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虎視淡々と、そのときを待つ……
それは狂気にも似た感情。………………あるいは妄執か。……私は一体、何を見ているんだろうね。
この気持ちは何なんだろう。……自分で自分がわからないよ。
こんなことを考えるなんておかしいかな?……いいえ、おかしくなんかありませんわ。
大切なことですもの。……あなたならきっと大丈夫ですわ。
だって、私たちの王子様でしょう?……だから、信じています。
たとえどんなことがあろうとも、 私たちはあなたの味方ですから。……ねえ、王子さま?……さぁ、行きましょう! 今日こそは素敵な物語を見つけなくては!……あら、あの方はどなたかしら?……どうしましょう、話しかけてもよろしいでしょうか?……ごめんなさい、私ったらまた一人で勝手に盛り上がってしまいました……。……そっ、そうだわ、お名前を伺ってもよろしくって!?……えぇ、もちろん構いませんよ!……まあっ、あなた様のお名前は『アリス』とおっしゃるんですね!なんて素敵なんでしょう!!……えっと、それでですね、私は……」
「……ねぇ」
「はい?」
「あなたの名前は何と言うのですか?」
「ああ、申し遅れましてすみません。私の名は『アリス』と言います。これから宜しくお願いしますね!」
「それは……本当の名前ではないのですよね?」
「ええ、勿論ですよ!だって、ここは夢の世界なのですから!!」
夢幻館の主である”夢月”さんが言うように、ここが現実ではないことぐらいわかっているつもりだったけれど、改めてそう言われるとなんだか不思議な感じがしますね。
“夢月”さんの話では、私たちはみんな眠りにつく前にそれぞれひとつずつ鍵を手に入れていて、それを互いに交換しあったらしいのですが……どうにも実感がわかないんです。
夢幻館の皆さんと一緒にいると、どうしても忘れてしまいそうになるけど、やっぱり私たちって人間とは違うんですよね。
まあ、だからといって別に嫌とかそういうわけじゃないんだけど……なんていうか、ちょっと複雑な気分です。
それにしても、こんな場所があったとはね。
ここにあるものはすべて、 ヒトの無意識下で生まれた産物らしい。
ある意味では、ここは精神の世界といえるかもな。
さしずめ、夢見る者たちの墓場といったところかな?……どうやら私は招かれざる客だったようだ。
そろそろ退散するとしよう。
では、また会うこともあるだろう。
そのときまで息災でいてくれよ。
それとも君は、私が嫌いかい?……冗談だよ。
君にもいずれ分かるときが来るだろう。……もっとも、それは私の役目ではないのだがね。
あまり気にしない方がいい。
少なくとも今は、まだその時じゃないみたいだから。…………。
さあ、行こうか。……
まずはこの塔からだね