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9月の満月コーンムーンの皆既月食・・・幻想的な天体ショーを大好きな翔太と眺める至福の時。
昨夜怒るように自室に籠ってしまった事を後悔した。 泣きながら翔太を抱く俺は見苦しく無様で、そんな俺でも受け入れてくれる翔太はやっぱり優しい男だ。その優しさに甘えて翔太に我慢を強いているのは紛れもなく俺の未熟さが原因だ。
翔太にとって明らかに〝特別〟な幼馴染の存在はそこにいるだけで俺を不安にさせる。ここのところの涼太の行動には疑念を持たざるを得ない。一体何を企んでいるのか・・・
俺たちが付き合いたての頃はあんなに歓迎してくれていたのに。俺達の良き理解者で心強い存在だと思っていたのに・・・
朝からのドタバタですっかり世紀の天体ショーを忘れていた。ソファーに寂しそうに転がるアカウミガメのぬいぐるみを見て、 一人で寂しかった翔太がリビングで一人、これを抱きしめていたのかと思うと胸が締め付けられた。
仲直りの情事を終え、ソファーに座り涼太の手作り弁当を広げて二人で食べた。一つ一つ丁寧に作られた愛情たっぷりの、その愛情の矛先は紛れもなく翔太なのだろう。どうして今まで気付かなかったのだろう。 しかし愛を向けられている張本人が自ら気付くことはなさそうだ。
翔太の好物で埋めれた1段目には可愛らしい一口サイズのオムライスが入っており、それを食べた翔太は口元にケチャップを付けたまま他の好物を次々とわんぱくに頬張り〝うまっ〟を連発している。翔太から引き剥がすことのできない涼太の存在は大きく恐怖でしかない。
翔太💙『まだ本調子じゃない?』
なかなか箸が進まない俺を見兼ねた翔太が顔を覗き込んできた。やばい…また泣きそうだ。俯いてそんな事ないよと言うと〝心が本調子じゃないね〟そう言ってお粥を掬って口に運んできた。 一人で食べられるからと突っぱねるとめげずに再びスプーンを掲げて見せ〝 食べさせたいの!はいお口開けて〟と言って無理やり口に放り込んだ。
亮平💚『可愛いのずるいよ』
食事を済ませお風呂に入るとソファーに寄り掛かり、翔太の淹れたコーヒーを飲みながらPCで新居探しをした。ぬいぐるみを抱き抱えた翔太は亀の甲羅に顎を乗せると両方の前足を摘んで遊んでいる。〝ココなんか良さそう〟広々としたお風呂が一際目立つその物件を見た途端に人差し指が伸びてきて食い入るように見ている。
翔太💙『新しいお家では毎日一緒にお風呂入ろうね』
にっこりと微笑む翔太は一通り自分の要望を伝えると、俺の膝の上に頭を乗せて横になった。下から俺の顔をじっと見つめている。髪の毛を梳くと気持ち良さそうに目を瞑った。時刻は既に深夜2時を回り翔太は瞼を開けているのがやっとで、時折コテッと俺の膝から落っこちそうになると〝んっ…〟と可愛らしく小さな声を上げて元の位置に戻り、再びウトウトしている〝ベットで寝なさい?〟と言うとまだ眠くないもんと顔を左右に振ってぬいぐるみをギュッと抱きしめた〝 亀さん苦しそうだよ?〟
翔太💙『ふふっ甲羅あるから平気さっ//あっ今日満月だね?凄く外明るいよ』
そう言えばお風呂上がりにアイス片手に珍しく翔太がベランダに出て〝やっぱ広い方がいいなぁ〟と言っていたのを思い出した。翔太はうつ伏せになって俺の膝に顔を埋めると、睡眠体制に入った。〝ねぇ布団行きなさいったら〟尚も眠くないと言って足をバタつかせている。
亮平💚『あっ今日月食だ!』
突然大きな声を発すとびっくりして飛び起きた翔太は俺の腰にしがみ付いている〝なに?脅かさないで〟と思い瞼を擦って見せた。
すっかり忘れてた・・・
外を覗くともう既に一部欠け部分食が始まっている。〝翔太来てご覧〟2人並んでベランダに座って翔太は俺の肩にちょこんと顔を乗せると幻想的な月の満ち欠けに見入っている。
翔太💙『食べられちゃったの?お月様?』
亮平💚『ふふっ地球の影で月が欠けて見えるんだよ』
〝真っ赤よ?不気味…〟皆既月食が最大を迎えるとブラッドムーンと呼ばれる赤銅色に染まった満月を見ることができた。太陽の光の一部の波長が月を赤く染める。
翔太💙『皆んなに見られて恥ずかしそう』
翔太のこういう柔和な考え方が大好きだ。俺みたいに頭でっかちじゃない。勉強で得た知識なんてつまらないものだなと思い知ると同時に、こういう素敵な見方ができる翔太を羨ましく思う。
翔太💙『次いつ観れる?』
亮平💚『来年の3月だったかな…』
〝意外とすぐだね〟と言った翔太はまた二人で見ようねと言って俺の腰に腕を回して抱きついた。地球の息吹を眼で感じることがきる天体ショーは自分自身の〝生〟を感じる瞬間でもある。
翔太💙『ベット行こう…したくなってきた』
亮平💚『何でよ?折角ロマンチックな気分なんだけど』
翔太💙『満月じゃん』
〝はい?〟
翔太曰く…満月じゃん、狼じゃん、ムラムラするじゃん。と言う事らしい・・・
翔太は〝性〟を感じとったらしい
俺のロマンチック返せよ・・・
万有引力に引き寄せられるように交わる二人。満月に託けて抱き合う馬鹿なカップルがきっと世界中にいっぱいいる…
トントントン…
幸せな朝トントン…?
