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#前世
shima7a
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第108話 「最後の夏、開幕」
2027年7月。
梅雨が明けた。
照りつける日差し。
青い空。
福岡県大会が始まる。
福間監督にとって。
三十年以上続けてきた監督人生、最後の夏。
そして。
啓介部長にとっても。
福間監督と戦う最後の夏だった。
開会式。
柳城高校の選手たちは堂々と入場行進を行う。
スタンドには多くの卒業生の姿があった。
塁。
史陽。
舞。
黒木。
それぞれの場所で歩み始めたOBたちが、母校の応援に駆け付けていた。
舞が笑う。
「先生らしい最後の夏になりそうだね。」
塁も頷く。
「今年のチームは強い。」
史陽が続ける。
「でも、甲子園は強いだけじゃ勝てない。」
その言葉に全員が静かに頷いた。
一回戦。
柳城高校は危なげなく勝利。
二回戦。
投打が噛み合い快勝。
三回戦。
相手に先制を許す。
しかし。
終盤に逆転。
4対2。
準々決勝進出。
試合後。
部員たちが喜ぶ中。
福間監督はいつもどおりだった。
「明日も七時集合です。」
部員たちから笑いが起きる。
「監督。」
主将が笑いながら言う。
「たまには褒めてください。」
福間監督は少し考えたあと。
小さく笑った。
「ナイスゲームでした。」
その一言だけだった。
部員たちは顔を見合わせる。
そして。
大きな笑い声が響いた。
その様子を見ていた啓介も笑う。
「先生。」
「はい。」
「初めて聞きました。」
福間監督は少し照れくさそうに帽子を直した。
「最後の夏ですから。」
夕方。
学校へ戻ると。
誰もいないグラウンドを福間監督がゆっくり歩いていた。
啓介が追いかける。
「先生。」
福間監督は立ち止まる。
「この景色も。」
「あと少しですね。」
啓介は言葉が出なかった。
福間監督はグラウンドを見渡す。
「ここで、たくさんの選手と出会いました。」
「勝った夏も。」
「負けた夏も。」
「全部、大切な思い出です。」
しばらく沈黙が続く。
やがて。
福間監督は静かに歩き出した。
「さあ。」
「準々決勝の準備をしましょう。」
「まだ終わっていません。」
啓介は大きく頷いた。
「はい。」
柳城高校は準々決勝へ。
福間監督、最後の夏は。
まだ終わらない。
第108話 終
コメント
1件
うわああ第108話、めっちゃエモかったです😭💕 福間監督の「最後の夏ですから」の一言が刺さりすぎて……。OBたちがスタンドに集まってるシーン、舞ちゃんとか塁くんたちの姿にもぐっときました。「ナイスゲームでした」って照れくさそうに言う監督、初めて見たって啓介くんのリアクションも泣ける。まだ終わらない夏、準々決勝も応援したくなりました!天海カオルさん、この温かい空気感が最高です✨