◻︎桃子とのこれから
仕事をしながら、これからのことを想像してみる。離婚を切り出すタイミングは、いつにするか?子どもにはどう説明するか?離婚が成立したとしても、すぐに桃子と結婚すると職場での自分の信頼が下がる気もするから時間を置く必要があるし。
すべてがうまくいくとは、思えない。そこまで楽観的にはなれない。でも、桃子と結婚したいという気持ちは変わらない。
愛美のことを考える。可愛くて控えめで、守ってあげたいと思ったのが結婚を決めた理由だった。いつも僕のことを第一に考えて僕だけを愛してくれていた。そう、子どもが生まれるまでは。女から母親になってしまった愛美には、女としての魅力を感じなくなっていた。きっと母親としては優等生だと思うが、妻としては何かが物足りない。それが何かわかったのは、桃子に出会ってからだ。
15才も若い桃子は、とても積極的だった。そしてそのカラダと、健気に僕を思う桃子に僕は溺れてしまったのだ。
___離婚を切り出したら愛美は何て言うだろか
考え過ぎてストレスが溜まるのか、シクシクと胃が痛む。鳩尾鳩尾の辺りをさすってごまかす。こんなに神経を使うことになるとは思ってもみなかった。
「課長、決裁をお願いします」
桃子が書類を持ってきた。
「あぁ、わかった。こちらに置いてくれ」
付箋が付いた書類を、僕のデスクの未処理箱へ入れて席へ戻る桃子。なんだか不機嫌なのは、さっきの愛妻弁当のことか、その時のやり取りのことかわからないが。
「ん?」
付箋には、今日の日付だけが書いてあった。今日帰りに部屋に寄って欲しいという意味だ。ご機嫌を損ねないように、言われた通りにすることにし、愛美には残業になるとメッセージを送った。
既読はついたが、返事はなかった。特に問題はないということだろう。
その後は、ほとんど惰性で仕事をこなした。
その日の帰りに、桃子が待つ部屋に立ち寄る。晩ご飯は、桃子の手作りのカレーとサラダだった。野菜サラダには桃子が好きだというパクチーが山盛りだ。僕はこれは苦手なんだが、残すと怒るからレタスやきゅうりと一緒に息を止めて詰め込む。
「ね、今日って、なんでお弁当だったの?」
「だから、あれは子どもの弁当の残りを詰めてくれただけだって」
「ふーん、そう…」
納得していない顔のまま、黙って自分のパクチーまで僕の皿に乗せてくる。
___これはアレか?罰なのか?
愛妻弁当は誤解なんだけど。拗ねた表情のまま、黙々とカレーを食べていく桃子。でも、それさえも可愛いと思える。僕の妻に嫉妬している証なのだから。
「僕が片付けるよ、桃子はゆっくりしてて」
なんとかご機嫌を直してもらおうと、後片付けを申し出た。
「わかった、じゃあ先にお風呂に入ってるから、終わったら来てね、和くん」
「あぁ、すぐに行くよ」
これは、今日はさんざん奉仕させられるんだろうなと想像する。バスルームでの桃子との行為を思い浮かべるだけで、僕のソコは屹立し前屈みでないと歩けなくなるほどだ。
___これだよ、これが愛美にはないんだよ
桃子のカラダと比べるのは、愛美には酷だと思うけど、もう少し色気というか、そういうものが持てないのだろうか?
穏やかな結婚生活は、それはそれで幸せだと思うけど、このまま年をとってしまうだけだと想像すると、人生がとてつもなくつまらなく思える。
___もう少し、いや、もう一度!たぎるような熱情を感じたいのだ
妻に不満があるのか?と訊かれたら、ないと答えるしかないだろう。まさか、性生活に不満があるとは口にできない。妻は、良妻賢母だ、それは僕も否定しないけれど。
___せめて、妻にも不貞の事実があれば離婚は簡単なんだけどな
そんな自己都合のいいことばかり考えるが、真面目でおとなしい性格の愛美には、そんなことはできないだろう。そういう女だから結婚向きだし、結婚は間違っていなかったとは思う。
___安泰の暮らしと、燃えるような熱情を両方手に入れることはできないのだろうか?
リビングで手早く服を脱ぐと、そのまま浴室へ向かう。
「和くん…あ、そんな…」
シャワーを浴びる桃子を後ろから、貫いた。男であることを再認識させてくれる、桃子をどうしても手に入れたいと、切に願った。
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