かの有名な朝トントンで目覚める朝。薄目を開けて時計を確認すると既に朝の9時を回った所だ。うちに朝から包丁の音を鳴らす彼女は居ないはずだが…
リビングに行くなり見たくもない顔が飛び込んでくる。
蓮 🖤『おはよう阿部ちゃん//やだエロい〜服着ろよ💢』
パンイチ姿の俺を見るなり不機嫌になる蓮に〝ごめんごめん〟と思わず言ったものの、ココ俺の家だしお前何で居るんだよと言う前に、隣でエプロン姿の可愛い翔太が手を振って〝亮平おはよっ〟と出迎えればついつい顔が綻んだ。
亮平💚『ヤダァ可愛い///おいで』
胸にドスッと飛び込んできた翔太を抱き締めてお尻を撫でると蓮が咳払いをして睨んでいる。
亮平💚『ココ俺ん家!それに朝から何しに来たの?』
蓮 🖤『翔太の逆立ち姿が見たくて来ちゃった。ほら朝ごはん運ぶの手伝って』
何だよ逆立ちって?
テーブルに3人座るとコーヒーのいい匂いが漂いたっぷり塗られたバターが染み込んだトーストはカリカリに焼かれ、ホテルの朝食並みに綺麗な半月型のオムレツがプルプルとお皿の上で踊っている。〝で?翔太くんはどれを作ったのかな?〟翔太は頰を赤く染めて小さな声で〝コーヒー淹れた〟と言って俯いた。…あぁまた余計な事言っちゃった。
蓮 🖤『オムレツの焼き具合の監修をしてくれましたよ。最高の仕上がりでしょ?』
翔太は上目遣いで俺の事を見ると俺の反応を窺っている。〝オムレツはトロトロが好みなの知ってたの翔太?上手に焼けてるありがとう〟パッと明かりが灯るような笑顔を見せると嬉しそうに〝うん///〟と頷いた。
蓮 🖤『笑顔の独り占めはよくありませんね』
パンを口に運びながら面白くなさそうな顔をした蓮を見て食べる朝食は最高に美味しい…って何しに来たんだコイツ。翔太もすんなりこの状況を受け入れているし、今日一日イチャイチャできる予定だったのに。
蓮 🖤『イチャイチャしようと思ってたのにぃ〜とか思ってます?』
亮平💚『あら顔に出てた?ごめんなさい素直な性格なもので。嘘つけないの!』
蓮 🖤『僕らの新居探しがなかなか進まないから、やはりココは俺が動かないとと思ってね』
〝どなたの新居?〟お願いだから放っておいて欲しいんだけど・・・
翔太💙『ねぇこの格好どう?カッコいい?』
穴あきダメージジーンズに白いTシャツにサングラス姿でセンター分けイケメン。
亮平💚『カッコいい♡』
ってもう行く気満々の翔太と蓮はコーヒーを啜って俺待ち。〝アンタって子は全く・・・〟
ハイウエストのワイドパンツにトップスインコーデで現れた俺に〝やんカッコいい〟なんて言った翔太を他所に〝君達毎回そんな事やってんの?〟と呆れ顔の蓮と翔太の運転で車に乗り込むと既に内覧予約済みの物件へと向かった。
亮平💚『用意周到過ぎて怖いんだけど・・・』
助手席に座る蓮と運転中の翔太の間を縫って顔を出した俺に〝まあまあいいじゃないの実際物件見るとイメージも湧きやすいし〟となぜか翔太に宥められる。問題はソコじゃないんですけど。
何で蓮と一緒なんだよ。何で俺が後ろなんだよ。
翔太💙『帰りは亮平が助手席ね!コウタイ、コウタイだよ!』
お父さんの隣を取り合う子供じゃあるまいし…
蓮 🖤『そうだよ亮平!世の中そんなにうまく行く事ばかりじゃないんだぞ』
この二人の茶番に今日一日付き合わなければならないのかと考えただけで溜息が出る。
蓮は明朝の皆既月食を自身のバルコニーで見たらしく興奮した様子で俺に感想を聞いてきた。
亮平💚『天気も良くて綺麗に月食が観れたし何と言っても翔太と特別な時間を過ごせて最高だった』
俺は翔太と二人で見たことを盛大にマウンティングすると途端に蓮は機嫌が悪くなった〝あら可哀そうにお独り様だったの?言ってくれたら一緒に観てあげたのに!〟思ってもいない事を言うとそれならばと
