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善は急げと言うし、俺は早速市場にやってきた。相変わらず賑やかで、笑いが響き渡っていた。花屋は街の外れにあって、笑い声は穏やかな風に変わり、花に水をやるサラサラとした音が心地よい。
花屋の中をチラッと見る。
…女性しかいない。
覚悟はしていた。でも1人ぐらいは男性いるだろと言う何の根拠もない予想を立ててやって来てしまったのも事実。
怖い。エドマンドが居ないのだ、俺の中の心の主柱がなくなってしまったような気分だ。
俺はやっぱり、変わっていないのだろうか。
いや駄目だ、花を買うんだ。俺。エドマンドを驚かせるんだろ。
「お悩みですか?」
店の前で立ち止まってしまっていたからだろう、店員さんが話しかけてくれた。
優しげな微笑み、茶色いくるくるとして癖毛。
きっと、無害以外の何者でもない笑顔だ。なのに体が強張る。何を言えばいいのか、出てこない。
「赤いアネモネ、ずっと見ていらっしゃいますが、誰かに贈られるのですか?」
喉が震える。
違います、 ブルースターをください。そう言わなければいけないのに。 口が全く動かない。 もう、どうすればいいかわからない。
無意識のうちに、
「……はい」
そう言ってしまった。俺が贈りたかった青は気づけば赤に変わっていた。
「素敵ですね、よろしければアネモネを生かした花束にしましょうか。」
はい、と答えるしかない。もう限界だ。1秒もここには居たくない。代金を渡して、花束を受け取って。逃げるように帰ってきてしまった。