テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
オレの指からマイクが落ちた、箱全体に大きな音が広がる。
「やってしまった」と一瞬、冷や汗をかいた、だが箱の雰囲気は悪くならなかった。冬弥や、こはね、それに杏がオレのミスに気づきカバーしてくれた。そのままライブは終了し、オレ達は控え室に戻った。
控え室に戻るなり、冬弥がオレに「彰人、大丈夫か?」と声を掛ける。
その声色が優しいのか少し癪に触った。
何が”大丈夫だよ。オレはただでさえミスして苛立ってるってのに、
「あぁ、問題ねぇよ」
喉の奥か燃えるように熱い。
冬弥のその純粋な真っ直ぐな目がオレの心を狂わせた。オレの嫉妬にも、苛立ちにも何も気づいていないその顔が余計にムシャクシャした。
「今回はミス”してしまったが、次は頑張ろう。」
「次は」、「頑張ろう」?オレはただでさえ、音楽の才能なんて無いし、杏のように活気のある声を出せる訳でも無い、こはねのような透き通った綺麗な歌声を出せる訳でも無い。なのに、「次は」とか「頑張ろう」で終わらせれる冬弥に無性に腹が立った。
「……なぁ、冬弥、」 そう冬弥に声を掛ける。
「ん?」
「オレって本当にお前の相棒”で良いのか?」
冬弥は小さく頷いた後、冷静な声で
「あぁ、当たり前だろう。彰人が元は誘ってくれたんだろう。それにーーー感謝してる。」
感謝という言葉が聞こえ反射的に、
思わず、冬弥の胸ぐらを思いっきり掴んでしまった。
感謝?お前は感謝してるって?
それが1番ムカつくんだよ…
「オレは、お前とやるって言ったのはただの勢いだった、お前の才能に巻き込まれて必死にしがみついてただけなんだよ、オレは。」
あぁ、言ってしまった。冬弥に対する劣等感も嫉妬も全て言っちゃった。
俺がそう言った後、冬弥は黙り込んだ。
何か言ってくれよ、何か言ってくれよ。心の中で何度も呟く。そして、冬弥が口を開いた。
「…そうだったんだな。」
冬弥の口からは怒りでは無く、何か違うものが感じた。悲しみでも、怒りでもそれでもない、オレにはそれが、「失望”」に見えた。