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riiya フォロバ⭕️
37
一ノ瀬ルナ
61
うさ

42
夜の学校は静かだった。
昼間まで響いていた笑い声も、
机を引く音も、
今はもうない。
窓を叩く雨音だけが、 暗い廊下に響いていた。
文化祭前夜。
二年C組の教室には、 終わっていない装飾が残されたままだった。
白石ひかりは、 誰もいない教室で一人座っている。
机の上にはスマホ。
送信済みのメッセージ。
『ちゃんと話したい』
『学校裏、来て』
送信相手は神崎。
白石は自分の指先を見る。
少し震えていた。
頭の中では、 神崎の言葉ばかり繰り返される。
『お前も空気側』
『皆のことなんか見てねぇ』
『嫌われたくないだけ』
違う。
私は、 ちゃんとクラスを変えたかった。
そう思っているのに、 心のどこかで否定できない。
その時、 スマホが震えた。
『今行く』
短い返信。
白石は深く息を吸った。
十分後。
学校裏。
古い倉庫の近く。
街灯の光が雨で滲んでいる。
神崎は傘も差さずに現れた。
濡れた髪をかき上げながら、 少し笑う。
「珍しいな」
「白石から呼び出しとか」
白石は俯いたまま言う。
「……なんで」
「ん?」
「なんで、あんなことばっか言うの」
神崎は少し黙った。
それから静かに答える。
「本当のことだから」
白石の肩が震える。
「皆ちゃんとやろうとしてた」
「違う」
神崎は即答した。
「誰も本気じゃなかった」
「お前だけだよ」
「でもお前も、“嫌われたくない”で動いてる」
白石は唇を強く噛む。
図星だった。
神崎は続ける。
「皆さ」
「本音言うの怖ぇんだよ」
「だから空気に合わせる」
「お前も同じ」
白石の目に涙が浮かぶ。
「……じゃあどうすればよかったの」
神崎は少し考えてから答えた。
「嫌われても、本音言うしかねぇだろ」
その瞬間。
白石の感情が溢れた。
「簡単に言わないでよ!!」
雨の中、 声が響く。
神崎は黙っている。
白石は止まらなかった。
「皆バラバラで!」
「誰も助けてくれなくて!」
「私だけずっと頑張って!」
「なのに神崎くんは壊してばっかで!!」
涙が雨に混ざる。
白石は近くに置かれていた鉄パイプを掴んだ。
文化祭準備で使われていたもの。
神崎はそれを見る。
だが逃げなかった。
ただ、 静かに白石を見る。
白石の手は震えていた。
苦しい。
悔しい。
消えてほしい。
そう思った瞬間も、 確かにあった。
でも――
白石は、 振り下ろせなかった。
鉄パイプが手から落ちる。
カラン、と乾いた音。
白石はその場に崩れるように座り込んだ。
「……もう分かんないよ」
「私、どうしたらよかったの」
雨の中、 白石は泣いていた。
神崎はしばらく何も言わなかった。
やがて、 静かに隣へ座る。
制服は雨で濡れていた。
「……別に」
神崎が小さく言う。
「お前だけが悪いわけじゃねぇよ」
白石は顔を上げる。
神崎は苦笑した。
「このクラス、最初から終わってたし」
「でもお前だけは、ちゃんとしようとしてた」
白石の涙が止まらない。
「でも私、皆に好かれたかっただけかもしれない……」
神崎は少し笑った。
「それの何が悪いんだよ」
雨音だけが響く。
神崎は空を見上げながら言った。
「皆さ、“青春”とか言うくせに」
「本音言わねぇから壊れんだよ」
「だからお前くらい必死なの、嫌いじゃなかった」
白石は目を見開く。
神崎は立ち上がる。
「……戻るぞ」
「明日、本番なんだから」
白石は小さく頷いた。
二人は雨の中、 ゆっくり校舎へ戻っていく。
けれどその背中は、 少しだけ今までより自然だった。
本音をぶつけ合ったからこそ、 初めて分かり合えた気がした。
この夜が、 二年C組にとって全員が揃ったままなのがここ日最後の夜になることを。
まだ、誰もが知らない
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