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ん……ぅ……?

(……、?ここ……どこ……?)

ぱち、ぱちりと、少年は目を覚まし。

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辺りをゆっくりと見渡す。 どうやらここは自分の知っている場所では無いらしい。その途端、あの場所で無いことへの安心感に襲われる。

…………

全身がずき、ずきと痛む。が、そんな事は気にもとめず。ゆっくりと体を起こす。と同時に

おや、起きたようじゃのぉくさび

リンッと高い鈴の音と共に、柔らかい声が耳に入り。その声には、確かに聞き覚えがあって。

……てんこの……すずり、さま……?

涼鈴『おや、おぼえてくれていたのかの?そうとも、桂花けいか家 現当主、桂花 涼鈴すずりじゃよ。さすが、賢いのぅ〜!』

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そう言うなり、にっこりと笑って涼鈴は楔に抱きつき、ころころと鈴の音のような聞き心地のいい声で優しく楔に問いかけ。

涼鈴『さて、はて。本題じゃが…何故楔はあのような所で倒れていたのじゃ?妾に言うてごらん』

楔『………』

涼鈴『……言いにくいかの?それとも、妾では信用ならぬか?』

楔『…………』

じっ、と言葉も発さずに。楔は涼鈴を見つめた後に、ふいっと顔を逸らして

涼鈴『おや……ふふ、そうかそうか。そうじゃの、なにか理由があるんじゃろう。話したくなったらいつでも話しにおいで』

少し驚いたように目を見開くも、ふっと優しく笑って、涼鈴は楔の頭を撫でて

涼鈴『それでは妾は少し仕事に戻るとするかのぅ……柚涼』

そう涼鈴が名前を呼ぶやいなや、勢いよく扉が開いて。

はいっ、姉様!!お呼びですか?はっ……もしかしてやっと祝言をお決めに……!

きらきらと目を輝かせ、声をはずませながら。涼鈴の弟、柚涼ゆすずが現れ。

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涼鈴『祝言は挙げぬと何度も言っておるであろう……楔の警護を頼みたいのじゃ、よいな?』

柚涼『なっ…!?……分かりました…』

半ば呆れたように涼鈴が命じると、少ししょげながら、柚涼はしぶしぶ頷いて

涼鈴『うむ、よろしく頼んだぞ柚涼。妾は行ってくるでな。また後程会おうぞ、楔』

再度、楔の頭を撫でた後、リンッと鈴が鳴ったかと思うとそこに涼鈴の姿は既になく。楔と柚涼の2人きりになっており。

柚涼『……さて、まっったくお前の面倒など見たくないが…姉様からの命だ。仕方ないから一緒に居てやる』

楔『……?』

すん、と不機嫌そうな声で言いながらも。柚涼は楔の近くにすとんと座って。

そして、無言の時間が数分続いた後、柚涼が口を開き。

柚涼『……腹、減ってるだろう。何か作ってくるからそこで待っとけよ』

そう言って、柚涼は静かに部屋から出て行き。楔はまたも一人きりの部屋を、きょろ、と見渡して。

楔『……ひろ、い……』

見渡すと、明るく、暖かく、随分綺麗で広い部屋だ、と気付き、改めてあの場所では無いことに安堵する。


──暗く、冷たく、白濁した体液と、その臭いがこびり付いた、あの牢ではない。それだけで、楔にとっては嬉しい事で。



楔『……、あった、かぃ…』

もそ、もそと、座ったまま布団に潜り、そのままぼーっと布団の中の暗闇を見つめていると、突然扉の開く音がして。

楔『……ゆ、すず…くん、?』

柚涼が戻ってきたのかと、そう小さく名前を呼ぶ。と

おヤ、おはようございまス。楔クン

楔『………?』

聞き覚えのない声で自分の名前を呼ばれると同時に布団を少し捲られ、片目を隠した人物が楔の目に入り。目が合うと、その人物はにっこりと笑って




初めましテ、楔クン。ところデ…少し齧ってモ?



さらりと、そう言った。

カミサマなんて要らない世界で君達と

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