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硫酸バリウム
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ゆる
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コメント
2件
「続きが気になりすぎます……!」っていうのが率直な感想です。最初は血の気が引くほど恐怖する展開なのに、星導の低く優しい声が逆に背筋を冷たくさせるのがエモすぎました。理不尽な支配に少しずつ壊れていく小柳の心の変化が切なくて、つらいけど目が離せません。2人の行方、どうなっちゃうの……。続話も絶対読みます!
その夜、組織の最深部にある地下倉庫は奇妙なほど静まり返っていた。
「……おい、星導。何してんだお前」
任務中に突如として通信を絶った仲間を追って、小柳は暗闇の奥へと足を踏み入れた。コンクリートの床にぽつんと佇む星導の背中を見つけ、小柳は刀の柄に手をかけたまま声をかける。
ゆっくりと振り返った星導の瞳には、かつての冷静な表情など微塵も残っていなかった。ぐにゃりと濁り、底の抜けた暗黒のような狂気がその両目を支配している。
「おや、小柳くん。わざわざ俺を迎えに来てくれんですか。相変わらず、あなたは健気でかわいらしい野良犬ですね、w」
「何言ってんだお前……?目がマジなんだけど……っ!」
本能的な危機感を察知した小柳が刀を抜こうとした瞬間、星導の手から放たれた悍ましい触手が、一瞬で小柳の全身を縛り上げた。
「くそっ、動けねぇ……!星導、お前正気か!?」
「正気ですよ。これ以上ないほどにね。……世界を救うだの、ヒーローだの、そんな退屈な遊びにはもう飽きてしまったというお話です」
星導は音もなく小柳の目の前に歩み寄ると、身動きの取れない小柳の首筋へ向けて、躊躇なく一本の注射器を突き立てた。
「――っ、が、あ……っ」
「まずは少し、静かになってもらいますね」
血管へ流し込まれたのは、強力な医療用の麻酔薬だった。静脈を伝って薬が流れ込んでいく。
刃物のように鋭かった小柳の眼が、急速に焦点を失っていく。全身の筋肉から強引に力が奪われ、刀を握ることもできぬまま、小柳の身体は星導の腕の中へと崩れ落ちた。
「あ……星、導……てめ……」
「おやすみなさい、小柳くん。目が覚めたら、俺たちの新しい住処ですよ」
それが、小柳が最後に聞いた星導の、低く冷酷な声だった。
――それから、どれほどの時間が経ったのだろうか。
カチリ
と静かな音がして、小柳は重い瞼を開けた。
視界に飛び込んできたのは、窓ひとつない、贅沢な家具だけがそろえられた見知らぬ部屋。そして、自分の両手首に嵌められた頑丈な金属製の錠だった。ベッドのフレームに繋がれた鎖が、身動きをするたびに冷たい音を立てる。
「……は?おい、いい加減にしろよ星導!こんなことしてタダで済むと思ってんのか!」
最初の数日間、小柳は決して屈しなかった。
食事を運んでくる星導に掴みかかろうとし、鎖がちぎれんばかりに暴れ、鋭い眼で激しく睨みつけ続けた。
「小柳くんそんなに暴れては傷がついてしまいますよ」
「うるせぇよ!さっさとこれ外せ!俺を誰だと思ってんだ、!」
「ええ、知っていますよ。あなたは俺の、獰猛で最高にかわいらしい野良犬だ」
星導はそう言いながら、手にしたトレイから一本の注射器を取り出した。
以前に使われた透明な麻酔薬ではない。ピンク色に濁った、妖しく光る濃厚な媚薬。それを見た小柳は、まだそれが何かも知らずに「チッ、またそれかよ。いい加減にしねぇとマジで――」と吐き捨てた。
「大人しくしてください。……あぁ、言い忘れていましたが、これ、ただの眠り薬ではありませんよ」
星導は小柳に馬乗りになると、その細い首筋へ向けて、酷く優しく、そして冷徹に針を近づけた。
「元から俺、小柳くんのこと好きだったんですよ?だから……これで気持ちよくなってくださいね」
「――っ、が、あ……ッ!?」
星導の手際によって、強烈な媚薬が躊躇なく血管へと流し込まれた。
次の瞬間、小柳の身体がベッドの上で激しく跳ね上がる。血管を伝って全身へと駆け巡る熱は、あまりにも暴力的だった。脳の芯がドロドロに溶かされるような凄まじい快感と、下腹部を直接灼かれるような悍ましい淫熱が、一瞬で小柳の理性を粉々に叩き割っていく。
「あ、は……熱、い……これ、なに、星導……てめ、ぇ……ッ!」
