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王城へ向かうと棺と黒い服をまとった聖騎士と神官とアニカ姫の姿が見えた。
「お母様……」
アニカ姫は崩れて泣いている。
「ジョルジャ!」
そう言って入ってきたのは王だった。僕は肩膝をついたけど、マルコさんに肩を優しく叩かれた。
「今は、例外だ。立っておいたほうがいいぞ」
僕は頷いて皆の横に立った。
二人は棺を見て涙を流している。
僕はあの家族を見ているとふと、一年前の事を思い出した。
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「くっ……逃げろ。ソフィーを連れて逃げろ」
お父さんが大きな魔獣に向かって片手剣一本で立ち向かいながら後ろにいる僕らに話しかけた。
僕はお父さんの隣にいた傷だらけで血まみれのお母さんをみて声も出なかった。
「お兄ちゃん……」
そう言ってソフィーは僕にしがみついた。
どうすればいいんだ……
ここで逃げればお父さんは死ぬ。でもここにとどまっても、生きて帰れるとは限らないよね……それに、ソフィーを巻きこむ事になる……
見捨てたらお父さんを殺した『親殺し』になっちゃう……
「俺の事はいい。俺が守らないといけないのにすまないな……」
そう言われた瞬間、僕はしがみついたソフィーと一緒に駆け出した。僕とソフィーの青い瞳から涙が沢山溢れ出した。
そのまま家に帰ってもう誰も傷つけないように、護れるようにと、毎日欠かさずに鍛錬を続けた。
✡
僕がそんな事を思い出して泣いているとロザンナが「そうよね。ロルフも両親がいなくなって心細いよね」とお母さんのように肩を撫でてくれる。
「あの事は災難だったからな……今は目の前の事に集中しないといけないぞ」
ロザンナの隣でマルコさんが唇を噛んでいる。
「そうだ。気を落とすな。今は俺たちがあの家族を守らないといけないんだ」
その隣でシルビオさんが頭を撫でてくれる。
そうだよ。何メソメソしてるんだ? 今、一番悲しんでいるのはあの二人なんだ。
僕は頷いて涙を拭った。
数日後。
廊下をトボトボ歩いていたアニカ姫の背中が見えて駆け寄った。
「アニカ姫」
そう言うと彼女は振り向いた。
「わっ!……ロルフさんですか……」
肩をビクッとさせて驚いたものの直ぐに姿勢を直した。
「景色が綺麗な所があるんですけど……僕も両親が逝ってしまった時によくそこで慰められていたんです。良ければ行きませんか?」
下手な誘い文句だ。そう自分でも感じながら真っ直ぐな瞳で彼女を見つめた。
彼女は少し考えてから「えぇ。お言葉に甘えて」と微笑んだ。
僕もつられて微笑んだ。すると意外な顔をされて目をパチクリされた。
何かおかしい事でも……?
「微笑んだのを見たのが初めてだったから……ごめんなさいね」
僕が首を横に振ると「そこで待ってて下さい。少し準備をしますので」と言ってアニカ姫は自室に戻った。
それから僕たちは兵を付けずに城の外にある山――サンコウの木へ向かった。
「なぜ、ここで?」
そう聞かれた僕は「ここが一番星が綺麗に見えるから」と答えた。
「星……夜に来てみたいものね……」
アニカ姫はそう言ってから大きく息を吸った。
ん?何をしているんだろう?
「あ、空気が新鮮で……ほら、あそこは古いし、換気もしきれてないから」
確かにお城は空気がいいと言ったら嘘になる。窓があるものの、換気というのは殆どされない。
したとしても大掃除の時だ。
「貴方は好きな物は無いの?」
好きな物……分からない……
僕が答えに困っていたら「無理に答えようとしなくていいですよ。私が色々な物に興味があるだけで……それに話したくない事もありますよね」と空を向きながらアニカ姫が微笑んだ。
僕はあれから『好きな物』探しをする事にした。
何だろう……好きな物……好きな……ソフィーか?
何日か考えていたら突然ソフィーの顔が脳裏に浮かび上がった。
でも、これを好きな物に例えていいのだろうか? もっと他にいいのがあるはずだけどな……う〜ん……
「何考えてるの?」
後ろからソフィーの声が聞こえた。
「好きな物って何だろうって……」
「お兄ちゃんが好きなのはあのサンコウの木じゃない? 昔、毎日のように通ってたでしょ」
確かにサンコウの木なら好きと言える。
「ありがと、ソフィー」
僕はそう言ってソフィーの頭を優しく撫でた。
「抱え込まないでね。約束だよ」
「はいはい」
そんな毎日が続くと思ったけど、大災厄が来たら僕がこの国を護らないといけないんだと思って少し心苦しくなった。