テラーノベル
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第35話
あれから、二本目もやったけど、あっさりと勝った。三、四本目も勝った。
だけど、レーナに止められて無傷の全勝無敗で終わった。
「ビタリ。強くなったね」
「はい。あれから猛特訓しましたから」
「剣もちゃんと手入れが行き届いてて、環境も良かった。ここまでできるなんてすごいな」
「あはは。僕は、このルミナを守らないといけませんから騎士と医療と教育には力を入れています」
守らないとね……ビタリもマルコさんを幼い頃に失ったのか……
僕もいなくなって、お母さんと姉と三人で……大変だったな……
「ビタリって、失うのは怖くない?」
「え? 失うのか……う〜ん……」
ビタリは少し顎に手を当てて考えた。
「……怖いけど、避けてたら民に示しがつかないのに加えて、現実を受け入れなくちゃいけないから、僕だったら立ち向かいますね」
立ち向かう……僕は、どうだったのだろう。
逃げて、避けて、怯えて……
「あ、でも、できるかどうかは別ですよ。僕がやらないといけない事なので、心を押し殺してやるかもしれません……」
「そっか……」
「そう言うロルフさんはどうなんですか?」
「僕は……怖いし、逃げて、避けて、怯えるかもしれないけど、大切な人の目はこの手で塞ぎたい。記憶は厄介だから」
「記憶は厄介か……記憶は、完全には消さないけど、完全に取っておく事もできないから難しいですよね。大切な思い出よりも、汚してしまった思い出や、怖い思い出の方がよっぽど掘り込まれているように覚えているのに……」
掘り込まれているように覚えてる。確かにな……
僕たちはおやすみの挨拶をしてから布団に入った。
「あれ? ここは……」
僕は気付いたらどこかの森の中にいた。訳が分からず、キョロキョロしていると昔の僕とソフィーと血だらけのお母さん、お父さんがいた。
まさか……
僕は目を見張った。
僕は何度か、反撃者や斥候、情報を抜かれたり、賞金者やアニカの命を狙うやつ人目がつかない所で殺して片付けた事がある。無論、アニカも。
でも、今回ばかりはそうとはいかない。
昔の僕は折れた剣を持ってソフィーを連れて逃げて、泣いていた。
僕は両親の元で崩れ落ちた。
息も無くて、優しく僕を慰めてくれた体の温もりも無い。
あるのは、光を失った僕と同じ青い瞳。二人とも青空のように青かった。
でも、僕の瞳は青色が薄い。だから、魔力も光の力も薄かったのだと思う。少なくとも、十四歳までに出る。それは常識。
僕はもう十四歳。あの日、アニカは目覚めたのに、僕は何もできなかった。それに、もう目覚めていたのかだから。
そんな事を何となく昔から悟ってた僕は、魔法が使えない自分に何か力になれないかと幼いながら考えた結果がこれだ。
剣を片手に森へ行っては、とんでもない魔獣と遭遇して怪我をして、喧嘩をしたら怪我をさせ、挙句の果てには足を踏み外して池に落ちてしまう。
日常茶飯事だ。もうあの時には慣れてた。
『口さのない陰口』だけど、無いと逆に怖かったかもしれないくらいに僕は洗脳されていたんだと思う。
そんな時に守ってくれたのがお母さん。支えてくれたのがお父さん。二人が僕の心の灯火だった。
この時にスッと僕の心の光は消えた。だから、どこにこの気持ちをぶつけていいのか分からなかった。
僕は子供のように泣きじゃくった。声をあげて、こんな事してたら騎士失格だ。
心でそう思っても体が言う事を聞かない。
お父さん……お母さん……僕が弱かったから……
「……っ!」
僕は走った時のように肩で息をしながら飛び起きた。
周りにはレーナとビタリと治癒騎士がいた。
「ロルフさん。大丈夫ですか? やっぱり無理を……」
「ごめん。夢見が良くなかっただけ……」
「じゃあ、その涙は何なのですか?」
ビタリに鋭い声で言われて頬を触った。確かに濡れていて、泣いたんだと悟った。
「……少し、自分に悔やんでただけ。守れたはずの人が守れなかった時をね」
そう言って僕は微笑んだ。
「ふと、朝方にロルフさんの部屋の前を通った時に剣をお借りしたままという事を思い出して会いに行こうと思ってもいなかったから、もしかしてと思って……」
「そっか……ありがとう。少しシャワーを浴びてから向かうから、もう大丈夫」
「はぐらかしていませんか? あんなに、うなされていて大丈夫とはとても思えません」
「……僕が、もう少し始めから真面目だったら家族を助けられたんだ。なのに、僕は……」
「それは私たちも同じです。お父様だって、強ければ助けられたし、お母様だって、治療の技術があれば助けられました……それは誰しもが通ります。責めても仕方ありません」
「ありがとう。レーナ」
僕はそう言ってベッドから降りて軽く髪を梳かして、耳飾りを着けてから扉に手をかけた。
「少し、早めに出る事にするから、今日の夕方には出る。また、会えるように頑張るから」
そう言って微笑んでから扉を開けた。
……自分の部屋に人を置いていくのは、模範的では無いな。でも、戻れないから……うん。二人だったら、許してくれる。
僕はそれからシャワーを浴びてからちゃっかりと鍛錬に参加した。
コメント
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うわ、第36話、読みごたえあったなあ。ロルフの過去がフラッシュバックで描かれて、両親を失った現場を思い出すシーンは胸が締め付けられたよ。「守れたはずの人が守れなかった」っていう後悔、ずっと引きずってるんだね。ビタリとレーナの「責めても仕方ない」って言葉が沁みた。でもロルフはそれを正面から受け止めようとしてるのが、強さだと思う。また会えるように頑張る、って前を向いた締めくくりにホッとした。
りう。
39
#感動
こはる
917
上野文
6,439
#探偵
橘靖竜
5,392