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「僕、ちょっと外出てくるね」
涼ちゃんは優しく微笑みながら、でも少し寂しそうに言った。
「うん、」
ドアの向こうで軽い足音が遠ざかる。
残された部室には、俺と若井だけ。
涙が止まらない。
声も出ない。
ただ、胸の奥がぐしゃぐしゃに痛む。
若井がそっと近づいてきて、腕を広げる。
「……元貴、泣くなよ。俺がいるだろ」
その声だけで、少しだけ安心する。
でも涙は溢れ続けて、
頬を伝う熱さに震えが止まらない。
「…若井……」
声にならない声で呼ぶ。
若井は黙って、俺を抱き寄せる。
胸の中に顔を埋める。
ギュッと腕で包まれる感触。
暖かくて、落ち着くけど、涙は止まらない。
「大丈夫だ……俺が、ちゃんとそばにいるから。
だから心配すんなよ。」
若井の胸に耳を押し当てると、
心臓の音がドクドクと伝わってくる。
そのリズムに、少しだけ泣く理由を
許された気がした。
「ごめん……俺、泣きすぎて……」
嗚咽混じりに言うと、
若井は笑うでもなく、ただ真剣な顔で言った。
「泣きたいときは泣け。俺は嫌じゃないから」
その言葉で、ようやく少しだけ涙が落ち着いた。
でも胸の奥はまだ熱くて、甘えたい気持ちが収まらない。
「…ごめん…もっと、抱きしめて……」
小さくつぶやくと
若井はぎゅっと抱きしめ返してくれる。
俺はそのまま、少しずつ
落ち着くまで、胸の中で涙を流し続けた。