テラーノベル
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白亜の教会の祭壇前。ステンドグラスから差し込む月光が、ベールを纏った渡辺さんをこの世のものとは思えないほど美しく、そして脆く照らし出していました。
宮舘さんが渡辺さんの手を取り、永遠の誓いを立てる直前の数分間。宮舘さんの脳裏を駆け巡ったのは、慈愛などという言葉では生ぬるい、狂信的なまでの「独占欲の完成」への独白でした。
祭壇に立つ宮舘さんは、ベールの薄布越しに、焦点の定まらない瞳で自分を見上げる渡辺さんを見つめていました。その数分間の静寂の中で、宮舘さんは心の中で、目の前の「壊れた宝物」に語りかけていました。
(……ああ、やっとだ。やっと、俺だけのものになったんだね、翔太)
宮舘さんの指先が、渡辺さんの震える指を強く、逃げ場を封じるように絡めとります。
(お前のその、俺がいなければ呼吸すら忘れてしまいそうな怯えた瞳。自分を男だと主張していた、あの生意気で、眩しくて、疎ましかった『自我』……。それを、俺の手で一枚ずつ丁寧に剥ぎ取って、今のこの、空っぽで美しい器に変えられた。その事実に、俺の魂は震えるほどの歓喜に満たされているよ)
宮舘さんにとって、この儀式は神に愛を誓うものではありませんでした。それは、自分という神が、渡辺翔太という生け贄を完全に受理したことを宣言する、一方的な「領有」の儀式。
(お前はもう、自分の足で歩く必要はない。俺の腕の中で、俺が与える空気だけを吸って、俺が許した言葉だけを紡げばいい。世間が、家族が、あいつらが……お前をどう呼ぼうと、今の君を定義できるのは、世界でただ一人、この俺だけなんだ)
宮舘さんは、渡辺さんの震えを、心地よい音楽を聴くかのような恍惚とした表情で受け止めます。
(お前を壊したのは俺だ。けれど、壊れたお前の破片を一つもこぼさずに拾い上げ、愛してやれるのも、俺だけなんだよ。翔太、絶望しているかい? その絶望こそが、俺とお前の永遠を結ぶ最強の楔(くさび)だ)
数分間の沈黙が明け、宮舘さんはゆっくりと口を開きました。その声には、深い慈しみと、それ以上の冷徹な決意が宿っていました。
「……さあ、翔太。誓おう。死が二人を分かつのではない。死をもって、俺たちが一つになることを」
宮舘さんがベールを捲り上げたとき、その瞳には、自分の人生すべてを賭けて手に入れた「最高の所有物」を愛でる、狂おしいほどの情熱が、静かに、しかし激しく燃え上がっていました。
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