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鷹槻れん

53,239
篠原愛紀
821
ルミナス王立学院の最高学年としての最後の日。
白亜の大講堂は、卒業生たちの門出を祝う華やかな光と、どこか名残惜しげな熱気に包まれていた。
「――卒業生総代、総合首席、ステラ・フォン・アストリア」
名前が呼ばれた瞬間、会場中から地を揺るがすような拍手と、割れんばかりの歓声が巻き起こった。
壇上へと歩むステラの姿は、弱冠十八歳にして、すでに一国の王妃としての神々しいまでの気品を放っている。
その胸元には、あの冬の聖夜に贈られたサファイアのネックレスが、彼女の誇りのように美しくきらめいていた。
答辞を読み上げるステラの声は、どこまでも澄んでいて、聴く者すべての心を震わせる。
その凛とした瞳が、新入生席の最前列で誇らしげに微笑むシャルルと、答辞を終えて次席の席から自分だけを見つめているジョシュアの姿を捉えた。
(ジョシュア様。私、あなたに相応しい妃になるために、ここまで歩んでこられましたわ)
拍手の嵐の中、壇上を降りるステラを、ジョシュアがサファイアブルーの瞳を熱く揺らしながら、誰よりも強く、激しく拍手をして迎えてくれた。
その隣では、シエルが胸のポケットにあの万年筆を覗かせながら、静かに、けれど誰よりも嬉しそうに頷いていた。
卒業式の喧騒が落ち着いた、夕暮れ時。ステラは、二人にとっての始まりの場所である、旧校舎の生徒会室から続くバルコニーに一人で立っていた。
王都の街並みが、美しく燃えるような茜色に染まっていく。
「ステラ」
背後から響いた、低く、世界で一番愛しい声。
振り返ると、そこには制服のネクタイにエメラルドのタイピンを輝かせたジョシュアが立っていた。
彼は迷いのない足取りで歩み寄ると、ステラの華奢な身体を、包み込むように強く、強く抱きしめた。
「ジョシュア様……っ」
「おめでとう、ステラ。最高の答辞だった。……そして、今日でようやく、僕たちの『学生』という猶予期間は終わりだ」
ジョシュアは抱擁を緩めると、ステラのエメラルドの瞳を真っ直ぐに見つめ、その場に優雅に片膝を突いた。まるで、五歳のあの日のように。だが、その大きな手は逞しく、サファイアの瞳に宿る熱は、一人の成熟した男のものだった。
ジョシュアが懐から取り出したのは、最高級のベルベットの箱。
蓋が開かれると、夕暮れの光を浴びて、大粒の極上のダイヤモンドが、まるで二人の未来を祝うように眩いきらめきを放った。
「五歳のあの日、泣いていた君の手を引いた時から、僕の未来の王妃は君しかいないと決めていた。僕のために、血の滲むような努力を重ね、時に僕の間違いを毅然と正し、僕の心を誰よりも深く愛してくれた、世界で唯一の、僕の特別な女の子」
ジョシュアはステラの震える細い手を取り、その薬指に、ゆっくりと指輪を滑り込ませた。
「ステラ。僕の妻になってほしい。一生をかけて、君を世界で一番幸せにすると誓う。僕の隣で、僕の全てになってくれないか」
その真っ直ぐで圧倒的な求婚に、ステラのエメラルドの瞳から、ポロポロと嬉し涙が溢れ出した。
五歳からの、長かった努力の日々。
不安だった夜。
その全てが、この最高の瞬間のためにあったのだと、胸が熱い感動で満たされていく。
「はい……っ、はい、ジョシュア様……! 私、あなたのお嫁さんになりたくて、ずっと、ずっと頑張ってまいりましたの……。喜んで、あなたの妻に、あなたの王妃になりますわ」
ステラが満面の、世界一美しいひまわりのような笑顔で頷くと、ジョシュアは立ち上がり、彼女の涙を優しい指先で ぬぐった。
そして、待ちきれないとばかりに、彼女のふっくらとした唇に、深く、熱い、永遠を誓うキスを落とした。
バルコニーに吹き抜ける春の風が、二人の門出を祝福するように、優しく髪を揺らす。
相思相愛の二人が紡いできた、甘く、気高い物語。それは、これから始まる新しい王国の歴史という、さらに輝かしい未来へと、幸せに続いていくのだった。
コメント
1件
完結おめでとうございます〜〜!!😭💕💕 卒業式の神聖な空気からバルコニーでのプロポーズまで、まるで映画のラストシーンみたいに美しすぎて何度も読み返しちゃいました…! 特に「五歳のあの日から」って台詞で二人の歩みが一気にフラッシュバックして泣いた、まじでエモすぎる…🥺✨ 指輪を捧げるジョシュア様も「はい」って満面の笑顔で答えるステラも世界一幸せそうで、読者としてこの結末に出会えてほんとによかったです! 素敵な物語をありがとうございました🌸