「媚薬ですよ。小柳くんを俺の愛だけで満たすための、特製のね」
まともに口も回らなくなり、視線が定まらない。身体の内側から沸き上がる強烈な昂ぶりと、自分の意志ではどうにもできない淫らな焦燥感に、小柳は涙を流して腰を震わせることしかできなかった。そんな小柳の濡れた睫毛を、星導は愛おしそうに指先でなぞっていた。
だが、一度や二度では小柳のプライドは死ななかった。
薬の熱が引くと、彼は再び怒りに燃えて星導を拒絶した。「二度と触るな」「許さない」と叫び、激しく反抗した。
しかし、そのたびに星導は一切の躊躇なく、そのピンク色の注射を首筋へと突き立てた。
反抗すれば、あの理性をすべて剥ぎ取られて蕩かされる地獄が待っている。
何度も、何度も、身体をガタガタと震わせながら快感に泣き叫ぶうちに、小柳の心は冷酷に調教されていった。
何日経ったかもわからない頃、小柳はついに理解してしまった。自分が牙を剥くたびに、あの恐ろしい針が降ってくるのだと。
――さらに数日後。
カチリ、とドアの鍵が開く音が部屋に響く。
ベッドの上で横になっていた小柳は、その音を聞いた瞬間、条件反射のように身体をビクリと強張らせた。
入ってきた星導の手には、やはりあの忌まわしいピンク色の液体が入った注射器が握られている。
小柳は喉の奥で息を呑み、繋がれた鎖を小さく鳴らして、無意識にベッドの端へと身体を引いた。
だが、もう以前のように暴れたり、怒声を浴びせたりはしなかった。反抗すればどうなるか、身体が、脳が、恐怖と共に記憶しているからだ。小柳はすっかり静かになり、ただ怯えた眼で星導を見つめることしかできない。
「おはようございます、小柳くん。ずいぶんとお利口になりましたね。もう俺を睨みつける元気もありませんか」
星導が淡々とベッドの縁に腰掛け、小柳の細い足首を掴んで引き寄せる。小柳はビクッと身体を震わせたが、注射を打たれたくない一心で、それ以上の抵抗を必死に抑え込んだ。
「いうこと、聞く……静かに、してるから……」
掠れた声で、これ以上ないほど従順な姿勢を示す小柳。これで薬は打たれないはずだった。暴れず、大人しく星導の言う通りにしているのだから。
しかし、星導は小柳の身体を割り、その上にゆっくりと覆い被さると、手にした注射器のピストンをわずかに押し、先端からピンク色の粘り気のある液体をひと雫、タラリと滴らせた。
「な……んで……っ」
小柳の瞳に、絶望と恐怖の涙が一気に溢れ出した。大人しくしていれば打たれないと思ったのに、星導の指先は冷徹に小柳の首筋の血管を探っている。
「いやだ、星導……俺、もう怒ってない……!暴れてないだろ……っ。なんで、なんで打つんだよ……ッ!」
カチカチと歯の根を鳴らし、涙をボロボロと流しながら小柳は泣きじゃくった。
いつもの気怠げな態度など完全に消え失せ、理解できない理不尽への恐怖に子供のようにイヤイヤと首を振る。
「あぁ、勘違いしないでください。お利口にしているのは褒めてあげますが、それはそれとして、これは毎日のルーティンですから」
星導は濁った瞳で小柳を見下ろし、その細い首筋を長い指先で少し強く圧迫した。
「さあ、お注射の時間ですよ、小柳くん」
「ひっ…やめ、!」
肉を貫く鋭い痛みの直後、容赦なく血管へとドロドロした凄まじい淫熱が流し込まれた。
その瞬間、小柳の身体が弓なりに激しく跳ね上がる。脳髄を直接ドロドロに灼き尽くすような暴力的快感が全身を駆け巡り、一瞬で小柳の理性を粉々に叩き割っていった。
目がぐにゃりと白を剥き、開いた唇からは締まりのない涎がトパトパと溢れ出す。
「あ、は、あ、熱、い……おなか、あつい、よぉ……っ」
さっきまでの泣き叫ぶような拒絶はどこへやら、小柳は自分の意志とは関係なく、身体の芯から溢れ出る蜜で下腿を濡らし、ただ熱に浮かされたように腰をピクピクと痙攣させ、自ら星導の太い指や身体を求めて、縋るようにすり寄り始めた。
「ええ、とても可愛いですよ。そうやって、俺の薬に溺れていればいいんです」
星導は空になった注射器を放り出すと、完全に理性を溶かされ、ただ最奥を疼かせて鳴くだけの人形となった小柳の、汗ばんだ細い腰を力強く引き寄せた。
そして、薬への恐怖と快感でヒクついている秘部へと、小柳用にとかっていた玩具を容赦なく押し当て、その蕩けきった唇を貪るように奪い去った。
「ん、あ、う、ぁ……っ、は、あ……」
どれほどの時間が経ったのか、それすらもう小柳には分からなかった。
