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第9話【800年の記憶と、花畑の制裁】
「……今度は、テレポートで逃げるの禁止ね?」
頬を撫でるアーモンドの指先から、ゾクゾクとするような熱が伝わってくる。
周囲には誰もいない、月光に照らされたハウメア湖の花畑。
800年前、自分が大地を深く抉り、その傍らでこの不遜な男に「踊ろう」と口説かれた、すべての始まりの場所。
アイラナは、魔皇帝としての仮面がじわじわと剥がされていくような恐怖と、それ以上の甘美な昂ぶりに、奥歯を噛み締めて必死に耐えていた。
「……レミエル。いや、アーモンド皇帝。ここは人間界だ。貴国との条約を控えた身で、このような不埒な真似は――」
「そんなに固い肩書きで僕を呼ばないでよ。誰も見てないんだからさ」
アーモンドはクスリと笑うと、アイラナの頬を撫でていた手をそのまま彼女の華奢な肩へと滑らせ、ぐい、と自分の方へと引き寄せた。
至近距離で交錯する、流し目の薄紫色の瞳と、燃えるようなレッドダイヤモンドの瞳。
「昼間の会議でも、さっきの晩餐会でも、君は僕を必死に突き放そうとしてたよね」
「……っ、それは、お前が私を弄ぶような態度を取るからだ!」
「あはは、図星。でもね、アイラナちゃん。君がそうやって魔皇帝としての威厳を保とうとすればするほど……僕、君のそのプライドをきっちりきっかり、めちゃくちゃに壊したくなっちゃうんだよね」
アーモンドの薄紫色の瞳の奥に、ギラリと邪悪で美しい鬼畜ドSの炎が灯る。
彼は空いた方の手で、自身の両耳に揺れるレッドダイヤモンドのピアスをわざとらしく弄んでみせた。
「800年も僕のことを一途に想って、独身を貫いてくれてたんでしょう?……それなのに、久しぶりに会えた僕にその態度は、ちょっと冷たすぎない?」
「///……っ💦」
まさか、
自分の隠し続けていた800年間の執着を
こんなにもあっさりと暴かれるとは思っていなかった。
アイラナのポーカーフェイスが、ついに完璧に瓦解する。頬が一気に深紅に染まり、レッドダイヤモンドの瞳が、屈辱と愛おしさで激しく潤んだ。
「ほら、やっぱり可愛い。昼間あんなに冷徹だった魔皇帝陛下が、僕の一言でこんなにウブに赤面しちゃうんだから……本当に、たまんないなぁ…」
逃がさないように腰を抱きすくめられ、アイラナの身体から力が抜けていく。
アーモンドは極上の流し目を細め、アイラナの耳元にそっと唇を寄せた。
「これ以上僕を焦らすなら、明日の会議、君がどんなに強がっても、他の奴らの目の前で『可愛い声』、啼かせちゃうよ?」
「――っ、お前は……どこまで、悪趣味なのだ……っ」
「悪趣味で鬼畜なのは、生まれつき。……さあ、800年分の甘いお仕置き、覚悟してね?」
逆らうことの許されない、最強の堕天使からの宣告。
月光に揺れるハウメア湖のほとりで、魔皇帝アイラナの頑ななプライドは、アーモンドのドSな愛によって、跡形もなく蕩かされていくのだった。
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ぽんぽんず