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翔くんとの文化祭を楽しみたいのに、なんだかずっと気分が晴れない。
「愛斗先輩」
「なに?」
「俺、なんかしちゃいましたかね?」
「え?なんで?」
「なんか愛斗先輩、いつもと違うなって」
どうやら、気分が晴れないのが態度に出てしまってたみたいだ。
何やってんだろう。俺。翔くんを安心させないと。
「…気のせいじゃない?」
「そうですか?」
「うん」
俺はそう言って無理やり笑顔を作る。
翔くんはそんな俺を見て安心したのか、笑顔に戻る。
周りからは翔くんを褒める声が聞こえてくる。翔くんは嬉しくなったのか度々、ふふっと笑う。
周りの声と翔くんの笑い声を聞く度、心の中のモヤモヤが広がっていく。
そんな時、どこからか男子生徒の声が聞こえてくる。
「あっ、あの子翔くんだよね。男だけど正直結構タイプだわ〜」
胸がぎゅっと苦しくなる。
分かっていた。さっきからずっと心がモヤモヤしているのは、気分が晴れないのは俺が嫉妬してるからだって分かっていた。俺はもう、限界だった。
これ以上、翔くんを他の人に見て欲しくない。
そう思ったら、無意識に翔くんの腕を掴んで歩き出していた。翔くんが何か言っているみたいだけど、もう何も聞こえなかった。
ただひたすら、廊下を歩く。とにかく、人がいない所に連れていきたくて。翔くんがまた何か言っているけど、俺は無視した。そしてそのまま、人気のない廊下に出る。
「ねぇ先輩。俺がなんかしたなら謝りますから」
その言葉だけは何故かはっきり聞こえた。
違う。翔くんは何も謝ることなんてしてない。
だって、俺が勝手に嫉妬してるだけだから。
「…別に翔くんは何もしてないよ」
俺は、勝手に責任を感じてしまっている翔くんに申し訳なくて、そう言う。
「じゃあなんでそんな目してるんですか。俺がナンパされた時もそんな目してましたよね」
その言葉を聞いて、俺は立ち止まる。
ナンパされた時。そういえばあの時も俺はイライラしていた。俺が勝手に嫉妬したから。
「先輩…?」
「…ごめん。ちょっとムカついただけ」
「ムカついたって何に?」
「翔くんが取られそうだったから…」
無意識にそう口に出る。
「今、なんて…?」
翔くんにそう言われ、俺は翔くんの手を離した。
何してんだろう。俺。翔くんの事こんな所に連れてきて、変なこと言って。
「…なんでもない。別に変な意味じゃないから気にしないで」
「…無理ですよ。気になります」
そんなこと言われたら、俺はわがままを言ってしまう。
「だったら…」
俺は翔くんが付けているウィッグに触れる。
「これ、外してよ」
これはただの、俺のわがまま。
「…なんでですか?」
「それ被ってると、みんな可愛いって言うでしょ?」
「それはまぁ、そうですね」
「そのせいで、落ち着いて文化祭楽しめないからさ」
こんなの、自分勝手だってことくらい、分かっていた。
それなのに。
「あぁ…そうですか。それはすみません」
そう言ってウィッグを外す翔くんを見て、俺は嬉しくなってしまった。
ウィッグを外した翔くんの地毛は寝癖みたいになっていて可愛かった。
「あっ…あの、ちょっと待ってくださいね」
翔くんはそう言った後、髪の毛を色々いじっていた。
なんか焦ってる。可愛いな。
「あの、ちょっとトイレで…」
トイレ?
そんなのダメに決まってる。こんな素の可愛い翔くんを他の人に見せれるわけない。そうだ。俺が直してあげよう。
俺は翔くんの髪にそっと触れる。
「じっとしててね」
俺は翔くんの髪をいじり、いつもの翔くんの髪型に戻す。
「はい。出来た」
「すみません。ありがとうございます」
「やっぱり、俺はこっちの方が好きだな」
「え?」
「これでもう、他の人には可愛いって言われないでしょ?」
「まぁ、多分そうですね」
「翔くんの可愛いは俺だけの物だもんね」
俺は翔くんの髪をそっと撫でる。
これでもう翔くんに可愛いって言うのは俺だけになった。
俺だけが分かる、ありのままの可愛い翔くん。
「愛斗先輩…?」
翔くんに呼ばれ、俺はハッとして慌てて翔くんの髪から手を離す。
ダメだ。このままここに居たら自分を抑えられなくなる。みんなの所に戻らないと。
「…戻ろっか」
俺はそう言って元来た廊下を引き返した。
人が多い所に戻ったけど、さっきみたいに翔くんを可愛いという人は居ないみたいだ。
さっきまで心がモヤモヤしていたけど、今はもう翔くんと思いっきり文化祭を楽しめる。
その後俺は、晴れた気持ちで文化祭を楽しんだ。
それから数日後。俺は翔くんと遊園地に来ていた。入口近くにあったカチューシャの店で翔くんが言う。
「愛斗先輩!こっち来てください!」
「なに?」
「ほらこれ、犬のカチューシャです。俺に似合うと思いません?」
翔くんはそう言ってカチューシャを付け、俺の方を見る。
「そうだね。凄い似合うよ。可愛いし」
「やっぱり可愛いですよね〜。わんっ!」
翔くんはそう言って手で犬のポーズをする。
可愛いな。いや、ちょっと可愛すぎるかも。絶対世界一可愛い犬でしょ。この子。
俺は翔くんの顔を覗き込んだ。
「ほんと、可愛いね」
俺はそう言って翔くんの頭を撫でる。
翔くんはそんな俺をしばらく見つめた後、言う。
「…愛斗先輩は…これ!」
そう言う翔くんの手には黒い猫耳のカチューシャ。
猫のカチューシャ?
俺はそのカチューシャを受け取った。
「猫?」
「はい!ほら、つけてみてください」
「俺似合うかな…」
翔くんは犬のカチューシャが似合っていたけど、俺はどうだろう。
俺は不安に思いながら猫耳のカチューシャを付ける。
「どう?」
「めっちゃ似合います!かっこいいです!」
目をきらきらさせてそう言う翔くんを見て、俺は嬉しくなる。
「かっこいい?」
「はい!高級な猫ちゃんです!」
「高級なネコちゃん…」
「1回にゃんって言ってみてくださいよ」
「えっ?」
無理でしょ。確かに翔くんの「わん」は可愛かったけど、俺が「にゃん」って言っても絶対に可愛くないよ。
「お願いします!1回だけですから、ね?」
翔くんはそう言って目をキラキラさせる。
翔くんにそんな目で見られたら、断れないよ。
「…分かったよ」
俺は覚悟を決めて、手をグーにして頬の下で前に倒しながら言う。
「にゃ〜?」
恥ずかしがりながらもそう言うと、翔くんは目をぱちぱちさせて俺を見つめる。
「…愛斗先輩。可愛すぎです。俺より可愛いです絶対」
「それはないでしょ。翔くんが1番可愛いよ?」
世界一可愛いのは翔くん。
そう思うと、自然と笑みがこぼれていた。
ひでお
コメント
2件
わあああ!!!今回も最っ高にいい作品でした!!! まじでなんなんですか!あの愛斗くん!!!!!あの時みた作品のときも思ったけど可愛いしかっこいいって何事??マジでうちに分けてほしい、その可愛さとかっこよさ。主さんマジでありがとうございます✨️(←またまたどうした)やっぱ主さんが作る作品マジで好きです!!またまた言いますが今回も引き続き頑張ってください!!!!!!(長文ですみません💦)