激しく身を焦がすような淫熱の波がゆっくりと引いていくと、あとに残るのは、強烈な脱力感と、自分の身体が完全に星導のモノへと変えられてしまったという、泥のような絶望感だけだった。
「……はぁ、はぁ、っ……」
小柳の開いた口元からは、未だに締まりのない吐息が漏れている。はだけた胸元は激しく上下し、汗と、星導に付けられた生々しい痕で赤黒く汚れていた。
手首の錠が、彼が小さく呼吸を変えるたびに、チャリ……と力なく音を立てる。
星導は、小柳の思考がいかれるほど玩具を使ったというのに、呼吸ひとつ乱していない。それどころか、満足げに目を細め、ぐったりとシーツに沈む小柳の濡れた前髪を、酷く愛おしそうに指先で梳いていた。
「お疲れ様でした、小柳くん。今日も、とてもお利口に俺の愛を受け入れてくれましたね」
その低く心地よい声が、小柳の鼓膜を優しく揺らす。
前までなら「うるせぇ、」と撥ね退けていたはずの言葉が、今の小柳には、これ以上ないほど恐ろしい支配者の宣告に聞こえた。
小柳は、星導の手が頬に触れるたびに、ビクッと小さく肩を震わせる。涙で視界がにじむ中、虚ろな目で、サイドテーブルの上に放り出された空の注射器を見つめた。
あんなに大人しく、星導の言う通りにしたのに。
もう二度と牙を剥かないと、心の中で誓ったのに。
それなのに、星導は冷徹な笑みを浮かべたまま、小柳の首筋にあの針を突き立てたのだ。
「なぁ……星導……っ」
かすれた、今にも消えそうな声が小柳の唇から零れ落ちる。
「……なんで、だよ……。俺、もう……お前に、逆らわないって……言ったじゃんかよ……っ」
止まっていたはずの涙が、またボロボロと目尻から溢れ出し、枕を濡らしていく。
組織の誰よりもプライドが高く、不条理を嫌っていたはずの自分が、こんな風に声を震わせ、泣きながら理不尽の理由を問い詰めている。その事実自体が、小柳の心が完全に破壊されている証拠だった。
星導は、そんな小柳の涙を親指の腹でそっと拭い取ると、ふふ、と低く、愉しげに笑った。
「言いましたね。ええ、確かに小柳くんはそう言いました。ですが小柳くん、俺が欲しいのは『従順な言葉』ではないんですよ」
星導は小柳の細い顎を、逃がさないように少し強く、指先で固定する。濁りきった瞳が、至近距離で小柳の怯えを値踏みするように見つめた。
「俺が欲しいのは、あの薬がなければ生きていけないほどに、身も心も俺に依存しきった、小柳ロウという存在そのものです。一度でもあの快楽を覚えた身体は、もう俺の薬なしでは、恐ろしい悪寒と渇きに苛まれることになる。……分かりますか?」
星導の手が、ゆっくりと小柳の細い首筋へと滑り、先ほど針を刺したばかりの、微かに赤くなった箇所を愛おしそうに圧迫する。
「きみが俺の言うことを聞くのは、俺が好きだからではなく、薬が怖いからでしょう? それは駄目。俺は、小柳くんが恐怖のあまり俺を拒絶できなくなり、やがてその恐怖すらも、俺への快楽と混ざり合って区別がつかなくなるまで、何度でもこのルーティンを繰り返しますよ」
「っ、ぁ……、う、そ……だろ……っ」
小柳は絶望に目を見開いた。
反抗を止めれば、いつかは解放されるかもしれない。そんな一種の希望すらも、星導の言葉は冷酷に粉砕した。星導は最初から、小柳を元の世界に戻すつもりなど毛頭ないのだ。
「嘘じゃないですよ。俺がいつ嘘を吐いたことがありましたか?」
星導はベッドから身を起こすと、サイドテーブルから新しい、まだ未使用のピンク色の注射器を取り出し、小柳の目の前でわざとらしく掲げてみせた。
「さて……次は明日の朝、ですね。それまでに、しっかりと俺の体温をその身体に馴染ませておいてください。……また、お注射の時間に泣き叫ぶ小柳くんを見るのも、俺は興味深いですが」
「ひ……っ、あ、あ……」
目の前で揺れるピンク色の液体を見た瞬間、小柳の身体は、今度こそ完全に恐怖に支配され、ガチカチと音を立てて震え出した。
もう、逃げられない。
明日も、明後日も、その次も。星導が飽きるまで、自分はあの地獄のような淫熱に脳を灼かれ、ただ鳴くだけの人形として 蹂躙 され続けるのだ。
「……いや、だ……たすけ、て……」
誰に届くとも知れない、掠れた悲鳴を漏らす小柳の額に、星導は酷く優しい口づけを落とした。
「誰も来ませんよ、小柳くん。ここには、俺とあなたしかいないのですから」
静まり返った部屋の中で、小柳はただ、次の「注射の時間」が来る恐怖に震えながら、涙を流し続けることしかできなかった。