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騎馬戦の時間。
グラウンドの真ん中は、すでに砂埃だらけだった。
「……絶対荒れるだろ、これ」
『今さら』
ローレンは腕を組んで、葛葉を見る。
『無茶すんなよ』
「誰に言ってんだ」
『くっさんに』
「余裕」
ピストルの音が鳴る。
一斉に騎馬が動き出す。
「うおっ」
相手の騎馬とぶつかり、バランスを崩す。
「……っ」
その瞬間、ぐらっと体が傾いて、地面に転がった。
『……くっさん!?』
ローレンが駆け寄る。
「……平気」
『血出てる』
「擦っただけだろ」
『座れ』
ローレンは強引に葛葉を座らせる。
『動くな』
「大げさ」
『大げさじゃない』
ローレンはハンカチを取り出して、膝を押さえる。
『……俺が見てなかったら』
『もっと無茶してたろ』
「……見てたのかよ」
『当たり前だろ』
葛葉は少し黙る。
「……ちょっと、痛ぇ」
『ほら』
ローレンはそっと押さえる。
『保健室行く』
「競技まだ」
『知らない』
「お前……」
『こっちの方が大事だから』
「……ずる」
保健室は静かだった。
ベッドに座らされる。
『先生いないな』
「静かで助かる」
ローレンはしゃがんで、包帯を巻く。
『動くな』
「はいはい」
『……さっき』
「ん」
『転んだ時』
『心臓止まるかと思った』
「大げさ」
『大げさじゃない』
ローレンは顔を伏せる。
『……くっさんが怪我すると』
『俺が困る』
「……それだけ?」
『……それ以上』
少し沈黙。
カーテンが風で揺れる。
「……ごめん」
『何が』
「無茶した」
『……分かればいい』
ローレンは包帯を巻き終えて、立ち上がる。
『しばらく安静にしてて』
「体育祭なのに」
『体育祭より』
『くっさん優先』
「……重い」
『嫌なら聞くな』
「嫌って言ってねぇ」
葛葉はローレンの袖を掴む。
「……ありがとうな」
『……どういたしまして』
二人はそのまま、静かな保健室で並んで座った。
外から、応援の声だけが聞こえていた。