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宮舘さんの狂気が「支配」から「神聖な冒涜」へと昇華される、婚礼直前の緊迫したシーンですね。 男性である渡辺さんにベールを強いることで、彼のアイデンティティを完全に剥奪し、「宮舘涼太の伴侶(供物)」へと作り変える——。その残酷な美学と、渡辺さんの魂を凍らせる宮舘さんの「脅し」を描きます。
断崖の上の白亜の教会。外は荒れ狂う潮騒の音が響いていますが、堂内は静謐なまでに白く、死のような静寂が漂っていました。 白いタキシードに身を包んだ渡辺さんの前に、宮舘さんは、雪のように白く、繊細な刺繍が施された長い純白のレースのベールを捧げました。
1. 震える拒絶
渡辺さんはその美しい布地を見た瞬間、本能的な恐怖で肩を震わせました。
「……涼太、これは……。だって、俺は男だよ……? ベールなんて、おかしいよ……」
渡辺さんは、せめてもの最後の抵抗として、小さく首を振りました。それは、宮舘さんの所有物になりながらも、かろうじて残っていた「渡辺翔太」という一人の男としての、最後の矜持(きょうじ)でした。
「これをつけたら、俺、本当に……。涼太、お願い、これだけは……」
2. 底なしの深淵、低く響く「毒」
渡辺さんの言葉を遮るように、宮舘さんは無言で一歩踏み出しました。 宮舘さんは渡辺さんの顎を、壊れ物を扱うような手つきで、しかし逃げ場を許さない力強さでクイと持ち上げました。
「おかしい……? 何がだい、翔太」
宮舘さんの声は、驚くほど低く、そして温度が一切ありませんでした。その瞳は、かつて舞台で見せた情熱的な輝きではなく、獲物をじっくりと追い詰める捕食者の、底知れない暗闇。
「お前に、まだ『自分』なんてものが残っているのかい? 男とか、女とか、そんな下俗な境界で自分を守ろうとするなんて……。今の君に、そんな価値があると思っているのか?」
宮舘さんの顔が、渡辺さんの耳元に近づきます。吐息が肌をなでるたび、渡辺さんの理性が削られていく。
「忘れないで、翔太。お前はもう、自分の意志で呼吸をすることも、自分の足で立つこともできない。俺が愛してやらなければ、お前はただの、中身のない『抜け殻』だ」
渡辺さんの瞳が、恐怖で大きく見開かれます。宮舘さんの言葉は、家族やファンの存在よりも深く、渡辺さんの「自己存在」そのものを根底から否定する猛毒でした。
「このベールを拒むなら、いいよ。……今すぐここを出て、誰もいない暗闇で、一人で死んでいくといい。俺のいない世界で、お前が『渡辺翔太』として生きられる場所なんて、この地球(ほし)のどこにもないんだから」
3. 婚礼の完成
「……っ、あ……」
渡辺さんは、あまりの恐怖と絶望に、呼吸の仕方を忘れたように口を小さく開けました。宮舘さんのいない世界。それは死よりも恐ろしい、絶対的な虚無。 宮舘さんは、渡辺さんの絶望を確認すると、満足げに微笑み、慈愛に満ちた手つきでその頭にベールを被せました。
「いい子だ、翔太。……ほら、これでやっと、お前は完成した」
長いレースの裾が、白い床に音もなく広がります。ベール越しに霞んで見える渡辺さんの顔は、もはや一人の男のものではなく、意志を剥奪された、ただ美しく、ただ悲しい「宮舘涼太だけの神嫁」のものでした。
「……うん。涼太……、俺を、見捨てないで……。俺、なんでもするから……」
渡辺さんは、ベールの下で力なく微笑みました。 こうして、二人は重い扉を開け、祭壇へと歩みを進めます。それは、二人だけの楽園への門出であり、渡辺翔太という人間の、最後のお葬式でもありました。
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