「ねえ、元貴。」
「ん?」
「いや、なんでもない!」
おかしい…。
今日は絶対怒られると思ったのに、いつもの元貴すぎて逆に怖い。
まず、何があったか説明すると、今日の撮影中に、まあ、色々あって、涼ちゃんとうっかり恋人繋ぎしてしまったり、頭撫でたりしてしまったと言う事があった。
前に涼ちゃんとハイタッチした時に、元貴に怒られた事があったから、今回のはヤバいと思って、ずっとソワソワしてたのに、家に帰ってからも何もなく時が過ぎている。
何もないならそれでいいんだろうけど、怒られると思ってたのに何もないっての言うのも気持ち悪い。
「…元貴、なんか言いたい事あったりする?」
「ん?なんもないよ。」
「そ、そっか。」
「なんか、若井さっきから変だよ。なんかあった?」
元貴の様子を見る限り、今日の事は何とも思ってないようで、逆に心配される始末。
いや、何もないならそれでいいんだよ?
でもなぜか今度はモヤモヤし始めている。
だって、普段嫉妬する恋人が嫉妬しなくなったってつまりはそう言う事でしょ?
「…元貴、おれのこと嫌いになった?」
「は?何言ってんの?ほんと変だよ!」
…逆に怒らせてしまった。
元貴は、“言いたい事があるなら言いなよ”という目線を向けてくる。
「いや…だって、今日涼ちゃんとの事で怒られるかと思ってたから…。」
元貴の圧に負けて渋々話し始めると、元貴は、はぁーとため息をついた。
「…怒ってるよ。」
「え?だってさっきなんもないよって。」
「だって、この間言ったら酷い目にあったから、 嫉妬しても言わない事にしたの!」
元貴はそう言うと、ぷいっと顔を背けた。
心なしか顔が赤い気がする。
「なんか…ごめん。」
謝りながらも、元貴が嫉妬してくれてた事実にどうしてもニヤけてしまう。
「なにニヤけてんの。」
「元貴が嫉妬してくれてたのが嬉しいくて。」
「バカじゃないの?」
元貴は本日二度目のため息をつく。
「ごめんってぇ。どうしたら許してくれる?」
「…手、繋いで。…あと、頭撫でて。」
「…煽ってる?」
「ばか!きらい!」
いや、今のは元貴が悪くない?!
急にデレてくるのは反則だろ!
でも、そんな事言ったら口聞いて貰えなくなりそうだから心に留めておこう。
「ごめんごめん。こっちきて?」
そう言って手を広げると、元貴はブーブー言いながらも、オレの足を跨ぐように座った。
「手、貸して?」
「ん。」
元貴の白くて綺麗な指に自分の指を絡めるようにして手を握る。
ギュッとすると、元貴もギュッと握り返してくれた。
些細な事だけど、可愛くてニヤニヤしそうになるのを我慢しつつ、手を繋ぎながら髪の毛も優しく撫でてみる。
しばらくすると、元貴はおれの顔をチラッと見て、胸にもたれかかってきた。
「許してくれる?」
「ん、いいよ。」
「ちなみにこの後は…」
「えっちな事したらキライになります。」
「ごめんなさい!」
うわー!
生殺しだー!!!
-fin-
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