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何をされるのかもわからなくて、立ちすくむしかない私に、
「…俺、前からあんたに興味あったんだよね…」
ニッと笑って口にする──。耳元で言われたそのセリフに、体に小さく震えが走るのがわかった。
「や…やめてください……」
腕をなんとか振りほどき、逃げようとするが、さして広くもない化学準備室の中では、たいして逃げ場もなかった。
追いつめられ、腰が長机にあたった。
そこへ、流星先生が迫ってきた。
「……優等生の夏目 理沙……は、俺にどんな表情を見せてくれるんだろうな?」
「や…やめて…」
両手をつき長机をずり上がるようにして、焦って逃げる。
「簡単に、逃がすわけがないだろ」
言うようにまさに逃さないとばかりに、机についた私の両手を上から強く抑えつけると、そのまま顔をグッと近寄らせた。
「んっ…や!」
押し倒されそうになり、上に乗っていたビーカーや試験管が下に落ちて割れ、ガシャーンと大きな音を立てた。
割れたガラスにも構わず、こちらにさらににじり寄ると、体の震えが止まらないでいる私に手を伸ばし、制服の胸元に結ばれたリボンタイをほどこうとする。
「や…やめっ!」
ほどかれそうになるリボンタイを両手に固く握り締める。
「……そこまで、必死で抵抗しなくてもいいじゃん?
……俺のことが、そんなに嫌いか……?」
今までとは違う落ち込んだような表情をふいに見せられて、一瞬とまどったけれど、とっさに逃げるなら今しかないと思い立った。
まっすぐにドアまで走り、急いでドアを開けると、リボンタイをつかんだままで廊下を駆け出した──。