蓮 🖤『次回3月だよね。グランピングがてら天体ショーなんてどうかな?どうしてもと言うなら亮平も連れて行ってあげても構わないけど!』
何で〝亮平〟だなんて呼び捨てなんだ・・・
目をキラキラ輝かせた翔太がグランピングという言葉に激しく反応している。アウトドア派でない翔太でもラグジュアリーなグランピングには興味があるようだ。
翔太💙『行く行く〜行きたい』
話はコレで終わりとばかりに〝 前向いて運転に集中して下さ〜い〟と言うと2人は仲良く〝ちぇっ〟と舌打ちをした。
お目当ての物件に着き3件の内覧を済ませると3人で昼食をとりマンションに戻る。3件とも悩ましい素敵な物件で間取り図を見ながら蓮と2人で話に夢中になっていると、翔太の姿が見当たらない。
亮平💚『あれ?翔太は?』
蓮 🖤『さぁ?さっきまでキッチンに立っていたけど』
キッチン?よく見ると洗っておいた涼太の重箱が無くなっている。まさかと思い電話をかけてみると案の定、涼太の家に返しに行っている途中だと言う。
翔太📲『2人でずっと話してるからつまんないんだもん。涼太ん家で遊んでくる』
小学生の子供じゃないんだ。一言言ってから行きなさいよ。止めることすら出来ないじゃないか。頭を抱えている俺を見兼ねて〝心配し過ぎたよ〟なんて蓮は所詮他人事だ。
亮平💚『あの2人どう思う?』
蓮 🖤『それは元彼として聞いてる?』
亮平💚『もちろん』
ポーカーフェイスの蓮の顔が少し曇った気がする。やはりコイツ何か知ってる・・・
蓮 🖤『それは…彼が動いたって事?』
お互い探り探りの会話にイライラする。表立ってはっきり言わないのは蓮が翔太を狙っているからに他ならない。〝分からなけど…不気味〟
蓮 🖤『それだけの理由?ならいつだって舘さんはミステリアスだろ?』
亮平💚『キスしたらしい…翔太と』
鋭い目付きで俺の言葉に反応した蓮は
蓮 🖤『翔太を1人で行かせたのは良くなかったかもね…』
翔太を追いかけようと慌てて席を立つとテーブルに付いた俺の手に蓮の手が添えられた・・・
亮平💚『離せよ』
添えられた手に力が強く加わると、身じろいだ俺の腕を掴んで蓮との距離が縮まる。
掴んだ手の熱量から、蓮の唯ならぬ強い意志を感じ取り、逃げようと腕を振り解こうにも強い力で阻止されれば、自分の身体から血の気が引いていくのを感じ取った。至近距離まで詰め寄った蓮は耳元で囁くと楽しそうに笑った。
蓮 🖤『亮平って〝リバ〟でしょ?』
亮平💚『だったら何だよ。お前に関係ないだろ』
蓮の息遣いが聞こえるほどに、吐息が首筋に掛かるほどに接近すると腰に回した腕が俺の動きを制限すると前に伸びて来た蓮の手が下腹部の中心から降りてきてなぞった。
亮平💚『やめろよっンンンッ』
蓮 🖤『まずは敵を知らないと…ほらこんなに可愛く鳴けるだなんて』
亮平💚『何でこんな事するんだよ!』
蓮 🖤『可愛い翔太の賢い彼氏さんなら分かるでしょ?愛乃屋鳥だよ?』
〝愛乃屋鳥〟
愛すあまりその者に関わるもの全てが愛おしい。その者の家屋に止まる鳥でさえも・・・
コメント
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2回目〜😆😆🎉 隣でエプロンが裸でエプロンに空目(変態) 舘様❤️の心変わりの原因が気になりますねぇ?記憶を無くさせた💚を怒ってるのかなぁ??🤔続きが楽しみで夜しか眠れそうにありません!!!!!
え!!!!!😳😳😳 面白い面白い!!!😍😍😍😍😍🖤💚タイトルの意味わからなかったけど、最高じゃん😆😆 舘様❤️こわいなぁ〜!もう、番外編どっちでも通用しちゃうね?🤣🤣この4人、もっ最高✨✨👍👍 ここにどう🩷🧡🤍が絡むのかも含めて面白すぎる🥹🥹これ、150話いくんじゃない?それか第2章か。