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#怪異
41
#ハッピーエンド
当麻月菜
912
ヂ二ヂ二
15
ふわふわと揺蕩う意識の中で、瑠華はカチリという音を拾った。それは、あるべき場所にあるべきものが嵌った音だった。
初めての感覚なのに、瑠華はそれが常盤の結界が修復された音だとわかる。
自分を苛む罪の意識が少しだけ軽くなったと同時に、重大なことに気付いた。それをできるのは、雄斗しかいない。でも、何も知らない彼が……どうして?
(雄斗さん、今どこにいるの?)
心の中で瑠華は何度も彼の名を呼ぶ。何度も、何度も。
瑠華の祈りが通じたのか、視界が真っ白に広がり、彼の姿が目に映った。
「ったく、遠いな……どこまで歩かせる気だ」
ぶつくさ言いながら、真っ白な空間を歩くのは、間違いなく雄斗だった。その姿に瑠華は、泣きたくなるほど安堵する。
駆け寄って目の前に立つけれど、雄斗には瑠華の姿は見えないようで、足を止める気配はない。
それでも瑠華は嬉しくて、彼と肩を並べて歩く。手を伸ばしても、すり抜けてしまうから、強引に自分の手をねじ込む。
「絆錠の法師……かぁ」
歩き続ける雄斗は、そう呟くと自分の胸に手を当て首を傾げた。
雄斗の言葉に、瑠華は息をするのも忘れて驚いた。瑠華は彼に、一度たりとも”絆錠の法師”という言葉を出していない。けれど、彼は既に知っている。
それはつまり、鍵となる器──絆錠の法師となることを、雄斗が受け入れてくれたのだ。
どういう経緯で受け入れたのかわからないが、雄斗の人生を大きく変えることであり、瑠華と固い絆を結ぶことでもある。それをちゃんと理解して、承諾してくれたのだろうか。
もし、全てを知って受け入れてくれたのなら、これ以上の喜びはない。けれど信じきることができない。
「充芭がなんかごちゃごちゃ言ってたけど、結局良くわかんなかったな……ま、いっか」
「えええええええぇっーーーーーーーーーーーー!!」
想像の斜め上を行く雄斗の発言に、瑠華は思わず絶叫してしまった。
しかし、その声も聞こえないのであろう。雄斗の歩調は変わらない。
常盤の結界から去ったあと、瑠華は幾度も悩み、憂い、最悪のことまで覚悟した。けれど、結末はこんなものだった。
悩んだことも、歩んだ軌跡も決して無駄ではなかったはずだ。だって珍妙で、大雑把だけど、この結末はストンと瑠華の胸に収まったのだから。
「……あいつ、そろそろ目を覚ましているといいけどな」
誰のことを指しているのだろう。雄斗は今までにない程、優しい笑みをたたえている。
「瑠華」
「はい!」
名前を呼ばれて返事をする瑠華だが、そういえば雄斗には自分の声は届かなかったことを思い出して赤面する。でも──
「早く戻って、瑠華に会いてぇな」
雄斗のその言葉を耳にした途端、瑠華の身体は歓喜で震えた。
かけがえのない人が、自分の名を呼んでくれること、会いたいと言ってくれること。そして、笑顔を見せてくれること。それは、言葉にできないほどの感動を呼ぶ。
あえて、この気持ちに名前をつけるとしたら、きっと「幸せ」と呼ぶのだろう。
(私も早く雄斗さんに会いたい。この気持ちを伝えたい!)
そう瑠華が願った瞬間、見えない力に引かれ、瑠華の視界は闇に閉ざされてしまった。
*
「おはようございます」
目を覚ました瑠華に、荘一郎は穏やかに声を掛けた。しかし彼は、その口調とは真逆の表情を浮かべてベッドの横に立っている。
「……あ、あの……どうされました?」
半身を起こした瑠華は、自分の身体が軽くなっていることに気付いた。不思議なことに、自分を蝕んでいた魔霧は全て浄化されていた。
朝日が部屋を明るく照らしている。窓に視界を移せば、晩秋の青空が広がっている。
(あれから、どれくらい経ったのだろう)
しかし今は、そんなことを荘一郎に質問できる雰囲気ではない。
傍にいる荘一郎は、口を開いては閉ざしを何回も繰り返している。荘一郎の言葉が出るまで、瑠華は静かに待つ。
「このようなことを、お願いするのは心苦しいです。が……」
しばらくして何とかそれだけを口にした荘一郎は、今度は申し訳なさそうに俯き、次の言葉を言えずにいる。だから瑠華は、自分から尋ねることにした。
「荘一郎さん、その願いは雄斗さんのためでもあるのですか?」
「はい」
即答した荘一郎に、瑠華はふわりと微笑んだ。
「私でできることがあれば、なんでも言ってください」
雄斗さんの為なら、何でもします。そう付け加えたら、やっと荘一郎は、詳細を語ってくれた。
荘一郎さんが瑠華に望んだのは、驚きと不安とワクワクが混ざった──突拍子もない提案だった。
コメント
1件
うわ、この回めっちゃ良かった……! 瑠華の安堵と切なさがじんわり伝わってきて、特に雄斗が「瑠華に会いてぇな」って呟くシーンで完全にやられたわ。何も知らずに「絆錠の法師」を受け入れた雄斗の大雑把さに思わず笑ったけど、そこがまた彼らしくて愛おしい。荘一郎の切実なお願いも気になるし、次が待ち遠しい🔥