コメント
1件
リィエルは出てきてませんが、たまたま任務に出てて欠席していたということにしておいて下さい🙏
ルミア&システィーナとグレンのお話です
始まります
「ルミア〜?」
システィーナがルミアを探しているのか、先程からルミア、と呼ぶ声が辺りに響いている。
屋上で中庭を見下ろすグレンはもちろんルミアの居場所なんて知らない。
なぜなら、今日の授業が終わってからずっと屋上にいたからだ。
なぜ屋上に居たか、と聞かれると自分でもなぜか分からない。
なんとなくなのだ。
本当になんとなく屋上に行きたくなって、なんとなく屋上から辺りを見渡しているだけ。
中庭でルミアを探してぐるぐるとシスティーナが駆け回るのを見てグレンはふっと笑う。
「なにやってんだ、アイツ」
すると、システィーナがルミアを見つけたのか、後ろを勢い良く振り返ってそのままの勢いで後ろに居た人物の所へ駆け寄っていく。
やはり、システィーナの後ろに居た人物はルミアだったようだ。
ふと自分の足元に視線を落とすと、なぜか自分の足元に得体の知れないなにかがあったような気がした。
勿論そんなものは無くて、ただの錯覚だった。
疲れてるのか、とグレンは深い溜息を吐く。
なぜかその溜息はとても重かった。
「全くもう、あのロクでなしは何処に居るのよ!」
猫耳のような髪飾りをぴょこぴょこさせ、無事ルミアを見つけ出したシスティーナが怒りの声を上げる。
システィーナがルミアを探していたのはそうなのだが、本当はグレンの事も探していたのだ。
なぜシスティーナがグレンを探しているかと言うと、最近のグレンの様子がおかしい気がしたから。
なにか常に遠くを見つめているような目をしており、目を離したらふらっとどこかに行ってしまいそうだった。
そんなグレンが心配で、何があったのか聞き出そうとしたところ、ルミアもグレンもシスティーナが荷物を片付け終えた頃には教室に居なかった。
だからルミアとグレンを探していたのだ。
結局のところ、ルミアは見つかったがグレンは見つからず。
途方に暮れて希望を持たずに屋上の扉へ手を掛けると、ルミアが屋上の扉を開けようとしたシスティーナの手を握る。
「、? どうしたの? ルミア」
「ねえ、システィ」
「?」
「あれ、見て」
どうして手を握られたのか分からずシスティーナが首を傾げると、ルミアが声を抑えて屋上の扉にある小窓から見える人影を指差す。
その人影は、自分達がずっと探していたグレンであった。
だが、背を向けられているため表情は読めない。
それに、いつもは大きく、頼もしく見えているグレンの背中が今はなぜかとても小さく見えたのだ。
それは、グレンが何かに思い悩んでいるという事をシスティーナとルミアに感じさせるにはそう難しい事では無かった。
システィーナは屋上の扉に掛けていた手をそっと外すと、ぎゅっと握られたままのルミアの手を握り返す。
「…なんだか、先生らしくないわね」
「そう、だね…」
ここまで近くに来ているのに、二人の気配に気付かないグレンを見て、心配そうに二人が眉を八の字に曲げる。
そう、普段はこんなことありえないのだ。
いつもは、二人がグレンに声を掛けるまでもなくグレンが二人の存在に気付く。
そして、逆にグレンの方が二人に声を掛ける、ということがいつもの事だった。
だが、最近はやたらとぼーっとしているし、二人が近づいても気付かないしでグレンらしくない事が続いている。
そんな時は、大体なにか生徒には話せない悩みを抱えている時。
「…また、一人で悩んで」
ぼそりとシスティーナが呟く。
それは、グレンが悩んでいる事に気付けなかった自分への怒りと、グレンが悩みを誰にも話さず一人で抱え込んでいる事への怒り。
二人ともが信頼されているのは知っている。
だが、グレンがアルベルトに向けるような信頼では無い。
グレンがアルベルトに向けるような信頼は、こいつが居たら大丈夫、というような、なんでも話せる、というような信頼。
それに対して二人に向けられている信頼は、頼りになるがなんでも話せるという訳では無い、と二人も分かっていた。
グレンにとってシスティーナとルミアは生徒で、なんでも悩みを打ち明けられるような存在ではなく、守る存在。
だからグレンは二人に自分の過去や悩みを話さない。
それはグレンの些細な優しさなのだろう。
二人に自分の過去や悩みを話して、心配させたくない、迷惑をかけたくない。
そして、失望されたくない。
そんな思いが二人に過去や悩みを打ち明ける時には見え隠れしていた。
グレン自身も分かっているはずだ。
二人は自分の暗い過去や悩みを聞いても失望するような人間では無いと。
だけど、そんな優しい二人を自分の暗い過去や悩みに巻き込んでいいのか。
はぁ、とシスティーナが一つ溜息を吐いてもう一度屋上の扉に手を掛ける。
次はルミアはシスティーナの事を止めなかった。
もう大丈夫だと分かったから。