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「はじめくんはかっこいいね、きっとすてきな旦那さんになれるよ」
そう言われたのはいつだっただろうか。あかねさんにかっこいいと言われることは嬉しかったが、素敵な旦那さんになれると客観的に言われたことで、あかねさんが俺のことを意識してないと嫌という程実感してしまった。きっと、いままでのかっこいいと言う言葉も弟に向けるような感覚だったのだろう。いちいち喜んでいたのが馬鹿馬鹿しい。
俺は、苦しい胸を抑えて、あなた以外の旦那になるつもりなんてないという言葉を飲み込んで、
「ありがとう」
と言った。
その後、あかねさんと別れたあと、急いでるように走って、あかねさんの家がちっちゃくみえるほど大きい坂を登り走った。目の縁から水が流れて、嗚咽が出るのを誤魔化すように全力で走って風を受けた。
俺は何をしていたのだろうか
図書館でどれだけ心理本を読み漁っても、クラスの名前も知らない女子を落としてみても、自分にとってのたった一人を振り向かせることが出来なければ、意味がないのに。
苦しい、辛い、胸がじんじんする。痛い。
恋とはこんなに苦しいものだったのか?いままでクラスで彼氏だの脈アリだのキャッキャ話す女子達をいつも遠巻きに他人事のように見ていた。みんな楽しそうに話すものだから、恋を自覚した時には、きっと楽しいものになるのだと勘違いしていた。
そっか、そりゃそうだよな。報われない恋と報われる恋では大きな差がある。
俺はすっかり日のくれた空を見て、重い足で家に向かった。かあかあとカラスが耳うるさく鳴いてうっとおしかったけど、怒る気力も俺には残ってなかった。