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「何をするんですか?!暴力はよくありませんよ。」
なんだコイツ。ぬけぬけと!さっきのは俺の初めてだったんだぞ!
「あんなことをされたら誰だってビンタしたくなるだろ!!!!!」
「確かにそうですね。紳士として朝イチにキスをするのはいい行為とは言えませんね。すみません。」
「お……おう。」
白馬が素直に謝るなんて……珍しいこともあるんだな。素直に謝られたことによって俺の怒りは収まっていった。
「さて、もうそろそろ朝食も整う頃でしょう。さぁ快斗。1階に行きましょう。」
「おい、頭でも打ったか?」
「……?記憶にありませんが。」
「お前いつも俺の事下の名前で呼ばないだろ?」
「……?君こそどうしたんだい?いつもそうじゃないか。」
……?どういうことだ?とりあえず、合わせておいた方がいいな。
「……そうだったな。わりぃ。まだ寝ぼけてるみたいだわ。」
「そうでしたか。」
白馬の家……デカイな……。これはもう家という範疇をこえて大邸宅じゃないか……?
階段は緩くカーブを巻いており、上には宝石のように光るシャンデリアがぶらさがっている。毛の長いカーペットが隙間なくのびており、壁には額縁に閉ざされた芸術作品がいくつか並んでいる。
……俺……この雰囲気に馴染めていないんじゃないか?
階段を一段一段降りるたびにそう思った。だが目の前を歩く白馬は、背格好だけでもこの空間に馴染んでいるのだから悔しくはなるものだ。
重々しい扉が使用人の手によってゆっくり開かれていく。長テーブルの上には並べられた空腹を誘う匂いを漂わせた食品達が佇んでいた。
正直今すぐにでもかじりつきたい……。
が、ここは白馬の家だ。当然、警視総監の父親がいるわけで……。
「おはよう。快斗くん。よく眠れたかね?」
「……おはようございます。よく眠れました。」
…………気まず過ぎるだろ!!!!!
予告現場で見たことはあるといえ、こちらが一方的に知っているだけだ。話したことなどないのにいかにも以前から知り合いでしたよ風を醸し出されたら、なんかこう……気まずいだろ!
そんなことをぐるぐる考えていたら白馬が恭しく警視総監の右隣の席を引いて「快斗。」と呼んで座るように言うのだから、わざわざ警視総監の隣の席を引きやがった白馬を睨めつけた。
「快斗……?」
どうしてそんな顔をしているんだい?じゃねぇよ!おめぇのせいだよバーロ!
だが、食事は遠慮しますといえる雰囲気でもなかったので、大人しく座った。
「今日はポトフですか。美味しそうですね。」
美味しそうですね……じゃねえよ!なんで対面に座るんだよ!隣に知ってる人いねぇと緊張するだろ!隣に座っとけよ!
「そうだね。快斗くん。お口に合ったかな?」
「あ〜ハイ。」
正直、味がしない……
何とか朝食の場は乗り切ってさて学校へ行きますかという時に白馬んところのばあやが送迎をするということで、また頭を抱えることになった。
鉄格子でできたアーチ状の扉を開き、ばあやが車の扉を開け待機してくれている。だが、俺はそれどころでは無い。昨日は学校の帰りに魔法陣に引きずり込まれ、気づいたら白馬の大邸宅の中で朝を迎えていた。何やら普段と様子がおかしい白馬と、何故か親しげな警視総監。それは間違いなく魔法陣の影響だとわかるのだが……いつもの白馬たちに戻れるのだろうか?
「快斗?そろそろ出発しますよ。乗ってください。」
いつまでも車に乗らない俺を不審に思った顔で車に乗るように白馬は促す。これ以上ばあやを待たせることは出来ないので、おぅ……と言いながら車に乗った。
忙しなく移りゆく景色を堪能する気も起きず、ただ、大人しく学校に着くのを待っていた。その時だった。
「快斗。」
ふと名前を呼ばれた。
「あ?なんだ?」
顔を左に座る白馬に向けると至近距離に白馬の顔があった。そのまま耳元で白馬が喋り出す。
「……キスしてもいいかい?」
「は……はぁーーーーーぁぁぁぁああぁあ!!!」
なんだこの不届き者!2人きりならまだしもばあやがいる目の前で!紳士の皮を被った変態じゃないか!
「快斗。」
一瞬白馬は咎めるような視線を向け、すぐに返事を求める視線に切り替えた。
「ダメに決まってんだろ。」
早く学校に着いてくれ!!!!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ!快斗!今日も白馬くんと一緒に来たの?ほんとに仲良しだね!」
青子……。お前だけは普通なんだな……。
えもいわれぬ安堵を胸に抱きながら返事をする。
「はぁ?誰がこんなやつと仲良しだって?」
「……?どうしたの快斗。いつも満更でもなさそうな顔をしてたのに。急に白馬くんをこんなやつ呼ばわりしちゃって。」
……青子も正気じゃなかったか。
白馬の表情が気になって隣を見てみた。後悔先に立たず……。
あいつは普段の自信過剰はどこに行ったのやらどこか傷ついたような顔をしていた。
「……じょ、冗談だって!」
少し心が傷んでしまったので、何とかはぐらかす。ダメだ……。この調子じゃ俺のプライドが終わる……。
「ほ、ほら!早く行こうぜ!遅刻するぞ!」
「あ!待ってよ快斗!白馬くんも早く行こう!」
「……はい。」
「あら。3人とも揃いで。おはよう。」
「おはようございます。紅子さん。」
「おはよう!紅子ちゃん!」
「……はよ。」
「黒羽くん。いつもの元気はどこに行ったのかしら。」
「ハハハ。」
今までみんな正気じゃなかったんだ。紅子だって正気かどうかわからない。
「ごめんなさい。少し彼を借りるわね。」
「え……?うん。」
「わかりました。」
紅子は俺の腕を掴んで後ろのドアから俺を引きずるようにして、教室から出ていった。
「あなた……。どこの黒羽快斗かしら。」
「は?どういうことだよ。」
紅子の話を短くまとめると。どうやら俺はパラレルワールドに来ちまったらしい。
「こちらの黒羽快斗は元々あなたがいた場所にいるようだけれど。どうしてこうなったか。心当たりはあるかしら?」
「……あるぜ。」
「詳細を話しなさい。」
「昨日の放課後。学校から家に帰っていたら魔法陣に引きずり込まれたんだ。で、気づいたらここにいたって訳。」
「なるほどね。元に戻る方法はこちらで調べてみましょう。あなたはそれに協力をしなさい。」
「……おう。」
「なんの話をしていたんです?」
「こっちの話だよ。」
「……そうですか。」
ここまで来てもあまり確信が持てなかった情報。受け取りようによっては白馬は傷つくかもしれないが、状況判断のため、少しほど我慢してもらいたい。
「なぁ、俺たちって、恋人なのか?」
「……急にどうしたんです?当たり前ではありませんか。」
……当たり前なのか……。
「いや、実感したかっただけだから。他意は無い。」
「愛情表現が足りませんでしたか?では、放課後うちにいらしてください。」
こういうことを言うということは、俺の住居丸ごと白馬邸ではないということか……。安心した……。じゃない!!!!
「え、え〜っと……」
「……無理強いはしませんよ。」
また白馬がしゅんとなった。し、仕方ない!
「い、行かないとは言ってないだろ!」
「!!!そうですか!」
見るからに白馬の顔が明るくなり、周りに花が咲いた。
「お……おう。」
何をされるかはわからないが……とりあえず。覚悟は決めておこう……。