「ただいまぁ」
仕事を終えて家に帰ると玄関には見なれた靴がきちんと揃えてあってつい嬉しくなる。
ちゃんと手洗いうがいを済ませてその愛しい人の姿を探す。
「わかいー?」
静かなので寝てるのかなと思いそっと寝室を開けるとベッドに寝転ぶ若井を見つけた。
「おかえりぃ···」
その言葉は嬉しいけれどいつもより明らかに元気がない沈んだ声に何かあったんだ、と思いを巡らせる。
今日は途中から別々の仕事でレギュラー番組の撮影だったはずなんだけど。
「ただいま···どしたの?なんかあった?」
ポンポンと背中を叩きながら若井のそば、ベッドに座る。
「んー···韓国語もっと勉強しなきゃなって」
若井の韓国語は俺から見ると本当にペラペラでもう充分すぎるくらいの域に思えるけど、通訳なしじゃやっていけない俺からそんな風にフォローされたところで慰めにはならないだろう。
「若井のそういうところってかっこいいよね」
ピクッと若井が反応する。
「もっと頑張ろうって現状に満足せず前向きで上を目指すところ、凄いっていつも思ってる」
「···ほんと?」
あ、ちょっと声が明るい。
若井がワンコならきっと今はお耳がピクピクして俺の言葉を聞きながらしっぽをパタパタと軽く振ってそうな感じかな。
「うん、ほんと。何に対してもそうだよね。俺の彼氏は本当にかっこいいよ」
そう言ってうつ伏せのまま顔だけこちらを向けたおでこに軽くキスする。
「···元貴に褒められると俺、やっぱり凄く嬉しい」
いつもだいたい落ち込んで嫌になって悩んだりするのは俺の方。
その度に優しく突き放すことなく若井は寄り添ってくれるから。
たまにはね、俺が若井を元気づけられたならすごく嬉しい。
「だって本当だもん。いいこいいこ」
サラサラの髪を優しく撫でる。
いつもかっこいい若井が今日はとっても可愛い。
「俺もっと頑張れるわ···ありがとう、元貴」
よいしょっと起き上がった若井が俺を抱きしめる。
「頑張りすぎには気をつけて」
「···誰がいってんの」
2人で顔を見合せて笑ってしまう。
「元貴がいるだけで救われる」
いつもの気持ちのいい笑顔に少し細くなった切れ長の瞳。
大好きな愛しい表情。
「···それは俺のセリフ」
「じゃあ2人でいれば最強ってこと」
私はさいきょぉ〜、と若井が歌う。
つい、吹き出してしまったけど何気にやっぱり歌うまいんだよね。
「まぁ、そゆこと!」
俺はもう一度抱きしめて元気をわけてあげる。
大丈夫、若井には俺がいるから。
ついでに涼ちゃんもね。
だからたまには落ち込んでもいいよ。
いつでもこうして元気をわけてあげるから。