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部屋に案内されて――ふたりきりになった瞬間。
仁人はソファに腰を下ろすと、すぐに眼鏡を外し、小さくため息をついた。
「……なんか、疲れた」
『そりゃそうだよ。慣れない場所で、知らない王子と一日一緒にいたんだもん』
「……別に“知らない”ってほどじゃ、もうないけど……」
『ふはっ、そっか。じゃあ、ちょっとは俺のこと知れた?』
仁人は目を伏せて、こくんと小さく頷いた。
勇斗はゆっくりと隣に腰を下ろす。
少しソファが沈んで、仁人の肩が勇斗の腕に触れた。
「っ……ちょ、近っ……」
『やだ?』
「……やじゃないけど……びっくりしただけ……」
勇斗は、仁人の横顔をじっと見つめた。
ふわふわした茶髪が額にかかっていて、さっきよりほんの少しだけ、リラックスしてる表情。
『……今日さ』
「ん?」
『正直、ここまで楽しいって思ってなかった』
仁人はハッとして、思わず勇斗を見返す。
『仁人、もっと堅い人かと思ってた。でも……想像よりずっと、可愛くて、素直で、優しい』
「な、……そういうこと急に言うのは…」
『照れてる顔も、すっげぇ可愛いし』
「……かわいいって……」
仁人がソファの肘掛けのほうへ身をずらそうとしたとき、
勇斗がそっとその手をとった。
『ねえ、仁人』
「……はい」
『君のこと、もう少し知りたい。今日一日じゃ足りない』
「……」
『だめかな』
しばらくの沈黙のあと、仁人はゆっくりと視線を上げた。
頬を染めながら、小さく言う。
「……勝手に知ればいい、よ……」
『それって、許してくれるってことでいい?』
「……ん、」