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あたしと明澄は塩水を片手にふろ場を訪れた。

足音が聞こえるくらいだから、ふろ場にいるかはわからないんだけど。



吉か凶か。



あたしはわずかな希望を胸にガラリと引き戸を開けた。



「……いない、か」



そこには冷水が入ったふろオケが残されているだけだった。



打ち砕かれた希望にあたしは肩を落として落胆する。それと同時に、どこから現れるかわからないうさっちを探さなければならない緊張感が身を包んだ。



ふいを突かれたらさすがのあたしもうまく動けないかもしれない。



「……大丈夫なのかな」



かぼそく呟く明澄に、あたしは虚勢(きょせい)ながらに歯を出して笑った。



「うん、大丈夫大丈夫。すぐ見つかるよ」


「っでも、一応ブキとか持っておいた方がいいんじゃ……」


「ブキ? うーん……じゃあ、」



シャワーヘッドをはずして明澄に手わたす。



「これ使いなよ。無事終わったら返してね」


「……うん、ありがとう。これなら最悪殴り殺せそう」



わたされたシャワーヘッドを見て、明澄は薄く笑みを浮かべた。



殴り殺すとか物騒(ぶっそう)な。でも、それぐらいの気持ちでいかないと心がもたないのかな。



ふろ場を出て、足音で居場所を探ろうと耳を澄ます。



「──……聞こえないね」



明澄の言った通り、いつの間にかあの米を落としたような足音は消えていた。



こうなったらしらみつぶしに探していくしかない。



あたしたちは顔を見あわせる。あたしがリビングに目を向けると明澄は緊張した面持(おもも)ちでうなずいた。



まずはリビングだ。



おそるおそるドアを開けると、キィと小さな音が耳に響く。なんとなく音を立てたらいけない気がしてすり足で中に滑りこんだ。



ザー────



「ひっ……」



テレビからの無機質な砂嵐に明澄から小さな悲鳴があがる。



さっきここに来たときは間違いなく深夜番組がついていたはずなのに……。



少しずつ、この家が異空間に変わっているのではと思うと、少しだけ怖かった。

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すっごくお話が面白いです!どきどきしながら世界観に引き込まれました。

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