にした瞬間、自分でもちょっと幼稚だなと思う。
でも、本当にそうだから仕方ない。
放課後、廊下でふと前を歩く先生の背中が見えた。
スーツの背中は整っていて、歩き方も無駄がない。
……だから何、って感じ。
気づけばこっちを振り返って、目が合った。
「おい、廊下でぼーっと立つな」
「あ、すみません」
謝ったけど、心の中では舌打ちした。
――やっぱり、嫌い。
今日も明日も、その気持ちは変わりそうにない。
体育の時間。
集合が少し遅れただけで、吉沢先生の視線が鋭く刺さった。
「〇〇、何分遅れたと思ってる」
「……すみません」
謝ってるのに、さらに言葉が飛んでくる。
「次はないように」
それだけならまだしも、終わったあとも説教。
「時間を守るのは大事だ」
「わかってます」
「わかってるならやれ」
はいはい……わかりましたよ、先生。
更衣室に戻ると、友達が「また怒られたの?」と笑った。
私、そんなにだらしなく見えるのかな。
いや、先生が私をそう思い込んでるだけ。
放課後、部活の道具を片付けて帰ろうとしたら、職員室の前でまた捕まる。
「提出物、出してないぞ」
「あ、忘れてたんで……明日でもいいですか?」
「今日出せるものは今日出せ」
……もう、何なの。
階段を降りながら、心の中で何度もつぶやく。
やっぱり嫌い。
顔も、声も、全部。
第3話
ー完ー
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