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柔太朗と舜太が辞めると聞いた時は、正直意味がわからなかった。
テレビの収録が終わったあと、スタッフさんに呼び止められて、二人の関係について少し話をされた。詳しいことは俺らにも全部伝えられたわけやなかったけど、最近の二人の様子を見ていたら、なんとなく察しはついた。
ほんの少しの変化ではあったけど、ずっと一緒にいた俺には分かった。
二人は、お互いのことが 好きやからこそ、今までみたいにはできへんくなってしまったんやと思う。
「…辞めるってほんまなん?」
「……うん」
「ふたりとも?」
「…うん、ごめん」
勇斗は何か言いかけて、口を閉じていて、仁人も俯いていた。
なんで好きな人と一緒にいることがこんなに難しいんだろう。
「……俺らには、なんも言えんかったん?」
「…ごめん」
二人が言えへんかった理由も、辞めることを選んだ理由も分かっているつもりだった。同じグルーブで同じ時間を過ごしてきた仲間やったから、これからも当たり前に一緒に過ごせるんやと思っていた。
「……今までありがとう」
その日が、5人で過ごした最後の夜になった。
ふたりが辞めてからは、グループの楽屋は少し広くなった。
2人がいなくなってから、俺は何度もふたりのことを考えてしまう。
今、何してるのかな。 ちゃんと食べてるんかな。ふたり でおるんかな。 それとも、もう一緒におらんのかな。
気になることは沢山あるけれど、俺から連絡するのはなんとなく違う気がしていた。
俺が寂しいからってふたりで選んだ選択に無理に踏み込んでいいわけがない。そう思っていた。
踏み込んでいい訳ではないけれど、グループを辞める直前、俺と舜太は『グループを辞めても連絡は取ること』を約束にしていたから、メッセージを送ることにしてみた。
『舜太元気?』と送るとしばらくしてから、舜太から『元気やで』と返信がきた。
舜太とは連絡を取ることを約束にしたけれど、柔太朗とはあの日以来全く会っていないし話していないから、気になって舜太に聞いてみることにした。
『柔太朗も元気なん?』
送信してから聞いても大丈夫なことなんかなと思って、少し後悔していると返信が来た。
『元気やと思うで』
『そっか』
『元気やと思うで』ってなんやねん という気持ちを抑えてそれ以上は聞かなかった。
「…そういえば、舜太と柔太朗って最近どうしてんだろうな」
「勇斗連絡取ってるの?」
「俺?取ってないよ、仁人は?」
「俺も向こうから来ないし取ってない」
「太智は?」
「まあ、舜太とだけ」
文面だけの連絡を見たって元気かどうかなんて分からない。
文章はいつもどおりやし、返事が遅い日があっても、それが何を意味するのかなんて分からなかった。
ある日から、少しずつ舜太からの連絡が少しずつ減っていった。
毎日連絡を取っていた訳じゃなかったから、最初は気にしていなかった。
ふたりは好きな人と一緒にいるために、今までの場所を離れた。それが正しかったのか、間違っていたのかなんて分からない。あの日、柔太朗はずっと俯いていて全く口を開いていなかったし、舜太は何度も謝っていた。
あの時に俺は、「辞めんといて」って言えばよかったんかな。それとも、何も聞かずただふたりを抱きしめたらよかったんかな。
今更考えても答えなんで出てこんし、戻ってこん。
俺はスマホを手に取った。
最後に送ったメッセージは
『またご飯行こうや』
俺はそこに新しいメッセージを送った。
『元気にしてる?』
少し考えてから、そう送信した。
コメント
1件
読了しました……。 太智の視点、すごく心に来たな。ずっと一緒にいたからこそ気づく“ほんの少しの変化”って描写が重くて、好きだからこそ離れざるを得なかった二人の選択が伝わってきた。辞めてからの連絡も、「元気やと思うで」って曖昧な返しにモヤモヤするのに、踏み込みすぎない距離感を保つ太智が切ない。最後の「元気にしてる?」の送信、すごく刺さった……。みぅもこの余韻に浸ってます🌙