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奏多
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ルーイ様の報告はその後1時間ほど続いた。レオンたちの様子に始まり、ニュアージュのふたり組の処分結果……そして、今後島内での生活に影響を与えるであろう重要な事柄についての続報。
先延ばしにされていた神々たちの会合日程が正式に決まったらしい。
「明後日の日没後……場所はリオラド神殿。出席者は前回と同じだ」
「……ということは、またレオンも参加するのですね」
レオンは前回の会合で相当神経を擦り減らしていたから心配だ。自分が参加することに違和感を抱きながらも、神たちがどのような決定を下すか見届けなければならないという使命感もある。複雑な心境を吐露していたのだ。
「今回の主催であるコンティレクトの要望だからね。俺も見張りとして付いていくから安心しな。レオンに手出しはさせないよ」
「はい。よろしくお願いします、ルーイ様」
コンティレクト様はローシュの神様だ。私は一度だけ王宮でお会いすることができた。見た目は老年の男性の姿をしていて、穏やかで優しそうな方だった。メーアレクト様と懇意にしてらっしゃるので、レオンに危害を加えたりなどしないと信じたい。しかし、神様の心理というのは私たち人間の尺度では測れない。ルーイ様ですら時々おかしな言動をしていると思うことがあるのだから……
本音を言うとレオンに行って欲しくない。でも、仮に私が止めたところで彼は聞き入れてはくれないだろう。私に出来るのはレオンとルーイ様を信じて待つだけなのだ。
「会合に行くついでにメーアたちにも『予言者』について聞いてみるよ。案外心当たりがあるかもしれないしね」
ネルとティナにかけられている催眠術は魔法と言われても納得してしまいそうなほどに強力だった。魔力の気配はしないので違うと分かっているが、魔法を使用しないであのように他人の言動を縛る術を持っていることが恐ろしい。
あくまでネルとティナが特別で、術にかかりやすい条件が揃っていたからだとルーイ様は言っているが……それでも、自分の知らないうちに予言者の術中にハマってしまうなんて事を想像すると背筋が震えてしまう。
魔法使いではないのにそんな芸当が出来る人間……神様たちの話し合いでヒントが掴めれば良いけど……
「クレハはしばらく自宅待機命令が続くだろうから大変だな。退屈だろ?」
「いいえ。もとからそんなに出歩く方ではなかったので、以前の生活とそこまで変わらないといいますか……むしろ戻ったというか……」
「そういやお前引き篭もりだったな」
引き篭もりは言い過ぎだと思う。待機命令がそこまで苦に感じていないのは事実だけど。トレーニングは家の敷地内でも出来るし、レナードさんとルイスさんがいるから相手にも困らないのだ。
「俺も色々思うところはあるが、当面はレオンの言う通りにしてやるよ。クレハの家にもずいぶん慣れたからね」
「ありがとうございます。ルーイ様がいて下さると本当に心強いですし、屋敷が賑やかで楽しいです。みんな頼りにしているんですよ」
「おだてても何もでねーぞ」
私のお礼に対してそっけない返しをしつつも、表情は満更でもなさそうだ。照れた顔を誤魔化すためだろうか、ルーイ様は忙しない仕草でティーカップを手に取り、残っていた中身を一気に呷った。
「他はなんかあったかなぁ。クレハに伝えておいた方がいい話は……まあ、俺が忘れててもレオンがフォローしてくれるか」
ルーイ様は早々に記憶をたどることを諦め、お茶請けのお菓子を食べ始めた。相変わらずマイペースだな。内心で呆れつつも、彼のこういう気の抜けた態度に救われる事は多い。ルーイ様が普段通りでいてくれることに安心する。どんなに困難な問題が起きても、どうにかなると思うことができる。私の……いや、皆の心の支えになっているのだ。
「事件関連の話はとりあえず終わりにしよう。今度は気分が明るくなるような楽しい話をしようじゃないか。コンティに貰った食事券はいつ頃使うかとか……あっ! そうだ、クレハは店のイベント企画任されてただろう。あれはどうなった。何か考えてる事あるの?」
「実はまだ全然……」
「そっか。じゃあ、自宅待機中の今が丁度いいじゃないか。時間はたっぷりある。俺も手伝ってやるから一緒に考えようぜ」
「はいっ! あっ、リズもいいですか。きっと興味あると思うんです」
「OK、OK。3人で考えよう。よし、そうと決まれば早くリズちゃんを連れておいで」
ルーイ様の提案で、以前レオンに頼まれていた『とまり木』のイベント企画を考えることになった。開催できるのはまだまだ先になるのは分かっているけど、事件のことばかり考えて気落ちしてしまうのを防ぐという目的もあった。
予言者は恐ろしい。でもだからといって、その存在にビクビク怯えて暮らしていくのは嫌だった。生きるために強くなると決めた。予言者が未来で私を殺した者と同一人物であるなら……今度は絶対に負けない。その正体を白日のもとに晒してやる。
そうして月日は流れていき――――――
私とルーイ様が出会ったあの日から6年が経過する。私は14歳になった。