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「デート? 勘違いするなよ。お前はただの**『動く財布』兼『荷物持ち』**だ」怜也の一言で、安田穂乃花の瞳には至福の光が宿りました。
今日の舞台は再び秋葉原。しかし、以前のように徒歩ではありません。怜也が「人混みが鬱陶しい」とこぼしたため、穂乃花が裏から手を回し、中央通り沿いの大手ホビーショップを**「2時間完全貸し切り」**にさせたのです。
「道具」たちの血と汗の結晶
怜也の手に握られているブラックカード。それは心美の資産、由奈のバイト代、茜のモデル料、そして穂乃花が命を削って撮影した映画のギャラがすべて集約された、いわば**「女性たちの人生の濃縮液」**です。
「あー、この新作フィギュア。予約完売してたやつだろ? 5体まとめて買っとけ。観賞用、保存用、布教用、予備、そして……叩き壊してストレス解消する用だ」
「ええ、怜也。店内の在庫、全部買い占めてもいいのよ?」
穂乃花は、国民的女優としてのオーラを一切消し、怜也の3歩後ろを完璧な角度で追従します。怜也が指をさすたびに、彼女は自分のマネージャーに目配せし、次々と高級フィギュアや漫画の全巻セットをカートに放り込ませていきました。
搾取の美学:デートという名の「棚卸し」
「……おい、神奈。何その顔。重いのか?」
後ろで、100冊近い漫画の合本版が入った袋を両手に下げ、顔を真っ赤にしている神奈を、怜也は冷たく見下しました。
「い、いえ……! 重くなんて……ありません! 怜也くんの……娯楽を支えられて、幸せ……ですっ!」
「なら、もっと笑顔で作れよ。僕の買い物の景観を損なうな」
怜也は、自分のために彼女たちが死ぬ気で稼いできた金を、湯水のように「二次元」へと変換していきます。
彼にとって、1枚100万円の激レアカードを買うことは、彼女たちの100時間の労働を「紙切れ」に変える背徳の儀式。
「(……ははっ、最高だな。こいつらが必死に汗水垂らして、プライドを捨てて稼いできた金が、僕の手の中で可愛いアニメキャラのプラスチックに変わる。……これ以上に効率的な人生のサボり方があるか?)」
究極の「ヒモ」の休日
買い物を終えた怜也は、店内に用意させた最高級のソファにどっかと座り込みました。
穂乃花はすぐさま跪き、怜也の靴の汚れをシルクのハンカチで拭き始めます。
「怜也、今日の戦利品は満足いただけたかしら?」
「あー、まぁまぁかな。でも、まだ足りない。未久を呼べ。帰りの車内で、買ったばかりの漫画のセリフを全部キャラ声で音読させろ。僕は目をつぶってそれを聴きながら寝る」
「了解したわ。未久にはもう、スタジオから直行するように手配済みよ」
店を出ると、貸し切りが終わるのを待っていたオタクたちが、羨望と憎悪の入り混じった目でこちらを見ていました。怜也は穂乃花の肩に無造作に腕を回し(彼女を愛しているからではなく、周囲に見せつけて優越感に浸るため)、わざとらしく大きなあくびをしました。
「……見ろよ。あいつら、僕が今使った金が、自分の年収の数倍だってことも知らないんだ。……穂乃花、あのゴミたちの前で、僕に跪いて愛を誓ってみせろよ。……もっと、絶望させてやりたいんだ」
「喜んで、私の王(キング)。……世界中の誰よりも、私はあなたの『便利な道具』であることを誇りに思うわ」
国民的女優が、秋葉原のど真ん中で、一人のクズ男の足元に跪く。
その光景は、バレンタインの悪夢を上書きするほどに、残酷で、そして圧倒的な「格差」を世界に見せつけました。